2023/08/17 旧車

中古車に付加価値を!? 日産セフィーロSSという名の「商品化中古車」とは【80年代の限定車・特別仕様車研究 旧車雑誌オールドタイマーより】

日産系の中古車センターで販売されていたので保証なども付いた

業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!



◇◇◇下記、当時原文ママ(2019年2月号)◇◇◇

セフィーロSSとは?

文/環田昌大

年末年始は皆様はどのように過ごされるのだろう? 平成は31年4月をもって終了した。また、昭和という時代が一層遠くなってしまったような気がしてならない。

30年足らずの間にいろいろな「もの」や「こと」が凄まじい勢いで変化していった。クルマも例外ではない。エアバック、ABSは当たり前に。安全装備てんこ盛りでエコな電気自動車やハイブリッド。自分はそんなものには付いて行けず、いまだに昭和のクルマを愛用している。昭和の終わりから平成の頭ごろまでは日本のクルマが生き生きしていた…。

そんな昭和末期のよき時代に日産から登場したのが「セフィーロ」だ。当時のCMキャラクターは井上陽水。カメラと併走するセフィーロ。その助手席側のドアウィンドーが開くと「みなさん、お元気ですかぁ~」と陽水さん。不思議なCMだなとあっけに取られ見ていたら、昭和天皇がご病気になりセリフが消された自粛バージョンに差し替え。これも話題になった。

ではセフィーロはどんなクルマだったのか。初代A31型はFR車ということもあって、最近までドリフト用に人気があった。バブル期の1988年にデビューした同車はローレルとスカイラインのシャシー/パワートレインを流用していたのだ。「33歳のセダン」が初期のキャッチコピーで、ターゲットは20代~30代男性。ローレルやスカイラインと異なりエンジン、サスペンション、トランスミッション、内装生地、内装色、外装色など組み合わせて注文できるセミオーダーメイド方式を採用し、その組み合わせは810とおりあった。

面白いのはグレード表記のエンブレムなどがないこと。それはセンターコンソールのフタの裏側に張られた仕様書で確認できるようになっていた。だが中期型になるとセミオーダーメイド方式も廃止に。後期型ではオートマのみとなり2500㏄エンジンを積むようになる。バンパーも大型化されるなどデビュー時の新鮮さを失い、普通のセダンになってしまった。

そんなセフィーロだから、マニアは前期型にこだわる。今回ご紹介する“特別車”は前期型がベース。ただし新車時の特別仕様ではなく、中古車を使って装備を充実させ付加価値を高めた「商品化中古車」である。それでもちゃんとカタログが作られたのだから気合いが入っている。名称は「セフィーロSS」だ。 

前期型セフィーロにオーテックバージョン用フロントエアロバンパー、サイドシルプロテクター、リヤエアロバンパーなどを装備。さらにnavanブランドのリヤスポイラー、中期型ラジエーターグリル、リヤコンビネーションランプ左右、リヤフィニッシャー、純正空気清浄器(ピュアトロン)、オリジナルステッカーを装着。オプションでアルミホイールやブリヂストンのポテンザが装着でき、全塗装もオプションで選べた。日産系の中古車センターで販売されていたので保証なども付く。

当時、商品化車を製作する専用工場があったようで、そこで作られた車両はディーラー系の中古車センターに展示され販売された。セフィーロSSのカタログに詳しい年月日は記されていないが、「LIFE TOGETHER」というキャッチコピーや説明文を読んでいくと、どうも1991年~92年くらいまでの間に出ていたものではないかと推測できる。これは実に感慨深い。

1980年代後半~90年代前半、日産に限らずどのクルマメーカーも商品化車を製作・販売していた。時はバブル期、新車が売れに売れた時代。新型車がデビューするとあっという間にそのクルマが街に溢れた。それゆえに中古車の見劣り感も強く、そのままでは売りづらかった。少しでも「中古車」というイメージを払拭させるべくあの手この手でこのような商品化車が生まれたのだ。


●セフィーロSSのカタログから。「SS」の意味はスーパースポーツでもスポーツセダンでもなく、シェイプド・スポーツ。ヘッドコピーには「風を友とするダイナミックなエアロフォルム……鍛え抜かれたアスリートのたくましいエアロパーツ」とある。専用の化粧板まで作っているあたり、かなりの力の入れようだ


●リヤスポイラー、リヤエアロバンパー、サイドシルプロテクターなどひたすらエアロパーツ推し。リヤスポイラーには日産純正オプションパーツブランド、navanのエンブレム。「ナバン」でも「ナーバン」でもなく「ナバーン」と発音。今もnavanのエアロはレアモノとして一部に人気だ。そして決め手は「知る人ぞ知る」ザウバーディッシュ・ワンピース・ホイールと、それに組み合わされるブリヂストンのポテンザ


●一番のウリはエアダクトを備えたフロントエアロバンパー。なおセフィーロSSはあくまでも中古車ベースの商品化車でエンジンやサスペンションはノーマルのまま

■オールドタイマーは、旧車に特化した隔月発行の自動車雑誌です。レストアする人たちの立場からクルマをとらえ、旧車を長く乗り続けるための方法などを紹介します。現在、定期購読者様専用の会員サイト「OT-club」で、自動車本体や部品など、早い者勝ちの売買情報配信中!

ドライバーWeb編集部

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