2022/11/14 モータースポーツ

勝田貴元、地元表彰台の勝因は4本中たった「1本」のウェット用タイヤ【ラリージャパン2022】

地元開催のWRCで見事3位表彰台を獲得した勝田貴元選手(写真右)



■ウエットタイヤ1本でどう走らせるの?

戻ってきた勝田選手のマシンを興味津々で見てみると、たった1本のウェットタイヤが右フロントに装着されていた。一体これ、どうやって走らせたのか。豊田スタジアムでのセレモニアルフィニッシュの後、勝田選手に直撃してみた。


●ウエットタイヤは右フロントに装着されていた

「絶対このラリーは荒れると思って用意していました。右にしたのは、ウェットは方向性のあるパターンなので、右にしか付けられないんです。運転はしやすくないです。真っ直ぐ走らないですし、ブレーキングですぐ横を向くし。でもWRCでは“クロス履き”ってよくあって、モンテカルロではスタッドタイヤを右前と左後ろ、スリックを左前と右後ろみたいに履くのですが、それに比べたら全然簡単というか(笑)。なので気にならなかったですね」

ちなみにゴール後の勝田選手のマシン、左リヤタイヤがリム落ちした状態になっていた。じつはこの日2本目のSSで土手にリヤをヒットさせて右リヤタイヤをリム落ちさせてしまい、それを左リヤにつけて走っていたのだという。


●左リヤタイヤ

「そのソフトタイヤはリム落ちの危険があるので、抵抗の大きいフロントではなくリヤにつけて、何とかしのぎました」

確認しそこなってしまったが、ウエットタイヤの右フロントとバランスを取ったのだろう。そんな状態で走っていたなんて!

日本の狭い林道を、しかもウェット路面の中、全開で駆け抜けていくというだけでも常人離れしているWRCドライバーのテクニックだが、じつはそれをタイヤがこんな状態でやってのけていたわけである。そんな驚異のワザをここ日本で観られたことに本当に感謝だ。

ちなみにこのRALLY JAPAN、ナショナルクラスには勝田選手のお父様、勝田範彦選手もGRヤリスで参戦しており、このSS19ではクラストップタイムを叩き出していた。まさにこの日は勝田の日、だったのである。

〈文=島下泰久 写真=島下泰久/トヨタ〉

ドライバーWeb編集部

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