2023/05/22 旧車

「これでよしとしたエンジニアの勇気に敬意を表したい」マツダMX-5ミアータと初対面[driver 1989年3-20号より]

●マツダ MX-5 ミアータ

自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。前回に続き、1989年3-20号の「シカゴ・オートショー」を振り返る。

◇◇◇以下、当時原文ママ◇◇◇

■タイヤを鳴らしてコーナリング!?

MX-5 ミアータの実車を前にして、まずボクがしたことは、グルグルとクルマのまわりを回ることだった。平面図でも側面図でも、このクルマはコークボトル・ラインを描いている。しかも、面はなめらかで張りのあるもの。視線を上下左右に振りながら眺めるだけでも飽きない。じつに多くの表情を楽しめる。



運転席でドライビングポジションをとってみた。ステアリング、ペダル類を含めて、操作系はごく自然だ。最近のクルマにはない立ち気味のウインドシールドによって、頭上にはオープンスポーツ本来の開放感が広がっている。



最高に気に入ったのは、シフトレバーだ。短く詰められたロッドと、直立したグリップ。文字どおり、手首をひねるだけで各ポジションにカチカチとキマる。それだけで、まだ走ったわけでもないのに、このクルマの走る楽しさを知ってしまったような気がするほどだ。

調子に乗ってガチャガチャやっていると、それに合わせて、そばの外国人ジャーナリストがシフトチェンジを繰り返しながら加速していく、そのエンジン音を模した声をあげた。

「RRRR……」。笑ってしまったのは、シフトダウンしながら減速したあと、タイヤを鳴らしてコーナリングまでしてみせたからだ。


●サスペンションは不等長Aアームを使った本格ダブルウイッシュボーン


●ブルーのフレームがアルミ製のパワープラント・フレーム。これによって振動を低減している

最近の日本車の高級化指向に慣らされた感覚からいえば、室内の造りは質素で淡泊そのもの。造り手の愛想笑いなど少しも感じられない。ドアの内張り、閉まり音、グローブボックスの造りなどから高級感を感じとるのはムリだ。


●ワンフィンガータイプのドアハンドル

しかし、ボクは、これらをこれでよしとしたエンジニアの勇気に敬意を表したい。スポーツカー、とりわけライトウエイトスポーツとしての質感を問うなら、ミアータは一級の質感を持っていると思う。あとは、実際に走ってどうかだ。ボクが実車を見て、触れた限りでいえば、走りにもまたこれと同じエンジニアの熱意と勇気が期待できると思うのだ。これは、楽しい予感だ。


●リトラクタブルのヘッドライトは丸型。ボディカラーはレッド、ブルー、ホワイトを標準カラーとする





さて、巨大なマコーミック・プレイスの中にあっても、ミアータはよく目立った。観客がいつも集まっていた。レッド、ブルー、ホワイト、イエローの鮮やかなカラーリングのせいもある。小さくてかわいいということもあるだろう(特に大柄な彼らには、よけいにそう感じられたはずだ)。しかし、ほかのクルマとは明らかに異なる雰囲気を、ミアータが持っているのも確かだ。全世界から集まったクルマの中で、その存在感はスゴイと思う。

展示会会場で見つけた“CLUB RACER”は、ミアータのレーシングユースの可能性を示唆する興味深いモデルだった。ボディは、マツダR&Dの開発。205/50ZR15のワイドタイヤと、それを覆うグッと起伏を増したフェンダーが戦闘的だ。こんなクルマのワンメイクレースも、きっと楽しいことだろう。

なお、このクルマに付いているリヤスポイラーとソフトトップ用ハードカバーは、ノーマルボディのためにもオプション設定されるという。


●幌の格納は1人で十分に行える


●ハードトップは専用フックで固定される


●バッテリーは重量配分を考え右手前にある

ドライバーWeb編集部

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