2023/09/21 ニュース

工場のカーボンニュートラル化の要は塗装にあり|トヨタ モノづくりワークショップ2023 その4|

CO2排出量割合のうち、塗装工程が多くを占める。これを減らすための設備を新開発

トヨタは「クルマの未来を変えていこう」をテーマにした「トヨタモノづくりワークショップ2023」をメディア向けに開催した。元町工場ではカーボンニュートラルの取り組みについても説明された。
 

工場のCO2排出量の多くを占める塗装工程を改善
 
自動車の生産工程では多くのCO2が排出されていることは想像に難くない。そして、多岐にわたる生産工程の内、工場のCO2排出量比率が一番多いのが塗装工程なのだという。その次が鋳造で機械、工場空調、鍛造、溶接と続く。
 
その塗装工程でも突出するのが塗装ブース。ブース内の温度と湿度を一定に保つ空調設備を塗装ラインの上部に設置し、飛散した塗料を水で捕集するシステムを床下に配置、その排水処理施設は建屋の外にあるなど、かなり大きな設備。これらを稼働するための電力などがCO2排出量に影響を及ぼしている。
 
ここでのCO2削減を目指し、新たに開発したのが超高塗着エアレス塗装。ノズルに特殊形状を用い、静電気によりボディに塗着させる工法だ。塗着効率が従来のスプレー塗装の70%に対し、新技術では95%に向上。ボディに付着しない塗料ミストが大幅に少なくなることを意味し、塗料の無駄や飛散したミストを処理する手間も減るのだ。
 
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●静電気により塗着させる新開発のエアレス塗装

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●従来のスプレー塗装

さらに塗装ミストの清掃作業の頻度が減り、塗装ブース内へチリなどを人が持ち込むリスクも低減。生産効率向上と品質向上にも貢献する。
 
エアレス塗装による塗料ミストが減ったことに合わせ採用したのが段ボール製の捕集フィルター。これにより水による塗装ミスト捕集と排水処理設備が不要になる。また、塗装ミストによる汚れを回避するため広くとられた塗装ロボットの設置間隔も狭くでき、付随する設備を含めた塗装ブースのサイズは従来の6割とコンパクト化が図れるという。

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●緑枠が従来の塗装ブースのサイズ。赤枠がエアレス塗装がコンパクト化したブース。上部は空調設備で、床下にあった水処理設備が必要なくなり、設備の小型化も図れる
 
塗装ブースのCO2削減量は従来比で、エアレス塗装の使用で7%、段ボールを使用したドライフィルターの使用で12%、塗装ブースのコンパクト化で17%をそれぞれ削減。トータルで36%の大幅削減を実現した。
 
この新技術を用いた塗装ブースは、中国に作られた新工場ですでに稼働しており、国内では順次置き換えるとのこと。
 
ちなみに、エアレス塗装は現状で塗装工程の仕上げ層、つまりクリア層で採用されていて、今後カラー層にも展開するべく開発が行われているとのことだ。
 

工場の水素活用でカーボンニュートラル
 
そのほか、元町工場でのカーボンニュートラルへの取り組みとして、水素の利活用を推進しているという。その一例として、生産設備では塗装時の水素バーナーを利用したり、自家発電設備に水素発電(ガスエンジンと燃料電池)を設置。物流面では構内で運用するフォークリフトの45%が水素燃料電池仕様だという。

また、水素は工場で作られる再生エネルギーを使って水電解して製造するほか、水素社会実現に向けたサプライチェーンの構築を目指し、積極的な仲間づくりを推し進めている。
 
水素以外にもトヨタのCO2削減によるカーボンニュートラル化はグローバルで展開。まずは燃料として使用するガスについてはCO2とH2をメタンCH4にしたメタネーションを既存インフラや設備に活用するべく、本社にメタネーション実証設備を導入。また、バイオガスの活用に向け英国で設備を建設中とのこと。元町工場では下水汚泥から発生するバイオガスのメタンCH4をガス改質器でH2を精製し、水素フォークリフトに使用する取り組みを行っている。
 
工場で使用する電気については、欧州ではすでに再生可能エネルギー利用率100%を達成。そのほかの地域では太陽光発電や風力発電なども取り入れ、地域特性に応じた再生可能エネルギーを導入し、2035年に向け工場のカーボンニュートラル化を目指している。
 
〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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