【80年代の限定車・特別仕様車研究】 懐かしのダイハツ シャレードにナゾの限定車があった？【旧車雑誌オールドタイマーより】

業界唯一の？サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載！

◇◇◇下記、当時原文ママ（2018年8月号）◇◇◇

シャレードSS-Ⅱクーペとは？

文／環田昌大

2018年の東京オートサロンに、懐かしのシャレード・デトマソ ターボが展示された。赤と黒のツートーンカラーはいかにもホットハッチのイメージで、当時を知る中高年の目は釘付けに。じつは1981年のモーターショーに参考出品されていた「デ・トマソ・ターボ」は初代G10型の後期型をベースにしていたが、市販されたのは2代目G11型になってから。しかし初代G10型のときから、シャレードはホットハッチとしてヤル気マンマンであった。その証左がこの特別仕様車である。

初代シャレードは、77年11月のデビュー。それまでダイハツのリッタークラス小型車はパブリカのOEM車であるコンソルテがその座にいたが、当時欧州各国では、駆動方式をFF（フロントエンジン・フロントドライブ）に改めた小型車が出揃い始めており、国内各社でもそれに追従する流れが起こっていた。またFR（フロントエンジン・リヤドライブ）のコンソルテはスタイリング、パッケージングも古臭くなっていた。

そこで新開発の3気筒CB型1LエンジンをFFレイアウトとして用い、やや背の高い2ボックスの車体を組み合わせたシャレードを開発。「5平米カー」のキャッチコピーで新たな小型車の方向性を打ち出した。

当時、シャレ―ドのラインアップには5ドア（ハッチバック）と、デビュー翌年の、78年9月に加わったクーペ（3ドアハッチバック）がある。特徴的な丸目ヘッドライトのマスクは、77〜80年までの前期型に採用。後期型では角目になる。

今回紹介する限定車は初代クーペモデルがベースの「SS-Ⅱクーペ」である。シビエのフォグランプやアルミホイールなど、なかなかに精悍なスポーティ仕様だ。ただしこのクルマ、カタログ製作はダイハツ新東京販売。つまりメーカーが製造ラインで仕立てたスペシャルではなく“販社オリジナル”の特別仕様だったようだ。

カタログ写真を見ると、フロントウインドーには車検証のステッカー。メーカー製のニューモデルではありえない。すでに販売登録されている車体をドレスアップし、東京湾に面したどこかの港で撮影したのだろう（後ろに見える埋立地はお台場もしくは夢の島か）。化粧板は通常のナンバーの上に張り込んでいるのだろう。

サフランイエローのボディに黄色いシビエの角型フォグランプ。専用ボディストライプとアルミホイールがなんとも特別仕様っぽい。カタログには「軽快しかも確実なアクセルワークが期待できる大型アクセルペダル、長距離走行時に便利なフットレストを同時に装着しました」ともある。またカタログに説明はないもののフロントグリルのバッジ「SS-Ⅱ」も特別装備品のようだ。調べて見るとバッジとストライプ以外はすべて販売店オプションとして扱われている用品だから、やはりラインで架装された特別車ではなく販売会社がセットアップしたオリジナルの限定車と言える。

シャレードはこれより以前に5ドアでも同じ名称の限定車が販売されていたらしい。発売元は同じく都内のダイハツディーラーだが販売店名称がクーペ版とは異なる。販社同士が共同で特別車を作り、ベース車を変えて自社オリジナル車両として販売した可能性もある。その真相は謎だが、ディーラー特別仕様車がどのような経緯で作られていたのかを知るヒントにはなりそうだ。



●シャレードSS-Ⅱクーペ。丸いクオーターウインドーが特徴の前期型3ドアハッチバッククーペがベース。シビエ製フォグランプ、専用アルミホイール、専用ストライプなどでドレスアップされているほか、大型アクセルペダル、フットレストも備わる。特別仕様車といえどもフロントウインドーには車検証のステッカーが付いている。最初のデモカーは登録車をベースに作られたようだ


●「5平米カー」として登場したシャレード。スタイリッシュかつ合理的な2ボックスハッチバックで、これまでのダイハツのイメージを刷新した（5ドア）


●2018年のオートサロンに展示されたシャレード・デ トマソ ターボ

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※5月18日に一部記事を修正しました