2022/11/12 モータースポーツ

【ラリー・ジャパン 2022】SSキャンセル続発…一般車両が逆走で侵入!?  ラリー・ジャパンで何が起きているのか【デイ2】

●旧伊勢神隧道を走るGRヤリス ラリー1


第1回 フォーラム8 ラリー・ジャパン 2022
日時:11月10~13日
サーフェイス:ターマック
SS総走行距離:283.87km(SS数19)
サービスパーク:豊田市


WRC第13戦ラリー・ジャパンは11月11日にデイ2を迎え、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のエルフィン・エヴァンスが総合首位に浮上した。2位にはヒョンデのティエリー・ヌービルが入り、今季ドライバーズチャンピオンのカッレ・ロバンペラ(TGR)が3位で続いている。

最近では稀に見るほど、アクシデントが多く発生してしまった、ラリー・ジャパンのデイ2。この日最初のSS2で、衝撃的な事故が発生した。ダニ・ソルドの駆るヒョンデ i20 N ラリー1が走行中に突然炎上し、なんとコース上で全焼。クルマの前方(エンジンルーム)ではなく、後方から火が上がっていたためハイブリッドシステムのトラブルが原因であると考えられるが、フレームを残してほぼ燃えてしまった。なお、クルーの2人は燃え広がる前に無事脱出している。

WRC13



そして、このステージ名でもある伊勢神トンネルでもアクシデントが発生した。ここはトンネル内の路面がグラベルなため、ラリーカーが通るたびに砂煙が発生し、これがトンネルの出口付近に滞留。車幅ギリギリの広さしかないトンネルの出口を白煙が覆いこみ、ドライバーの視界を完全に遮ってしまったのだ。

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このトンネル直後の右コーナーでコース脇のコンクリート壁へ衝突してしまったのが、WRC2タイトルを争うカイエタン・カイエタノビッチ。曲がりきれず左リヤを壁にヒットさせた彼らのシュコダ ファビアは、フェンダー付近を中心に大破しコースを塞ぐ形で停止してしまった。

これら2つのアクシデントにより、カイエタノビッチ以降の出走分はすべてキャンセル。それぞれの直前を走っていたクルーのタイムを参考に、全クルーへ暫定タイムが与えられた。

続くSS3は、進行上の理由でキャンセルされ、エントラントたちはそのままSS4のスタートへ向かう。しかし、ここでもアクシデントが発生してしまった。今度は初日を首位と僅差の2位で終えていた、Mスポーツフォードのクレイグ・ブリーンがコースアウト。ガードレールを突き破り、道路脇へ転落してしまう。この後サービスまでの走行はできたものの、立ち木への接触もあったためクルマへのダメージは大きく、ブリーンはここでデイリタイアとなった。

そして今回一番の問題となった事件が、この後に起こる。ブリーンのピューマ ラリー1がSS走行終了後でないと回収できないため、彼らの後に来たクルーたちはすべてステージ上をスロー走行で通過することになった。ちょうどラリー2クラスのクルーが通過しているとき、ステージ終盤になぜか一般車が逆走で侵入してきてしまう、前代未聞の事件が起きてしまったのだ。

これはコースクローズド(公道封鎖)を前提に行われているラリーという競技においては、絶対にあってはならないこと。ステージを走るクルーの安全確保がなされていないということだ。近年のWRCではあまり聞いたことのない事件に、クルーたちはさすがに戸惑いを隠せない。午前のループを終えサービスへと帰ってきたエントラントは、誰一人笑顔を見せなかった。

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午前のSS2、3、4をそれぞれリピートする午後のループだったが、ルートが大きく変更されることになった。まずSS2のリピートとなるSS5は、伊勢神トンネルの直前にフィニッシュラインを移動しステージ距離を約半分に変更。SS4のリピートであるSS7は、ガードレール破損などによる安全上の理由からステージキャンセルとなった。デイ2において、まともに全エントラントが走れたのはSS6の「稲武ダム 2」だけとなった。

スタート順が後方の全日本勢のほうが、WRC勢よりも影響は甚大だった。これまでのこのラリーのSS7本中、まともに走れたのは1.5本のみ。クルーからは、「せっかく多くのお客さんが見にきてくれているのに、本来の走りが見せられないのが悔しい」とフラストレーションが溜まっているようなコメントが複数聞かれた。

注目のWRC2タイトルの行方は、カイエタノビッチのリタイアによりエミル・リンドホルムが俄然有利な状況。地元の勝田貴元は総合5位に順位をアップするものの、「この先何が起こるかまったくわからない」と慎重な姿勢を崩さないコメントを残した。

ステージの設定、コースの安全確保など、初めてのラリー開催だからといった理由では済まされない運営側の失態が目立った、ラリー・ジャパンのデイ2。誰も怪我をしなかったことが奇跡的とも言える。今後、大きな課題を残すことになりそうだ。

<写真=Redbull 文=青山朋弘>



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ドライバーWeb編集部

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