2022/07/29 コラム

新型フェアレディZは、なぜ「Z35」を名乗らないのか。開発陣が明かした本当の理由

「Zは日産のDNAである」



■「叱る神あれば、拾う神あり」

そう、今回のZのコンセプトは明快だ。ハヤくて、カッコよくて、イイ音!である。405馬力/475Nmを発揮する3L・V6ツインターボエンジンをフロントに積み、アクティブサウンドコントロールなど最新の技術も用いながらイイ音と車外騒音規制を両立。そして、フェアレディZファンが熱望する「初代S30」を彷彿させるプロポーション。



「スポーツカーって、いろいろ新規のお客さまを捕まえに行きがちですが、今回のZはそれだけじゃないんです。これまでZを愛してくれた、Zファンたちに喜んでもらえるZを作りたかったんです。ファンの人たちに、『どんなZがいい?』と聞くと、みんな『S30』って言うんですよね(笑)」(田村氏)



日産は、電動化を推進する自動車メーカーだ。フェアレディZは一見、その対極に位置する古典的スポーツカーにも見える。経営判断からすれば、「新しいZを作ります。膨大にお金がかかります」と言われてすぐに「イエス!」と判断が下るわけがない。

だが、田村氏はじめ、フェアレディZ開発チームは会社を何度も説得し、壁を取り除きながら開発を推し進めた。しかし最終判断は、もちろん会社のトップに委ねられる。

最後の最後の判断で、日の目を見ないクルマなんて世の中に星の数ほどある。今回のZも、その憂き目にあうであろう要素がてんこ盛りのクルマだったはずだ。

それでもこうやって世の中に産み落とされたのは、やはり日産のトップ、内田 誠CEOの存在が大きい。内田CEOは、じつはZ好き。自身、初めて自分で購入したクルマがZ32だったのは知る人ぞ知る逸話。新しいZを作る、という声にフタをするような経営者ではなかったのだ。


●日産の内田CEOがZのプロトタイプを駆る動画

そんな人物であることを知っていたからこそ、「Z34を継承する」というスタートラインから新しいZの開発を始めた。最終的に“ハンコを押してくれる”という自信があったからだろう。

「日産にZは必要なんです。それがDNAだから」と開発陣は語る。DNAと言われたら社内でも反対の声は出ないだろうと思いきや、そう簡単なものではない。

「開発費が膨らむにつれて、役員室で何度も叱られましたよ。それは当然ですよね、経営者としたら。最初と話がまったく違うんですから」(田村氏)

作り話に聞こえるかもしれない。今となっては美談かもしれない。だが、結局はどんなクルマも人が判断する。「出したい」と思う人、「それ欲しいよ」という人、「ぜひ出そうよ」と判断する人、その三者がシンプルに手をつないだことで、Zの歴史は紡がれたのだ。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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