2022/12/28 新車

もはや奇跡のトップ・オブ・レヴォーグ! STIスポーツR EXの真価とは

低重心・低振動のボクサーエンジンとバランスに優れたシンメトリカルAWDを核とし、長くスバルのグランドツーリング(GT)思想を体現してきたレガシィツーリングワゴン。そのDNAを受け継ぎ、時代が求める理想のGT像を求め今も進化し続けるレヴォーグ。新設された2.4L直噴ターボを搭載する“R”の走りは、最新最良のスバルそのものだ。

文=戸田治宏 写真=澤田和久



■異次元のハイレスポンス

レヴォーグは奇跡のようなステーションワゴンである。

初代が登場したのは2014年だ。国内最適に設計された国内専用のミッドサイズワゴン。WRXの実質的な兄弟車とすることで実現できたとはいえ、すでにワゴンが姿を消しつつあった日本で、スバルの英断は驚きと歓喜をもって受け止められた。

そして2020年、現行型の2代目に一新。ステーションワゴンを取り巻く環境はさらに厳しさを増している。SUVの世界的な台頭だ。その猛烈な勢いは、伝統的にワゴン人気が高い欧州の勢力図さえ一変させている。

しかし、レヴォーグは動じることなく、日本市場における国産ミッドサイズワゴンの座を一台で守り続ける。4代目までのレガシィツーリングワゴンの流れをくむ“ザ・スバル”として当たり前のようにラインアップされているが、その存在はじつに貴重なのだ。


●STIスポーツR。ボディカラーは昨年11月の一部改良時に新設された「セラミックホワイト」

昨年11月、WRXのフルモデルチェンジとともに登場したSTIスポーツRは、レヴォーグに再び起きた奇跡と言っていいかもしれない。基本的にはWRXのために開発された、FA24型2.4L直噴ターボの水平対向エンジンとスバルパフォーマンストランスミッション(SPT)の組み合わせを搭載する。

FA24型 直噴ターボエンジン

●新型2.4Lターボエンジン。その数値こそ300馬力/40.8㎏mを発揮した先代(2Lターボ)に及ばないが、過給圧を緻密に制御することで中間加速(0.5Gまでの到達時間)が向上。燃費も先代比8%向上を実現した

最高出力は275馬力、最大トルク38.2㎏m。初代のFA20型2L直噴ターボ(300馬力/40.8㎏m)のほうが双方とも同じ発生回転で上まわっており、その点を気にするスバルファンもいるようだ。

確かに2.4Lターボのわりにスペックは控えめ。だが、それだけで実力を判断するのは早計だ。このボクサーターボには、カタログの数値には表れない魅力が詰まっている。

■FA24+SPT&VTDのR

レスポンスだ。

小径のターボチャージャー、電動ウエストゲートなどによる緻密な過給圧制御で、過給ラグはほとんど存在しない。ドライブモードセレクトにかかわらず、従来の2Lターボより素早くトルクピークに到達する。

「スポーツ+」モードを選べば、まさに一触即発。アクセルペダルのわずかな操作にも過給エンジンとは思えない敏感さで反応。そのまま踏み込めば3.8Lガソリン相当の大トルクが一気にする。しかも、その“圧”が中回転以降まで続くの加速を披露。吹き上がりもじつにシャープだ。タコメーターの勢いはトップエンドまで衰えず、マニュアルレンジでは6000回転を超えてレブリミッターにブチ当たる。


●メーターにはターボブースト計が備わる

この超絶レスポンスには、リニアトロニックをベースに開発されたSPTも欠かせない。「スポーツ」モードで無段階変速から全域ステップ変速制御にシフト。さらにS+モードでは、変速スピードが最速レベルのDCT並みに速くなる。

スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)

●SPTは、シフトアップ時のトルクカット高速化やシフトダウン時のオートブリッピングにより変速スピードが向上。スポーツ+モードやマニュアル時の変速時間は先代比30%短縮を実現

それは、時に軽いシフトショックさえ伴うほどダイレクト。しかも、Dレンジのコーナー進入もブレーキングに応じ、ブリッピングとともに5→4→3速と電光石火のオートシフトダウン。ワインディングの走りはレーシーな刺激にあふれている。

高性能エンジン用のフルタイム4WD、VTD-AWDも見逃せない。旋回性に優れた前45:後55の駆動トルク配分に加えて、S+モードではアクセルオンでLSDの差動制限を抑制。瞬時に沸き上がるエンジンの大トルクを生かし、アクセルを踏んで旋回姿勢をつくるアグレッシブな走りを存分に堪能させる。


●パドルシフトも設定

■さらに際立つ“キャラ変”

ZFの電子制御可変ダンパーを備えるサスペンションは、CB18型1.8L直噴ターボのSTIスポーツと基本的に変わらない。CB18に対してはもともとシャシー性能が完全に上まわっており、FA24の速さもワインディングで十分に引き出せる。



パワートレーンに劣らず、ステアリングも中立付近からクイックかつダイレクト。S+モードではサスのロール剛性が向上し、操舵量の少ないシャープでリニアなハンドリングを堪能させる。公道を一台で走るかぎり、ワゴンボディにありがちなリヤまわりの重さは皆無といっていい。

しなやかな路面追従性も両立され、つねに4輪の確かな接地性が伝わってくるのもうれしい。WRXはタイヤがさらにハイグリップでサスもハードチューンだが、レヴォーグはこのリニアな接地感によってウエットでもグリップ状態がわかり、一体感あふれる走りを不安なく楽しむことができる。

乗り心地はS+モードでも常用できるほどだが、「コンフォート」や「ノーマル」などを選べばさらに突き上げ感がマイルドな上質さに浸れる。ステアリングの操舵力も、コンフォートでは非常に軽くて扱いやすく、スポーツ+ではスポーティな手応えが出る。ドライブモードセレクトによる多彩な走りの演出、いわゆる“キャラ変”も、FA24搭載でさらに魅力が引き出されたといっていい。


●STIスポーツ専用のドライブモードセレクト。ステアリングスイッチのほか、EX仕様では11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイでの操作が可能。基本モードはコンフォート/ノーマル/スポーツ/スポーツ+で、パワーユニットなどを任意に設定できるインディビジュアルも用意

そして、日常では最先端の安全テクノロジーの恩恵を享受できる。高度運転支援システムのアイサイトXは高精度なうえ作動がじつに自然で、高速道路の渋滞も疲れ知らず。

これほど多彩な魅力を備え、その一つひとつが磨き抜かれたクルマは、世界にもそうはない。あらためて味わっても、やはりレヴォーグSTIスポーツRは奇跡的な存在に思えてならないのだ。


●STIスポーツはブラック×ボルドーの本革シートが標準装備。アイサイトXを搭載するEX仕様のメーターは、12.3インチのフル液晶タイプだ。デジタルコックピットでも冷たい印象はなく、先進的で上質なイメージを与える


●要望の多かったサンルーフを昨年の改良時に設定(GTグレードを除いてオプション設定)。従来型より開口面積が広がり、より開放感が味わえる


●後席は4人乗車時でも長尺物が積める4:2:4分割可倒機構付き。パワーリヤゲートはドアロック時でも運転席スイッチ操作で開閉可能になった


●装着タイヤは225/45R18サイズのヨコハマ ブルーアースGT AE51。タービンを想起させるブラック塗装と切削光輝加工が施されたアルミホイールはSTIスポーツ専用だ


■レヴォーグ STIスポーツR EX(4WD・8速CVT)主要諸元 【寸法㎜・重量㎏】全長×全幅×全高:4755×1795×1500 ホイールベース:2670 トレッド:前1550/後1545 最低地上高:140 車両重量:1630 【エンジン・性能】型式:FA24 種類:水平対向4DOHCターボ 総排気量:2387cc ボア×ストローク:94.0㎜×86.0㎜ 圧縮比:10.6 最高出力:202kW(275ps)/5600rpm 最大トルク:375Nm(38.2㎏m)/2000〜4800rpm 使用燃料・タンク容量:プレミアム・63L WLTCモード燃費:11.0㎞/L 最小回転半径:5.5m 乗車定員:5人 【諸装置】サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン ブレーキ:前Vディスク/後Vディスク タイヤ:225/45R18 価格:477万4000円

ドライバーWeb編集部

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