2022/06/10 カー用品

WRX S4の走りの質がマジで変わるSTIパーツ開発の真実|STI開発者インタビュー|

そもそもよくできたクルマなんですが……
 
進化したSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用し、ハイパフォーマンスカーとしてのポテンシャルを高めたスバル WRX S4。
 
ボディ骨格を強化するフルインナーフレーム構造やパネル結合部の変形を抑える構造用接着剤などの採用によってボディ剛性を大幅に向上。さらに、サスペンションのジオメトリーの最適化などを図ることで“よく動く足”を手に入れ、鋭い回頭性や優れた接地性による安心感とスポーティカーらしからぬ乗り心地のよさを獲得。
 
骨格だけでなく空力も徹底的にコントロール。優れた整流効果によりさらなる操縦安定性を獲得している。一見SUVのクラッディングパーツのようにも見えるサイドガーニッシュには空力テクスチャーやエアアウトレットが設けられ、空力性能が徹底的に磨き上げられた。
 
そんなWRX S4向けに、“機能ありき”でエアロや機能系パーツを「STIパフォーマンスパーツ」として設定するのが、スバルのワークスチューナー、STI(スバルテクニカインターナショナル)だ。
 
これほどまでに走りの性能が底上げされたWRX S4に対して、さらに走りの質感を高めるのは並大抵のことではない。何を目指し、どこにこだわったのか……。
 
WRX S4 STI PARTS

微小舵の応答性にこだわるエアロって?
 
「STIでは“運転がうまくなる”をコンセプトにパーツの開発をしています。そのなかで一番着目しているのは微小舵域での応答性です。

微小舵の応答性が高いと、ドライバーの意志に対してクルマが忠実に動き始めるので、切りすぎや切り増しが少なくなり運転が楽になります。また、長時間の運転が疲れにくくなり、同乗者にも優しいので運転がうまくなったと褒められることも。

そういった体感できる性能向上を目指して、エアロパーツや機能パーツを開発しています」
そう話してくれたのは、エアロパーツの開発を担当する村田耕樹さん。

WRX S4 STI PARTS
STI 車体技術部 車体設計課 村田耕樹さん
 
WRX S4用に関してはプラットフォームを共用するレヴォーグ用を先行して開発スタートしたが、ベース車両のコンセプトに沿ってそれぞれ専用に開発しているという。
 
WRX S4 STI PARTS

「WRX S4とレヴォーグは、コンセプトは似ており共通するパーツもありますが、デザインは別モノという認識で、実際にエアロパーツは専用に開発しました。WRX S4はハイパフォーマンスカーですので、それを念頭に置きクルマが持つ運動性能をさらに高めるような付加価値を出すことを目指しました。ボディ下部に設定したスポイラー類は、前後の空力バランスを最適化する効果を狙っています。
 
フロントアンダースポイラーの中央部を持ち上げた形状としたのは、フロア中央で風を流そうという最近のSTIの方向性を取り入れたものです。これにサイドとリヤサイドスポイラーの整流効果と、リヤアンダーディフューザーのダウンフォースが相まって車両の安定性が向上します」
 
じつは今回のSTIエアロパーツのデザインに関しては、スバルのデザイナーと共同で開発を進めているという。デザイン的な方向性が一致し、見た目の親和性も高まっているのだ。
 
 
WRX S4 STI PARTS

効果が出るまで諦めないヘンタイ的なこだわり
 
とはいえ、今回の素材はSTIにとってかなり手ごわい相手だった。
 
「WRX S4自体が空力性能にかなりこだわっており、ベース車が高いレベルで仕上がっていたのです。そこに効果が出るパーツとして開発するわけです。先代では目指す性能の向上幅が小さくてもネガになることはなかったのですが、新型ではマイナス方向に振れてしまったケースがありました。本来の性能をスポイルしてはならないと修正を重ねながら煮詰めていきました」
 
エアロパーツは“カッコいい”というのも装着するうえで重要だが、性能が伴わなければ意味がない。
 
WRX S4 STI PARTS

「フロントアンダースポイラーの下に装着するスカートリップは小さいながらも効果が実感できるパーツです。まずはレパートリーのなかから高さ15mmを試したのですが、装着するとバランスが崩れてしまったんです。そこで微調整を繰り返しながら検証した結果、10mmで性能を引き出せるようになりました」
とパーツの評価実験を担当した富澤真実さん。装着時の見た目の満足感は小さくなってしまうが性能面を重視した結果、ほかのモデルと共通ではなく、車種ごとに使い分けるこだわり。

WRX S4 STI PARTS
STI 車両実験部 車両実験グループ 富澤真実さん
 
車両後方に装着するパーツに目を向けると、リヤアンダーディフューザーはニュルブルクリンク24時間レースに参戦するレースカーを想起するかなり挑戦的なデザインだ。
 
WRX S4 STI PARTS

「デザインと空力、機能性、周辺の部品の取り付け性などを検討した結果があのような形になっています。空力でリヤのダウンフォースを生むためにはもっと大きいほうが適しているのですが、あまり後ろに長くすると実用性が犠牲になってしまいますので……」
と村田さん。
 
それでも25mm延長しており、リヤビューの迫力は十分伝わってくる。
 
「エアロパーツは各部位について、単品での装着でも効果が出ることを確認しています。それらをすべて装着していただくほうが効果を十分に感じていただけます」
とは富澤さん。続けて、
 
「一般的にエアロパーツは高速域でダウンフォースが効くというイメージを持っていると思いますが、STIパフォーマンスパーツとして設定するエアロパーツは低速域からでも微小舵の応答性に違いが感じられるんです。テストコースでピットからコースインするまで移動する20km/hほどの速度でも何か違うなと。
 
 高速域はもちろん、街乗りでも効果はあるので、装着した際はぜひそこを意識して乗っていただき、効果を実感していただければと思います」
とエアロパーツの機能性に自信を見せる。
 

WRX S4 STI PARTS

柔剛を調律する「フレキシブル」パーツ
 
機能パーツではSTIでおなじみの“フレキシブル”パーツを設定。効果を実感できる定評アイテムだ。富澤さんはトランクルームの実用性を考慮して装着位置を変更した結果、得られた効果は望外であったという。
 
WRX S4 STI PARTS

「まず新型のドロースティフナー リヤについてですが、先代ではトランク内に装着していましたが、新型ではリヤバンパー内に装着位置を変更しました。フレームの後端にプリロードをかけることで効率よく作用し、より効果を実感できたのです」
 
また、フレキシブルタワーバーも装着して間違いないアイテムだという。
 
WRX S4 STI PARTS

「サスペンションの左右では、弾性変形が起こります。路面の小さな段差を通過したときやわだちの影響、コーナリング時で、タイヤからの入力がサスペンション、そして取り付け部に伝わり左右でわずかに変形します。フレキシブルタワーバーを装着するとステアリングを切ったときの左右サスペンショントップが開いたり閉じたりするのを抑制できるので微小舵角の応答性が向上します。ただし微小舵の応答性は上げたいけれど、突き上げなどによる不快感は出したくありません。フレキシブルタワーバーは、タワーバー中心に設けたピロボールが突き上げ方向の入力はいなします。乗り心地を損なうことがないのです。」
 
“フレキシブル”パーツの効果はできることなら、非装着と装着したものとを比較して確かめたいパーツであるが……。
 
「エアロパーツやフレキシブルパーツ、ホイールも含めて微小舵応答性に着目して造り込んでいます。これらを装着することで、一般の方でも40km/h程度から体感できると思います」
 
すべてのパーツで効果が出るまで諦めない開発陣のこだわり。それが実を結び、製品としてラインアップされる。
 
新型WRX S4用には、「STIエアロパッケージ」と“フレキシブル”シリーズの「STIコンプリートキット」がお薦めセットとして設定されているので、ぜひ装着してSTIの考える「運転がうまくなる」や「長時間のドライブで疲れない」を感じてみてはいかがだろう。



フロントアンダースポイラー
フロントアンダースポイラー
サイドアンダースポイラー
サイドアンダースポイラー
リヤアンダーディフューザー+リヤサイドアンダースポイラー
リヤアンダーディフューザー+リヤサイドアンダースポイラー


走りがビシッと決まる「 STI エアロパッケージ」
価格:チェリーレッド…20万2400円/ブラック…16万9400円

●アグレッシブさが増す見た目はもちろん、WRX S4の持つ優れた空力性能や運動性能をさらに高めるエアロパーツ。装着することでより車高が下がったような視覚効果も与える。単品購入も可能だが、空力バランスのよさを最大限に感じたいならセット装着がオススメ
 

スカートリップ (チェリーレッド)
スカートリップ (チェリーレッド)
価格:8800円

●装着すれば低速度域から微小舵の応答性のよさを実感できる、開発陣こん身(?)のパーツ。アンダースポイラー保護にも有用だ。ブラック(6600円)も用意


フレキシブルタワーバー フロント
フレキシブルタワーバー フロント
フレキシブルドロースティフナーリヤ
フレキシブルドロースティフナーリヤ

”フレキシブル”パーツのセット「STIコンプリートキット」
価格:9万2400円

●微小舵の応答性を高めるフレキシブルパーツ3点(タワーバー、ドロースティフナーフロント、ドロースティフナーリヤ)をセット。STIこだわりの気持ちのいい走り味が、街乗りや高速道路を利用したロングドライブなど、あらゆるシーンで感じられる


ホイールセット19インチ(BBS)

走る気持ちは足元から整える「ホイールセット19インチ(BBS)」
価格:13万6400円(1本)

●ホイールセット19インチ(BBS)は軽量・高剛性なBBS製鍛造アルミホイール。STIが追究する微小舵の応答性向上に効くことを確認済み。WRX S4の足元がビシッとキマる


<<<文=ドライバーWeb編集部・兒嶋 写真=山内潤也>>>

ドライバーWeb編集部

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