2023/02/14 カー用品

モータースポーツのテクノロジーをストリート向けに応用|SYMS RACING|

スバルのさまざまなモータースポーツ活動をサポートしているスバルチューニングの老舗、シムスレーシング。そのシムスが作り上げたBRZは、レースのノウハウがたっぷり注ぎ込まれたストリートモデルだった。

SYMS

限下のレースで鍛えた技術
 
スバルのワークスチューナーといえばSTI(スバルテクニカインターナショナル)が思い浮かぶが、「準ワークス」的存在のシムスレーシングも、さまざまなカテゴリーでスバルのモータースポーツを支えている。
 
今シーズンは全日本ラリー選手権・JN1クラスにWRX STIで参戦する「SYMS Rally TEAM」の鎌田卓麻選手や、GR86/BRZカップのクラブマンシリーズを戦うドライバーをサポート。さらに、スーパー耐久シリーズへのスタッフ派遣やNBRチャレンジの後方支援など、スバルワークスの「裏方」として八面六臂の活躍ぶりだ。
 
かつてはS耐の前身であるN1耐久に初代インプレッサ(GC8)でいち早く参戦。1996年にはインプレッサワゴンでJTCC(全日本ツーリングカー選手権)に、シムスが独自にチューニングした2L NA(自然吸気)エンジンで挑むなど、レースという極限のフィールドでボクサーエンジンの可能性を追求する。
 
「モータースポーツはカテゴリーを問わず、かなりシビアな極限の条件下でクルマの性能を引き出さなければならないので、必然的にノウハウや技術が蓄積されます。それをアフターパーツの世界にフィードバックしていくという開発スタンスは、弊社のモータースポーツ部門が発足した90年代から変わりません」と語る、セールスマネージャーの遠山哲也氏。
 
シムスの母体はスバルに板金プレス部品などを納める矢島工業。その歴史は古く、スバルの前身の富士重工業が60年代半ばまで生産していたラビットスクーターのプレス部品をリヤカーに載せ、太田工場に納めていたという。現在でもスバル車のボディに関わる部品を製造していて、前述したレース活動で得られるノウハウと相まって、クルマの骨格であるプラットフォームへの知見は深い。
 
スバルのプラットフォームはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)がおなじみだが、現行BRZ(ZD8)のプラットフォームは基本的に先代(ZC6)を踏襲したもの。「ところが、中身は『別モノ』ともいえるぐらい大幅に進化しています」と、遠山氏は高く評価する。
 
ZC6時代はNA・ラジアルタイヤ・ナンバー付きのまま徹底した軽量化を施したタイムアタック仕様のデモカーを仕立て、筑波サーキットで1分1秒台を記録するなど、ライトウエイトスポーツの速さを極めてきたが、ZD8は素性のよさを引き出すべく、ZC6のチューニングで培ったノウハウを織り交ぜながらボディパーツと、シムスの十八番である吸排気パーツの開発を進めてきた。
 
車両前後に装着し、路面状況によって変化するボディの変形や振動を素早く、穏やかに整えることで路面からの突き上げや、ボディの変形に伴う反発力を吸収するボディダンパーは、ベストセッティングを見出すまで約1万kmを費やした自信作。
 
FA24型エンジンのポテンシャルを引き出すのが、吸入空気量を増やして空気の充填効率を高めるラムエアボックスシステムと、排気量アップに合わせてメインパイプ径を太くしたリヤマフラー。どちらもノーマルECUの補正範囲で対応可能となっていて、チューニングのハードルを低くしている。
 
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吸排気系とボディ&足まわりを徹底的にファインチューン
 
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●足まわりはテインの全長調整式車高調「RX1」を装着。4輪独立で減衰力を調整できるEDFCアクティブプロを組み合わせた
 
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●ボディダンパーとカーボン柄のラムエアボックスシステムが目を引くエンジンルーム。機能向上だけでなくドレスアップ効果も高い
 
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●ホイールはレイズのボルクレーシングTE37 SAGA SL。S耐仕様のコンペティションモデルだ。タイヤサイズは225/40ZR18
 
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●ZC6のFA20型に対して排気量がアップしているので、メインパイプ径をφ5mm拡大。チャンバー構造を採用し、レスポンスを高めた
 
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●走行風を取り込み、導入口から圧力(密度)の高い新鮮な空気をエアクリーナー全面に導き、エンジンに供給することで出力向上を図る
 
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●コンフォート走行からスポーツ走行まで幅広く対応するセッティングのボディダンパー。1万km弱を走り込んで開発された
 
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●エンジンルームのメンテナンスや清掃でボンネットフードを支えてくれるボンネットダンパー。スムーズに開閉できるのがうれしい

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●両サイドとセンターの3ピース構造のフロントリップスポイラー。ボトム部分の張り出しを強めて空力の向上と視覚的効果を狙った
 
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●ボトムからリヤフェンダーにかけてラインが立ち上がる躍動的なサイドビューのアクセントになり、整流効果も高めるサイドスパッツ
 

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セールスマネージャー
遠山哲也さん
 
「ZD8になってもっとも変化を感じたのがシャシー。剛性感が大幅にアップしているのでボディダンパーのセッティングには時間を費やしました」と、開発を振り返る遠山氏。
 

SYMS
素材の特性を最大限に引き出すスバルチューニングの老舗
 
シムスの情報発信拠点だったショールームが内外装を大幅刷新し10月にリニューアルオープン。併設のピットでは、パーツの取り付けからメンテナンス、オーバーホールを行う。
 
SYMS

〈文=湯目由明 写真=山内潤也〉

■問い合わせ先
シムスレーシング
TEL:0276-25-1055
https://syms.jp/

ドライバーWeb編集部

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