2023/11/06 コラム

自動車解体屋の塀の中には何が? 不法ヤードを見分ける方法があった

取材協力:エコアール



■1000万円以上の設備投資も

筆者は自動車雑誌ドライバーの姉妹誌、オールドタイマーという旧車雑誌の仕事を行っていた関係で、30年ほど自動車解体事業者との付き合いがある。2002年に公布、2005年以降完全施行された「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」以前は、確かに取材に関する話どころか一切の対話お断り、塀の中は見るな入るな、という現場も関東一円にあったことを知っている。

一切の情報を公開していない現場(郊外でよく見られる)は、解体前のクルマの置き場がないとか、あったとしてもコンテナで囲われた中に崩れそうな高さまで積まれていたり。塀の代わりにクルマを山積みして囲っていることが多かった。だが、2005年以降は、塀の近くで2台まで、置き場でも多くても3台までしか重ねられないと法に定められ今に至っている。

そもそも何が合法で何が違法なのかの指針が存在せず玉石混淆だった自動車解体業者の環境や作業は、2005年以降は環境保護と資源のリサイクル化を廃車に当てはめた「自動車リサイクル法」で法制化された。以降、クルマを解体する事業者は、作業する場が環境保護に則っているかを重点的に、廃車引き取りから解体、リサイクル資源にするための作業の進捗状況をオンラインで管轄省庁や団体に報告。それを実施できることを条件として、都道府県知事からの許可を得なければ営業できなくなったのだ。

作業場の環境を大改修してでも環境に配慮しなければならなくなり、それまでパソコンとは無縁の仕事だったのに専用パソコンをネット回線契約とともに整備する必要が。ある解体屋は「一切のゴミを外に出さない壁とコンクリート全面敷き作業場、油水分離槽設置などで1000万円以上の出費、さらにパソコンまで買わなければならないのか」と嘆いていた。

またリサイクル施行前後の取材時、別の解体屋に聞いた話では「とにかく環境保護、土壌汚染に関しては厳しく、廃車を置いたり分解する場所の塀の高さや構造、冷却水やオイルが絶対に土に染みてはいけないから、作業する場所をコンクリートなどの床にして、さらに雨や雪の排出時にも一切の油類が混入してはいけなくなった。コンクリートも補修が必要になるし、排水をきれいにする油水分離槽の管理費など、許可対策には金がかかる」とのこと。家族で営んでいた小規模な解体屋が設備投資できずに、廃業したと聞いたことも少なくなかった。


●これが多くの解体屋を泣かせた「油水分離槽」。とにかく油や冷却水を外に漏らしてはいけないので、雨や雪など水分と、それ以外を分別しなければならない


●設置とともに毎日点検、数日おきに油吸着マットを交換し、水以外の液体は年に2回は産業廃棄物として引き取ってもらう。写真の槽は、油や冷却水を含んだ水は左上から入り、各室の下部を通して油分を含んだ軽い水分と汚染してない水分、その他の沈殿物を比重で分ける。水面上部をマットで吸い取り、右下から油分や不純物を含まない水分を下水に流す

ドライバーWeb編集部

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