2022/03/30 新車

打倒ハイエースの切り札は三菱製の新型ディーゼルエンジン! 日産キャラバンの実力は

アライアンスを生かしたエンジン刷新



■新エンジンの静粛性の高さに驚いた

さて、前置きが長くなったが、日産の追浜工場(神奈川県横須賀市)に併設されたテストコースのグランドライブで新型ディーゼルを搭載したグランドプレミアムGX(FR)に試乗した。



エンジンをかけるとわずかにディーゼルらしいゴロゴロ音が小さく聞こえるが、以前のYD25とは違って静かなアイドリングだ。加速すると一瞬でこのエンジンがいかに静かなのかがわかる。低速域でも、すでに室内に届くエンジン音のボリュームが小さく、軽快な加速音であることが確かめられる。さらにアクセルを踏んで全開加速にすると、ちょっと不思議な感覚になった。エンジン音の質感がデリカD:5で全開加速したときにとても似ているのだ。兄弟エンジンだからだろうが、その素性が音からでもわかる。

加速時の室内騒音は明らかに小さくなっていて、そのほとんどがエンジンからのノイズが小さくなったことによるものである。テンポのいい加速感は新型エンジンと7速ATとのマッチングのよさでもある。キャラバンのガソリン車と同様のFR用7速ATは、海外で発売されているクロスカントリーモデルのパトロール用などに採用されている。走行時の振動が小さくなっているのも特徴で、これはエンジンに採用されたバランサーシャフトの効果だろう。



直線路で100㎞/h巡航をして、シフトレバーを運転席側にスライドさせてマニュアルモードに切り替えると5速のままで7速に入っていない。もう一度同様に走らせて、ある程度距離を走ると6速に入っていたが、加速からアクセルを抜いて高速巡航に移ってもすぐには7速には入らないようだ。これはダウンシフトも同様でマニュアルで操作しても1テンポ遅れてギヤが落ちるという感じだった。

この点をパワートレーンのエンジニアに聞くと意図的なセッティングだという。商用車であるバンは荷物を積んでいるため、ギヤのアップダウンは素早さよりも荷崩れを防ぐソフトさが必要となる。インテリアが乗用車的でミニバン的な仕上がりだったため、すっかり忘れていたが、キャラバンは商用車がメインのモデルである。乗用車のようなスポーティさではなく、荷物をしっかり安全に運ぶことにプライオリティーが置かれているクルマなのだ。当然といえば当然だが、試乗していると軽快な加速感とミニバン的な雰囲気によって商用車であることを忘れてしまっていた。

コースには高速道路などのジョイントを模したエリアがあるが、そこを荷室に何も積んでいない空荷状態で走っても、突き上げ感が小さいのが印象的。以前、ガソリン車の試乗レポートでサスペンションは変更がないとしていたが、その後、発売までにショックアブソーバーの減衰力を少しだけ変更していたという。ロールスピードが抑えられているのは、減衰力変更のためと思われる。ディーゼルも同様のサスペンションなのでロールスピードはいい感じに抑えられているが、ロールが進んだ後にステアリングをわずかに切り増すと一瞬リヤサスがふわっと伸びるような挙動を見せる。これは空荷状態だからだと思うが、ガソリン車では感じなかったフィーリングだ。もっとも前回とは試乗コースが少し違っていて、山を上がって下りるハンドリング路を走れなかったため、姿勢変化が違うように感じたのかもしれない。



旧ディーゼルエンジンのYD25型搭載車にも同時試乗したが、エンジン音の違いとボリュームの大きさに驚かされた。このエンジンも発売当初は静かだと思っていたが、新開発の4N16型の出来がいいため、乗り比べるとまるで別モデルのように感じた。4N16型は静粛性だけでいうと2世代分ぐらい進化した感じだ。日産のデータによると120㎞/hでの前席騒音レベルは、2デシベル近く低くなっているというから、かなり静粛性が高められているというわけだ。



キャラバンはプロユースがメインだが、昨今のキャンプブームで車中泊などプライベートに使う人も確実に増加している。静粛性が高められた新型は、ミニバンに迫る快適性が実現されているためプライベートユーザーにもきっと歓迎されるはずだ。



〈文=丸山 誠 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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