2023/06/30 コラム

新しい可搬式(移動式)オービス、日本無線「JMA-520」の取扱説明書を入手した!

新しい可搬式オービスの取扱説明書(表紙)

■新しい可搬式オービスの取扱説明書を入手!

新たな可搬式(移動式)オービスを新潟が落札! TKKでもSGGでもない、日本無線のオービスとは」と2022年7月16日に私は書いた。同年8月29日には「新たな可搬式(移動式)オービスの写真を発見。日本無線のオービスはどんな見た目?」と書いた。

同年9月だったか、その新たな可搬式オービスの取扱説明書を開示請求しようとした。が、まだないと言われた。入札や契約から、ブツの納入までに何カ月もかかることはある。その後、私のほうがずるずるしてしまい、今年4月に開示請求、6月中旬に開示を受けた。そうして今、こうご報告する次第だ。お待たせして申し訳なかったです。

取説は180枚ほどあった。1枚10円、カラーの部分は50円。契約書や仕様書もあわせ、送料込みで8370円もかかった。いててっ。でも私はうれしさがあふれて止まらない。上掲記事の“珍事”を経て突如あらわれた日本無線(JRC)の可搬式、いったいどんな感じか、知りたいじゃないの、ねえ!

まずは「物品売買契約書」。新潟県警本部長ではなく県知事と、日本無線株式会社(JRC)との契約だ。物品の名称は「可搬式速度違反自動取締装置」。規格は「日本無線(株)製 JMA-520」。北海道警察が購入したJRCの車載式(オービスではない)はJMA-401Aだった。可搬式はJMA-520ですか、そうですか!

参考記事:前後の速度測定可能な高性能レーダーパトカーが登場…北海道、日本無線の「JMA-401A」を採用

契約日は2022年7月12日。1式886万6000円(税込み)。納入期限は2023年1月16日となっている。

そして取説。「レーダー式可搬速度測定記録装置」となっている。契約書や入札関係の文書では「可搬式」なのに、取説は「可搬」。「レーダー式可搬式…」と「式」を重ねるのはみっともないと思ったのか。もしかして、先行他社とひと味違いますぞ、という意味を込めてたりして?

取説の表紙には大きく「暫定版」とある。新潟県警に確認したところ、6月29日時点で暫定版のままだという。取説の最終ページ、「改定履歴」には「2023年1月」とだけある。1月中の納入だったと解される。

JMA-520の外観は、黒い三脚の上に長方形の筐体「撮影部」が載る形だ。その撮影部の、向かって左側が「ストロボ照射口」、右隣の四角いのが「輝度受光口」、その下の丸く小さいのが「カメラ撮影口」。いちばん右側が「レーザー照射口」だ。レーザー照射は、違反車両がカメラの撮影範囲に入ったかどうか、距離を測るためか思われる。


●JMA-520の取扱説明書より

撮影部の下にぶら下がるように、四隅が丸みを帯びた小さな箱「検出部」がくっついている。それが、速度測定を行うためのレーダーアンテナだ。従来の国産のレーダー式測定機は10.525GHz(ギガヘルツ)。JMA-520の周波数は、開示された取説からは分からない。測定できる速度の範囲も分からない。墨塗り(不開示部分)がけっこうあるのだ。

■「ネズミ捕り」にも使える?

マニア的に気になったことを3つ挙げとこう。

1、わざと目立たせてる?
取説には、撮影部の内部の画像がある。なんというか、隙間がけっこうある。撮影部をもっと小さくし、色も暗色にすれば違反者に発見されにくく、取り締まり件数を上げられるだろうに。普通に考えればちょっと不可解だ。

2、ネズミ捕りにも使用
速度違反自動取り締まり装置、通称オービスは、現場では測定・撮影を行うだけ。後日違反者を出頭させ、違反切符を切る。一方、いわゆるネズミ捕りは測定したらすぐ停車させて違反切符を切る。JMA-520はその両方に使用でき、ネズミ捕りの使用についてだいぶページを充てている。両方に使用できれば便利、というのを超えて、何か事情があるのではないかと私は深読み…。

3、トラッキングデータがない?
可搬式オービスの導入は、スウェーデンに本社を置く世界的企業Sensys Gatso Group(SGG)の超高性能な装置、あれの使用を前提に始まった。SGGの測定方法はトラッキングレーダー式。0.047秒毎の違反車両の位置と速度を記録し続け、間違いないとなったら撮影する。撮影後も、違反車両が電波の照射範囲にあるうちは0.047毎の記録をし続ける。記録は警察に提出する。有罪の立証はばっちりだ。

ところがJMA-520には、そのような機能がどうもないようなのだ。かわりに、測定係の警察官が違反車両の動きを確認するのが重要だと、しきりに出てくる。つまり、SGGの0.047秒毎のトラッキング(追跡)を、JMA-520は警察官が目視でやるわけだ。ほぉ~、である。

とりあえず今回はこのへんで。正直、私は激しく思う、JMA-520による速度取り締まりを受けて測定値を否認する裁判を傍聴したい! 情報公開で墨塗りの部分が裁判の法廷へは出てくることがよくある。JMA-520のことをもっと知りたい。東京から新潟地裁へ通うのか? もちろん、喜んで!

でも、誤測定の被害者が現れるのを待つみたいなのは、よくないですよね。なので申し上げておこう。もしかして起こるかもしれない誤測定に備え、ドライブレコーダーを搭載しましょう。「ドラレコの録画記録があれば不立件、不起訴、無罪だったろうに」と傍聴席で思うことはよくあるのだ。逆に、「誤測定だと思ったけどドラレコの録画をよく見るとどうも誤測定じゃないようだ」なんてこともあるだろう。

ドラレコは、一時不停止や歩行者妨害などの取り締まりのときにも、また交通事故のときにも、妨害運転(いわゆるあおり運転)を受けたときにも役に立つ。ドラレコを搭載しましょう。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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