2023/11/06 コラム

自動車解体屋の塀の中には何が? 不法ヤードを見分ける方法があった

取材協力:エコアール



■まともな解体屋は付加価値に熱心

さて、また正規の解体屋の現在の話に戻そう。今回取材したエコアール(栃木県足利市)に8年振りに伺ったら、廃車の解体作業が細分化されているのに驚いた。それまで作業手順としてはおおまかに、「エアバッグ展開」「フロンガス回収」「車体からエンジンやミッション類の取り外し」をするのは同じだったが、その次の作業として、樹脂部品の回収、インパネ外して銅が含まれてる配線を車体から抜きまくっている工程が加わっていた。さらにインパネ裏など外しにくい部分は別の部屋に送って、そこで樹脂とハーネスを分ける作業場も設けられ、人間の手作業も加わっていた。




●これらは今までと変わらないエアバッグの展開作業とフロンの回収風景。たいていどこの解体屋さんでも、クルマの解体作業はここから始まる

鉄スクラップと呼ぶリサイクル素材は、実際にはそのまま素材としては使えないので別の会社でシュレッダーにかけて細分化し、磁石や比重を利用した装置を使って素材を分別。鉄、アルミなど非鉄金属、樹脂、ゴム類などに分けられる。だから解体屋から排出される鉄スクラップは、鉄以外がどの程度含まれるかで買い取り金額も異なることが多い。

エコアールの現場責任者が言うには「現在、当社の鉄スクラップ(Aスクラップと呼ばれる)には、銅も含む鉄以外の素材混入率は車両重量に対し0.3%以下になっており、全部再資源化処理を行い電炉メーカーに直納しています。また、鉄スクラップを買い取るシュレッダー会社も鉄以外の混入率の少ない、品質の高いものを求めており、買い取り価格に差をつけるようになってますから、こちらとしても良質な鉄スクラップを生産する必要があります」とのこと。




●次の作業も、やはり今までとは変わらず、燃料を抜いた後にエンジンやミッション、足回りの取り外しが行われる。ここエコアールでは、このように90度近く傾けるアームが付いた作業場だ

廃車からハーネスなど銅線や樹脂類をここまで徹底的に分別しているとは思わなかったが、許可を受けた正規の解体屋では今後、「リサイクル素材の付加価値」を考慮する必要があるのだろう。とはいえ筆者はもっと厳密に、一台まるごと素材ごとに完全取り外し、エンジンやミッションの中身まで分解して、ピストンやコンロッドなどネジ一本まで分別している解体屋も知っている。

筆者がよく目にした解体屋の作業手順としては、リサイクル法施行後であってもエアバッグ展開やフロンや燃料回収、あとはタイヤとエンジン、ミッションや足まわりを外し、内装含めてボディをプレスして潰し、シュレッダー会社に売却する風景をよく見ていた。それまで見てきた工程とは違う、手作業での分解作業が多い解体屋があるのに驚いたものだ。

そういえば14年前、ネジ一本まで完全分解する神奈川県厚木市の解体屋を取材したとき、そこまで完全に分解する必要あるのか?と思ったくらい。でも、今ではやりすぎとは言えない状況になってきているのだろう。たぶんこうした作業で生れるリサイクル材の付加価値の差が、各素材の買い取り値段に大きく反映されてきていると想像する。




●筆者が初めて見たハーネス類の徹底除去。ニブラーと呼ばれる重機でインパネなど内装からおおまかにハーネスを外し、さらにベルトコンベアで別室に運ばれ、最終的には人間の手で樹脂類、非鉄金属、モーター、ハーネスが分別される。余談だが、まだ蒸し暑さが残った日に取材したが、この部屋だけ冷房がしっかり効いていたし、作業のコンベアは自由に止められる


●ほほ鉄素材のドンガラとなった車体は、写真手前で横に伸びる2本の青いアームの先にある、縦長に垂直に立ったフタが開いたプレス機に一台ずつ投入される


●写真のように鉄フタが被され、上下左右から押しつぶして長方形の金属物にされる。写真左奥の青いニブラー重機の奥にあるのが、プレスされた車体だ。プレス機はさまざまな形状のものがあり、上下左右の2方向以外にさらに縦にも押して小型化する3方向(業界用語でさんぽうじめ)もある。こうした処理は解体作業ではなく、また別の破砕という作業の許可を受けなければならない

ドライバーWeb編集部

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