2023/07/02 旧車

現物を拝んでみたい…鮮烈の「イエローピアッツァ」【80年代の限定車・特別仕様車研究 旧車雑誌オールドタイマーより】

現物見れたら、いいことあるかも?

業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!

◇◇◇下記、当時原文ママ(2018年12月号)◇◇◇

イエローピアッツァとは?

いすゞが乗用車から撤退して、もうかれこれ30年が経ってしまった。若き日にジェミニを転がしたなんて世代ももうリッパな中高年。まさに昔日の感ありだ。いすゞは乗用車から撤退したあともしばらくはビッグホーンなどのSUVを製造販売していたのだが、やがて日本市場から別れを告げ今やトラック一本でやっている自動車メーカーである。

あちこちに手を出さずにひとつの道を極めるという選択をしたのは正しかったと思うが、かつて個性的なクルマを多く世に出したことを思うと、少し時期が早かったかなという感慨も残る。
 
そんな個性的ないすゞの乗用車の中でも最後のスペシャリティカーと言えるのが「ピアッツァ」ではないだろうか。往年の名車、いすゞ117クーペの継続車として販売されたクルマである。フローリアン、ベレット、117クーペとおなじく、JR130型初代ピアッツァもまたいすゞ車らしく大きなモデルチェンジもなく長く作られた(1981(昭和56)年から1991(平成3)年までの10年間)。

デザインならびにコンセプトはジョルジェット・ジウジアーロのイタルデザインに依頼。1979年、アッソ・デ・フィオーリというショーカーとなってジュネーブショーデビュー。それをもとにサイズ拡大や量産のための細かな変更をしたのち登場したのがピアッツァである。ショーカーから大幅なデザイン変更することなく「そのまんまで」世に出たことに誰しも驚いた。エクステリアのみならずインテリアも斬新で、ステアリングポストから生えた「サテライトスイッチ」には度肝を抜かれたものだ。

ピアッツァはいすゞだけでなく、あのヤナセも販売していた。ヤナセといえば外車ディーラーだが、古くはプリンス車や日産車も販売していた時代もある。いすゞが作ったピアッツアをヤナセが売ったのは、互いの市場規模拡大にメリットありと見たからだろう。日本におけるGM車の正規輸入代理店でさらなる販売車種拡大を意図したヤナセと、1971年以降GM傘下にあり国内販売網を拡充したいいすゞの思惑が一致したわけだ。ただ、同じピアッツァでも多少の差別化を図り車名「ピアッツァ・ネロ」というサブネームが付いた名前で販売されていたのだが。

とはいえピアッツァとて黙って10年間売れるほど世の中は甘くない。販売期間が長い故に、ユーザーが飽きてしまわないようにと特別仕様も設定された。当初からソフトイメージが強かったから、スポーツ車的性格を持たせたイルムーシャ仕様やハンドリング・バイ・ロータスの販売は有効な手立てだったようだ。
 
さて今回取り上げる限定車はそれらより以前の特別仕様である。ピアッツァのデビュー年(1981年)の12月に登場した「イエローピアッツァ」だ。新型車でそうそうに”限定車”として販売されたが、結局、正規販売された黄色のピアッツァはこれだけだった。

ボディーカラーの名称は「ピーチメルバイエロー」。XFとXJの2グレードをベースに専用のブラック内装が組み合わされる。DOHCのXFが300台、OHCのXJが250台の計550台販売された。

XJはアルミホイール(XE用ディッシュ)を装着。共にATの設定はなく5MTのみ。マニュアルエアコンのオプション設定も見逃せない。見た目は可愛いイエローだが、チョイスの仕方ではスパルタンなクルマにもなったわけだ。エアコンのない5MT+DOHCエンジンのイエローピアッツァ。猛暑のなかを黒内装のシートで涼しげに運転しているマニアがいたなら、ある意味「神」である。

現存台数が少ないとはいえコアなファンが多いピアッツァ。550台のうち1台くらい残っていないものだろうか。もし現車があれば現物を拝んでみたいものである。 


●カタログではゴールドにも見えるがれっきとしたイエローの限定ピアッツァ。販社が独自に仕立てた特別仕様ではなく、メーカーの製造ラインで作り分けられたモデルだ。デビュー間もない時期に設定されたためフェンダーミラーを装備。ピアッツァがドアミラーになるのは1983年の道路運送車両法改正時からである。初期型の限定仕様、しかも限定色ということを思うと、オリジナルを保った残存車はかなり少ないと思われる


●ベースとなったのは2L DOHC4気筒エンジンのXF(300台)と2L SOHC4気筒エンジンのXJ(250台)。なぜかアルミホイール(XE用ディッシュ)を装着するのはOHCのXJ。共にA/Tの設定は無く5M/Tのみ。このアングルからだとイエローボディのイメージがつかめる。これにブラックの内装というのは、思えばかなり硬派なシニア感かもしれない。マニュアルエアコンはオプションだ。XF、XJのイエローピアッツァは計550台が販売された(カタログ写真はいずれもXJ)。

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ドライバーWeb編集部

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