2022/06/14 ニュース

中国メーカーのEVバスが日本を席巻!? BYDジャパンが短期間で新型車両「J6」、「K8」を投入できた理由

●新型のEVバス、J6。フロントフェイスが一新されている



■刀のような形状の新型バッテリーを搭載

新型の最大のポイントは、「ブレードバッテリー」の搭載である。BYDが2021年に発表した最新型のリン酸鉄リチウムイオン電池で、釘刺し試験や高温試験などの各種試験をクリアし、高い安定性を確保。BYDの革新的な技術によって、リン酸鉄リチウムイオン電池の弱点であったエネルギー密度が低い点、EVでは航続距離が短くなってしまう点をカバーしたという。

ブレード(刀)の名前が示すように、形状は細長く平たい形で、1本のブレードがバッテリーセルそのものとなっているのが特徴。従来の車載用のリン酸鉄リチウムイオン電池はセルがまとまってモジュールを形成、そのモジュールがまとまってバッテリーパックを構成していた。今回は、刀のような薄型形状のバッテリーセルが集まってバッテリーパックを構成するモジュールレスの構造で、これによってバッテリーパックの空間利用率を従来比で約50%高め、エネルギー密度を向上させることに成功した。放熱性も良好だという。

ブレードバッテリーの搭載によってバッテリーパックがコンパクトになったことから、そのぶん電池容量を拡大。小型路線バスの「J6」は105.6kWh(航続距離200㎞)→125.7kWh(同220㎞)に、大型路線バスの「K8」は287kWh(同250㎞)→314kWh(同270㎞)となった。

さらに、バッテリーのコンパクト化は、室内スペースの拡大にも貢献。「J6」は座席が2つ増えて、立ち席スペースも拡大するなど、乗車定員が最大31人→36人に増加。従来はバッテリーが邪魔になって後方の景色がほとんど見えなかったが、コンパクト化によって後方の窓を大幅に拡大することができた。抜けのよい視界はバス利用者に快適な乗車環境をもたらす。

「K8」は従来型では車両後部の床面が緩やかな階段状に高くなっていたが、新型は最後部までフラットな床面になった。バス事業者からのフルフラット化の要望に応えたもので、日本国内の電気バスとして初めてのフルフラットを実現したことが最大のポイントである。乗車定員は現時点では従来型と同じ最大81人の見込みだが、車両の納入のタイミングでは定員を増やせるのではないかとのことである。

「J6」は現行モデルの発売から約2年、「K8」は約1年での新型の投入となる。

この点について、BYDジャパン取締役副社長の花田晋作氏は「2年、3年経ってから新車を出していくのではなく、必要だと思うなら、1年後であろうと半年後であろうと、いいものを出していくという考え方で開発をしてきました」と語っている。新型のブレードバッテリーの搭載が今回の2車種の改良に大きく影響を与え、特に「K7」〜「K9」までの車種のうち、10.5mクラスの「K8」を先んじて新型に移行したのは、日本の路線バスにおける一般的なサイズだからだという。こうした商品のブラッシュアップに対するスピード感は、国産メーカーにはまねできない部分であろう。

ちなみに、新型「J6」と「K8」は日本人の設計者が参加する日本市場専用車であり、「J6」についてはデザイナーも日本人。日本製の部品を多用し、中国で生産を行うという。

ドライバーWeb編集部

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