2022/03/23 イベント

旧車のダッシュボード復刻は難しい? 自動車メーカーの純正補修部品・復刻生産事情 

ホンダのビートは、約1万7000台が現存しているという



■トヨタ自動車「GRヘリテージパーツ」



2019年5月のA90スープラの記者発表会でアナウンスされたのが、トヨタ自動車が旧型車両の部品復刻・再生産に取り組む「GRヘリテージパーツプロジェクト」。その全容が明らかになったのが2020年の東京オートサロン。第一弾としてA70とA80スープラの補給部品を復刻し、国内と海外(北米、欧州など)向けに再販売。第二弾は名車の誉れ高いトヨタ2000GT、第三弾はランドクルーザー生誕70周年に合わせてランドクルーザー40、第五弾はハチロクの愛称で親しまれるAE86カローラレビン/スプリンタートレノが加わった。



GRヘリテージパーツプロジェクトは「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」というユーザーの想いに応えるべく、すでに廃盤になってしまった補給部品を復刻し、純正部品として再販売する取り組み。プロジェクトの対象車種はいずれもブランドが長年継続しているクルマ。ニューモデルも大事だが、そのブランドのルーツとなる車種も手厚くフォローしていくというトヨタの方針だ。



ホームページの「復刻リクエストフォーム」https://www.toyota.co.jp/cmpnform/pub/co/grheritage_jp
なども参考にして復刻部品を選定している。リクエストが多いのはダッシュボードやトリムなどの大物樹脂パーツや外装パーツなど。「まずはお客様に長く乗っていただきたいので、車検を通すのに不可欠な『走る、曲がる、止まる』の機能部品を優先しています」と語る、トヨタ自動車 GAZOO Racing Company GR車両開発部 モノづくり推進室 主幹の纐纈正樹(こうけつ・まさき)さん。「インパネなどは「型の博物館」みたいなもので、カタチもサイズもさまざまな部品を新規に金型から再生産して、生産設備を整えて…とやっていくと、かなりハードルは高いです」と纐纈さん。見栄えを美しくしたいというユーザー心理もじゅうぶんに理解できるが、まずは保安基準を満たし、愛車を末永く動体保存するために必要な部品を優先していく。



ところで、GRヘリテージパーツに使われている素材や技術は経年分の進化を遂げているのだろうか。纐纈さんに聞いてみると、「基本的には当時のままです。オリジナルに近いものにしておかないと、車両全体のバランスが崩れてしまうからです。ただし、トヨタ2000GTのギヤなどは当時の造りのままだとノイズが出てしまうので、復刻に合わせて現代の技術でギヤの歯面の精度を高めています。いっぽうで、当時の材料が入手できなかったり、鉛のような環境負荷物質だと使えなかったりすることもあります。



例えばウエザーストリップ。材料を替えちゃうと弾力が出ないんですよ。そもそも元の型も残っていないので新規に作り直すのですが、その場合は現代の材料で目標性能を出せるように形状などもアレンジしています」。



IAAEに出展した目的は、旧車を得意とする整備業者やプロショップにGRヘリテージパーツの存在を知ってもらうのと、旧車部品の復刻再生産に協力してもらえるサプライヤーを募るため。ちなみにGRヘリテージパーツには、当時の部品を復刻再生産した「復刻部品」と、現在供給中の部品が当時の部品と互換性があることが確認されたため、当時の部品を代替した「代替部品」の2種類がある。それぞれトヨタ販売店、GRガレージ、ジェームス、TOYOTA GAZOO Racing楽天市場店で購入できる。

<文と写真=湯目由明>

ドライバーWeb編集部

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