2022/03/16 コラム

セコすぎる!? 開発者も実践する新型アウトランダーPHEV乗りの「回生」か「コースティング」か問題に決着

●アウトランダーPHEV乗り必見

三菱の新型アウトランダーPHEVには、先代に続き回生ブレーキの調節機能が採用されている。パドルシフトかシフトレバーのマニュアル操作によってアクセルペダルを戻したときに発生する回生ブレーキの強弱を、「B0」~「B5」の6段階から任意に設定できるのだ。

数字が大きくなるほど強くなり、最強はB5。逆に、もっとも弱いB0はアクセルペダルを戻しても回生ブレーキがまったく発生しない。まさしくゼロ。ちなみに、スタートスイッチを押したときのデフォルトはB2だ。

■「回生」か「コースティング」か問題

回生ブレーキは強くなるほど減速エネルギーを電気としてたくさん回収できる。つまり、バッテリーをより多く充電できる。充電量があれば、その電力でエンジンの負荷を軽減できるので省燃費につながる。

一方、回生ゼロはアクセルペダルを完全に戻しても回生による減速がない。スーッと惰性で走り続けるコースティングと同じ状態。コースティングは欧州の純エンジン車やマイルドタイプのハイブリッド車(HV)が多く採用している。アクセルオフで自動的にクラッチを切り、エンジンをアイドリングか停止にして惰性走行する機能だ。MT車で走行中にクラッチペダルを踏み込んだままかギヤをニュートラルにするのと同じで、日本語では惰行とか滑走などといわれる。


●パドルシフトはコラム固定だった先代からステアリングホイール固定に変更。市販車は走行中にステアリングをラリー車のようにグルグル回すことがほぼなく、コラム固定より操作しやすいという開発陣の判断によるものだ。先代ユーザーからも「ステアリングから手を放したくない」という声があったとか

で、減速回生が可能なクルマで公道を普通に走るとき、アクセルオフで積極的に回生させるのとコーティングを使うのではエネルギー効率はどちらが高いのか? アウトランダーPHEVでいえば、回生レベルB5でちょっとのアクセルオフでも回生ブレーキをグイッと効かせて電気を稼ぐのと、B0にして下り勾配などではスイ~ッと惰行で距離を稼ぐのでは、燃費・電費のうえでどっちがトクなのだろう。

じつは筆者、以前からこの点がギモンだったのだ。そこで、新型アウトランダーPHEVの開発に携わったその道のエキスパートに教えを請うた。すると…。

「私の考えを言いますね。コースティングって、使うところは高速道路なんです。回生はクルマの力学的な運動エネルギーを電気エネルギーに変換するので、回生する際には必ず変換ロスが出ます。運動エネルギーは運動エネルギーのまま使えばロスがない。そのときにフリクションをゼロにして、なるべく運動エネルギーを使い切るのが一番いいはずです。ただ、それは日常的な使い方では限られてしまうのであまりないんですけど。

高速道路では、回生で止めてしまって(ちょっとしたアクセルオフで減速してしまい)またアクセルを入れるよりも、合理的なんじゃないかと思います」(三菱自動車工業 EV・パワートレイン技術開発本部 半田和功さん。以下同)


●自身もアウトランダー乗りである半田和功さん(写真右)。「セーブモードとかチャージモードとか…じつは知るほどに奥が深くて(笑)。工夫して操作する楽しみがあるクルマだと思います」

なるほど。変換ロスという点では、例えば蓄電池もそう。電気を化学反応でカタチを変えてためるバッテリーよりも、電気を電気としてためるキャパシタのほうが高効率と聞く。クルマが走行して生まれる運動エネルギーは、そのまま運動エネルギーのカタチで惰行に使ったほうが、効率がいい。それに、パワートレーンを電動化する最大の目的は、トータルで燃費や電費を向上させることなのだ。回生でバッテリーに電気をためることは目的達成のための一手段にすぎない。

「私もアウトランダーに乗っています。市街地で使わないかというと、じつは使うんですよ。市街地でも回生ゼロにしてコースティングして、止まる寸前にB5にしてとか(笑)。そういうのがアウトランダー乗りのなかではやっていて。一番パドルを動かしているクルマじゃないかと思います。やっていると、いかに自分がセコいかって(笑)」

ドライバーWeb編集部

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