2022/06/09 新車

最新SUBARUの魅力。WRX S4/LEVORG -雨中で昂ぶる、六連星-

SUBARU WRX S4/LEVORG

2021年11月に、ともにデビューしたWRX S4とレヴォーグの2.4Lターボエンジン仕様。スバルのラインアップ中でも、特にスポーツ濃度の高いこのセダンとワゴンを、雨の降りしきるワインディングでテストした。最新スバルの両雄は、雨の中でこそ輝きを放ち、気持ち昂ぶる走りを見せてくれた。
 


究極の一体感に酔いしれる
 
この日を待っていた。新型WRX S4とレヴォーグのSTIスポーツR、その公道初試乗だ。
 
水平対向の直噴ターボエンジンは、新開発のFA24型2.4L。2021年秋のプロトタイプ試乗でスペックが明らかになると、先代FA20型2L(300馬力/40.8kgm)より排気量が拡大していながら、最高出力/最大トルクが275馬力/38.2kgmにダウンしている点がちょっとした話題になった。
 
SUBARU WRX S4

開発陣の答えは明解だった。理由の一つは環境性能。WRX S4は車重が先代より60kg増えたが、燃費の犠牲はWLTCモードでわずか。旧JC08モードではむしろ向上している。
 
そして、もう一つの理由は、低回転域からトルクを素早くリニアに発揮することによる、「究極の一体感」の実現にある。

その威力は、パワーバンドを多用するサーキットよりもワインディングでいっそう実感できる。2000回転から始まる超ワイド&フラットなトルクピークは、先代FA20と変わっていない。だが、アクセルを踏み込んだ瞬間、踏み込んだ分だけトルクが正確に立ち上がるレスポンスとリニアリティは、まさに別モノだ。
 
先代もレスポンスに優れたが、新型はわずかなアクセルオンに対しても過給の“待ち”がない。排気量アップ、そして過給圧を制御する2つのバルブ(ウエストゲートとエアバイパス)を電子制御化した効果だ。
 
振動のないボクサーの吹き上がりもさらに切れ味を増している。勢いはレッドゾーン直前の約6000回転まで衰えず、高回転域のパワーも存分に楽しめる。トップエンド付近のパンチ力は確かに先代のほうがあったが、それを公道で感じる場面はほとんどないといっていい。
 
新型WRX S4とレヴォーグの心臓部はもう一つ、CVTの進化を抜きには語れない。リニアトロニック改め、スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)だ。
 
スバルは従来からステップ変速制御を積極採用するが、SPTは新スポーツ制御の採用や耐久性を高めた油圧コントロールバルブなどによって、変速スピードがDCT並みに向上している。味付けも抜かりなく、SIドライブのS#モードおよびマニュアルモードでは、些少の変速ショックも厭わない超高速シフトだ。
 
さらにシフトダウン変速制御も搭載。効果がもっともわかりやすいのは、やはりS#モードだ。
 
コーナーに入りながら一気にブレーキング。減速Gに応じ間髪入れず連続的にシフトダウンされ、立ち上がりの再加速に備える。小気味いいブリッピングと軽いシフトショックが織りなす快感に酔いしれる。
 
まさに万能スポーツ
 
WRX S4は公道での乗り心地も注目点だ。少なくともSTIスポーツRは、これも申し分ない。路面からの突き上げを直接的に伝えない“いなし”具合は、先代と同サイズのハイグリップタイヤを履いているとは思えない上質さである。
 
そしてワインディングでは、先代WRX STIばりのロール剛性を発揮する。まさに電子制御ダンパーならではの“キャラ変”だ。減衰力は全モードでレヴォーグより強化され、その変化幅も拡大している。
 
ただ、これほどスキのない変貌ぶりは、剛性が格段に向上したボディの土台があってこそ。ダンパーがもっとも高減衰な「スポーツ」でも失われない正確な路面追従性、ピロボールブッシュを継続採用しながら不快な振動を伝えない操舵感なども、電制モノを使う以前の基本性能がレベルアップした証左だろう。
 
電動パワーステアリングはレヴォーグと同じく、滑らかでリニアな2ピニオン式。ハンドリングは安心の直進安定性を確保しながら、指1本分の操舵にフロントが反応するほどクイック、そしてニュートラルだ。一触即発の動力性能を楽しみながら、ハンドリングも小舵角であらゆるコーナーをイメージどおりに駆け抜ける一体感にあふれている。
 
速さを堪能するなら、ドライブモードセレクトはもちろん「スポーツ+」だ。パワーユニットは加減速に途切れのない「S#」。シャシーは「スポーツ」制御になり、ステアリングがグッと手応えを増し、サスも減衰力が一番強い。さらに、基本トルク配分が前45:後55のVTD-AWDも「スポーツ」に。LSD(センターデフ)の差動制限を抑制し、アクセルオンで旋回時のトレース性を高める。
 
路面に吸いつくような安定性、針の穴に糸を通すようなハンドリング、レカロのありがたさを実感する強烈な旋回G。ところどころヘビーなウエット路面だというのに! クルマに乗せられている印象はみじんもなく、シャシーも乗り手が思いどおりに操れる一体感に満ちている。
 
SUBARU LEVORG

ダイナミック性能はレヴォーグもまったく侮れない。サーキット走行ではWRX S4とのタイヤグリップやロール剛性の違いが明らかだったが、公道ではそれが意外なほど気にならないのだ。ハンドリングはWRX S4ほどニュートラル感が強くなく、限界はタイヤサイズが同じSTIスポーツ系(1.8L直噴ターボ)と変わらないはず。それでも、S4と同じパワートレーンのレスポンスと速さを存分に楽しめる。乗り心地はS4よりさらに快適だ。
 
新しいFA24とSPTで手に入れた、走りの一体感の極み。スバル伝統のAWDハイパフォーマンススポーツは、新たな次元に突入した。
 
SUBARU WRX S4/LEVORG


SUBARU WRX S4
WRX S4

SUBARU WRX S4
●11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイと、12.3インチのフル液晶モニターが先進感をアピールするインテリア。センターの画面には、アクセル開度や水温、油温まで表示される

SUBARU WRX S4
●新型WRX S4に搭載された、2.4L水平対向4気筒直噴ターボエンジン。アクセルを踏み込めば怒涛の加速力を披露する。その一方、先代モデルより燃費を約8%改善している
 
SUBARU WRX S4
●スバルパフォーマンストランスミッションと呼ばれる新世代のCVTを搭載。その変速スピードは最速を誇るDCTにも匹敵する。「スポーツ」モード以上だと8段ステップ変速制御になる
 


SUBARU LEVORG
レヴォーグ

SUBARU LEVORG
●STIスポーツRには、ボルドーとブラックのコンビカラーの本革シートが装備される。インテリアはソフトパッドやステッチを配して質感の高さをアピール。居住性のよさも特筆ものだ

SUBARU LEVORG
●スバルにとって“特別な”モデルの証であるSTIバッジ。STIはスバルのモータースポーツ部門として、1988年に創業してから2023年で35年の歴史を迎える 

SUBARU LEVORG
●スバルが誇る先進技術、アイサイトX。渋滞時に条件を満たしていれば手放し運転が可能だ。作動感もしっかりしていて不安が少ない。目的地が長距離であるほど、ありがたみを実感できる


SUBARU WRX S4
[WRX S4 STIスポーツR EX主要諸元]
〈4WD・8速CVT〉

【寸法・重量】
全長:4670mm
全幅:1825mm
全高:1465mm
ホイールベース:2675mm
トレッド:前1560mm/後1570mm
車両重量:1600kg
 
【エンジン・性能】
種類:水平対向4DOHCターボ
総排気量:2387cc
最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
最大トルク:375Nm(38.2kgm)/2000〜4800rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・63L
WLTCモード燃費:10.8km/L
最小回転半径:5.6m
乗車定員:5人 
 
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後245/40R18
 
【メーカー希望小売価格】
477万4000円
 


SUBARU LEVORG
[レヴォーグ STIスポーツR EX主要諸元]
〈4WD・8速CVT〉
 
【寸法・重量】
全長:4755mm
全幅:1795mm
全高:1500mm
ホイールベース:2670mm
トレッド:前1550mm/後1545mm
車両重量:1630kg
 
【エンジン・性能】
種類:水平対向4DOHCターボ
総排気量:2387cc
最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
最大トルク:375Nm(38.2kgm)/2000〜4800rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・63L
WLTCモード燃費:11.0km/L
最小回転半径:5.5m
乗車定員:5人
 
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後225/45R18
 
【メーカー希望小売価格】
477万4000円
 
 
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING