2023/11/05 ニュース

スズキのモクバ? 木馬? 開発者が語ったパーソナルモビリティの可能性【ジャパンモビリティショー2023】

四輪、ではなく4つ脚の次世代モビリティ「モクバ」



■MOQBA、一見ヘンテコな形だが!?

そして、スズキが発表した13車種のワールドプレミアには、パーソナルモビリティが含まれていることも忘れてはならない。ステージにずらりと並んだ次世代のモビリティは、どれも完成度の高いものばかり。この中でひと際目を引くのが、バイクのように跨って乗る「MOQBA(モクバ)」だ。少し車体は大きく見えるが、どうやらこのモクバ、段差などを乗り越えて動けるらしい。

Moqba

「開発の発想は、階段を登ることがキッカケでした。次世代の4脚モビリティです」と、モクバ開発担当の宮坂智海氏は話してくれた。ついにスズキのエンジニアから、4輪ではなく4脚というワードが出てくるとは……。

「左右の脚部サイドフレームとセンターモジュールは、それぞれ独立して稼働します。この3つの構成をつないでいるメインシャフトで回転するように動きますので、センターモジュールはつねに水平をキープできます」。

階段だろうが段差だろうが、上り下り悪路関係なしに水平をキープしてくれるのだから、スゴい技術だ。一見ヘンテコな形をしているモビリティだが、どんな人に向けて作ったものかもたずねてみた。すると、「ターゲットはすべての人たちですね」と宮坂氏は言い切った。

Moqba

この時点で筆者は言葉の意味を理解できなかった。しかし、センターモジュールがこのサドルタイプだけではないということを聞いてから、すべての話がつながった。

「センターは別の形状に交換できるようにしています。腰掛けるチェアのタイプや、寝て移動できるベッドタイプ、あとはフロント側に立ち乗りするスタンドタイプも想定しています」。

なるほど、そうなると需要は無限に広がっていく。「チェア型にすればエレベーターいらずの車椅子になりますし、ベッド型は担架などで運用できますので、例えば災害時の瓦礫の上も進めるようになります。スタンドタイプは、宅配便や農作業、ゴミの回収など業務用にも転用できると考えています」。

■バッテリー位置にもこだわったデザイン

なるほど、これはあらゆるニーズに対応できる。まさに新世代の乗り物だ。そして、話はデザインや大きさに及んでいく。

「ほかのパーソナルモビリティに比べると少々大きめですが、左右の脚部の間に人が入れる横幅を基準にしたからです。将来的にはもう少しコンパクトなものや、小型軽量化も進めていく予定です」と宮坂氏は語る。さらには、脚部が前後に広がり、車体が下がる機能も備えている。「4脚ならではの機能ですが、車体全体を下げることによって乗降性をよくしています。あとは、前だけとか後ろだけとかどちらかだけを上げ下げすることもできます」。そう話した直後に、モクバはお辞儀するように前部だけを下げた。おもしろい機能だ。

Moqba

駆動用バッテリーの位置はデザイン担当の伊達正泰氏が説明してくれた。「センターモジュールのフロント部に差し込むような形です。こうすることでバッテリーの交換が簡単にできるようにしています」。充電ではなく交換式を選択しているのも、次世代モビリティならではだ。「バイクでいうエンジン部にバッテリーを置くことで低重心化にも貢献しています」。交換しやすいだけではなく、低重心化にも寄与している最適な場所といえるだろう。

モクバが上下に動くデモを見ながら、最後に宮坂氏にたずねてみた。このパーソナルモビリティは、4輪と2輪どちらの開発陣が受け持っているのかと。すると、意外な回答が得られた。「もちろん出身はいろいろありますけど、開発はそういった垣根なしにやっています。4輪も2輪も関係なしです」。これは、4輪2輪だけでなく船舶などスズキのさまざまな技術が、すべて生かされているということ。電動パーソナルモビリティ市場を本気で取りにきている、スズキの強い意志を感じた。

Moqba

電動キックボードのナンバー取得化が発端となり、パーソナル型の小型車両が公道を走れるようになった。これからは、電動パーソナルモビリティがどんどん増えていくことになるだろう。そんな少し先の未来を、今回スズキが見せてくれた。無限の可能性を残しているこのカテゴリーは、今後注目を浴びていくことになるだろう。


<写真と文=青山朋弘>


ドライバーWeb編集部

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