2022/10/18 コラム

飛ばし屋にとって千葉は受難の地に? 可搬式(移動式)オービスの取り締まり件数が増加したワケ

※警察庁から開示された文書。スウェーデンに本社があるSensys Gatso GroupのMSSS(Mobile Speed Safety System)だ。千葉の可搬式はすべてこれ。富山の可搬式は日本製だ

相変わらずあれこれ開示請求をしている。情報公開法・条例に基づき、手続きを踏んで手数料を払って。めんどくさいけど「ぎょぎょっ!」となることがときどきあるのですよ。今回は千葉県警の可搬式(※)オービスに関するデータをご報告しよう。
※ネットでは「移動式」と呼ばれることが多い。

そのデータとは、2019年12月から2022年7月まで月別の、可搬式による速度取り締まりの回数と件数だ。千葉が可搬式1台の運用を開始したのは2019年12月。その回数と件数はこうだった。

12回 39件

平均すると、週に約3回やって1回当たり3.25件を取り締まったことになる。これは多いのか少ないのか。

2020年2月25日付けの山陽新聞、「可搬式オービスで133件摘発 岡山県警、導入1年まとめ」という記事に、2019年1月15日から2020年1月14日まで1年間の回数と件数が載っている。

136回 133件

1年は52週間として平均を計算すると、週に約2.6回やって1回当たり1件弱。千葉の件数は岡山の3倍以上だ。

ちなみに千葉の2020年の回数と件数はこうだ。

275回 1076件

同様に平均を出すと、週に約5.3回やって1回当たり約3.9件だ。

千葉の可搬式の契約書も私はゲットした。2019年11月30日の納期で、1台を767.8万円(税込み)で、次は2020年11月29日の納期で、2台を1870万円(同)で購入している。なので2021年は合計3台態勢になった。2021年の取り締まりの回数と件数はこうだ。

798回 5316件

週に約15.3回、つまり1台平均約5.1回で、1回当たり6.7件だ。なぜぐんと増えたのか。「これまで取り締まり件数を抑えていたが、ぐんと増やしていいぞ」とゴーサインが出たのではないか、私はそう見ている。理由はややこしいので今回は省略。

そうして2022年、「ぎょぎょっ!」ということになった。7月までの月別の回数と件数を以下に。カッコ内は1回当たりの取り締まり件数。私が計算している。
 
1月 64回  342件(約5.3件)
2月 63回  415件(約6.6件)
3月 49回  265件(約5.4件)
4月 119回  591件(約5.0件)
5月 127回  634件(約5.0件)
6月 196回  982件(約5.0件)
7月 199回  913件(約4.6件)

※7カ月間の合計は、817回 4142件(約5.1件)

お気づきだろう、4月から急に回数が増えている。同時に1回当たりの取り締まり件数が少し減っている。どういうこと?

じつは千葉県警は2022年2月18日の納期で、可搬式7台を6160万円(1台880万円。税込み)で購入してるんだね。3台+7台、合計10台。3月は、初めて可搬式を使う警察官の習熟期間とし、4月から10台態勢のスタートを切ったと想像できる。

1回当たりの取り締まり件数が減ったのは、「速度違反が多い路線」だけじゃなく「少ないけれども速度違反は危険な路線」をカバーするようになったから、かもね。

「千葉の「移動式(可搬式)オービス」が高性能すぎる!? 都道府県別整備台数と取り締まり件数の最新データを入手」(https://driver-web.jp/articles/detail/39616)という記事で書いたように、2021年の千葉の5316件は、堂々の全国トップだった。3台態勢から2022年は10台態勢になり、7月の時点でもう4142件。今後どれほど取り締まるか、飛ばし屋たちにとって千葉は“受難の地”となりそうだ。

なんにしても、速度が高いほど危険の発見が遅れ、対処が遅れ、事故ったときの被害が甚大になる。そこは肝に銘じたい。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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