2023/09/25 ニュース

トヨタ佐藤恒治社長に直撃!「トヨタF1復帰」という選択肢

トヨタにとって今大事なのは、「耐久レース」だという。その真意とは



■トヨタにとって「耐久レースがすごく大事」

話の流れは、ル・マン24時間レースで物議を醸したBoPについて。速いトヨタに対して、ル・マン24時間レース直前になって本来の予定にないルール変更が行われたことは、モータースポーツファンなら誰もが苦々しい思いとともに記憶にとどめていることだろう。

「我々は“物言うマニュファクチャラー”として、ACO(フランス西部自動車クラブ)に言うべきことは言っています。しっかりとした公平なBoPの適用を求めると…でも本来、BoPでコントロールすること自体もどうかとは思っています。やはり技術も含めた競争ですから。今はレギュレーション上、ハイブリッドシステムも大きくいじっていくってことはできません。ハイブリッドってまだまだ物凄く可能性があると思っていて、このWECの中でもっと育てたいんです。まだまだ面白くできると思うんですよ」(佐藤社長)

そういう観点で今のF1を見ると、シンガポールでやっとフェラーリが一矢報いたとは言え、それ以外のレースはレッドブルの圧勝という展開が続いている。しかしながらシーズン中に突然、レッドブルに露骨な足かせがはめられるようなことは起きていない。もちろん表面に見えていることだけで単純に推し量ることはできないが。しかもパワートレーンはハイブリッドで、2026年からはカーボンニュートラル燃料使用である。ここで聞いたのだ。WECじゃなく、F1という選択はないんですか? 

「来ましたねぇ〜!」

 佐藤社長、困惑したりすることなく、むしろニヤニヤしている。さて、回答は?

「トヨタは、モータースポーツでクルマを鍛えることを考えたとき、耐久レースがすごく大事だと思っているんです。我々のプライオリティはまずそこにあって、認知度だとかそういうことではなくて、もっといいクルマを作るのにどの環境がいいかが重要です。最近のF1の動きは僕自身もちゃんと追ってるので、いわゆる電動化に資するユニットの開発とか、カーボンニュートラリティに効果のあるeフューエルの開発のスキームも大きくこれから成長していくとは理解しています。ただ、それはS耐でやれてたりとか、色々な取り組みが一応自分たちなりにはやれてるつもりではいるので。F1に行かなければできないことが見つかれば別ですけど、今のところ我々のクルマを鍛えたいというスキームに関しては、今出ているカテゴリーでやっていけるかなと思っています」

ちょっとはぐらかされてしまった感もあるが、とりあえずF1参戦は今のところの視野には入っていないようだ。まあ当然の答えである。

一方で、佐藤社長がF1関連の技術動向もしっかりフォローしていることはわかった。なので言われるとおり、必然性があれば参戦の可能性も無いわけではないとも言える。モリゾウ選手が言われたとおり、そう決めれば、そうなる。

インタビューの後、佐藤社長は笑顔でこう付け足した。

「そつない答えでしたね。こういう質問は飲んでいる時に聞いてください(笑)」

ゼヒその機会、いただけることを!

〈文=島下泰久〉

ドライバーWeb編集部

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