2022/12/26 新車

ホンダのZR-Vに試乗。e:HEVなら1000km無給油走行も可能!?

●ZR-V e:HEV Z(4WD)

2022年12月23日時点、ホンダのウェブサイトでSUVのラインアップを見ると、ヴェゼル、ZR-V 、CR-Vの3車が表記されている。大きさから言えば、これが本来のあるべき姿なのかもしれない。

日本市場におけるZR-VはCR-Vの後継モデルといった位置付けにあり、まもなくCR-Vはラインアップから外れてしまう。ちょっと残念な気もするが、はやりのSUVとはいえ売れ行きが伸び悩むモデルは淘汰される運命にある。

※12月26日現在、CR-Vはウェブサイトから姿を消している



新たにラインアップされたZR-Vは23年4月21日の発売を予定し、すでに都内のホンダディーラーにはナンバー付きの試乗車が用意されているところもある。写真で見た当初は特異(!?)なフロントマスクに驚かされたが、実際に目の当たりにするとさほどヘンでもなく、逆に個性があっていいかもと思えてくる。



ボディサイズは、全長4570㎜×全幅1840㎜×全高1620㎜、ホイールベース2655㎜。CR-Vと比べると、全長は35㎜短く、全幅は15㎜狭く、全高は60㎜低い。ホイールベースも5㎜短い。ヴェゼルに対しては、全長は240㎜長く、全幅は50㎜広く、全高は30~40㎜高い。ホイールベースも45㎜長くなる。CR-Vとの差は少ないけれども、北米で登場した新型CR-Vはボディが拡大されているので、向こうでのZR-Vは中間のモデルとしてちょうどいい立ち位置にあるようだ。



ドアを開けて乗り込んでみると、前席の座面がさほど高くない。これなら小柄な人でも乗りにくくはないだろう。ステアリングにはチルト&テレスコピック機能が備わり、シートの高さ調節機能と合わせてポジション合わせは容易に行える。本革巻きのステアリングの触感もよく、インパネ上面やドアアームレスト、ヒザの当たるセンターコンソール部にもレザー調表皮のソフトパッドが張られている。ヴェゼルに対して1クラス上の上質感も演出されているのだ。

最新のホンダ車らしく、前席からの視界はワイド。ピラーも太すぎず、ドアミラー周辺の死角もさほど気にならない。シビックに共通するパンチングメタルのエアコンアウトレットは加飾パネルの役割も果たしていてスッキリとした仕上がりだ。ハイデッキのセンターコンソールにはプッシュタイプのギヤセレクターやドライブモードスイッチを配置。下にはスマホなどが収納できるトレーがあり、左右それぞれにUSBタイプCの差し込み口がある。さらに、最上級グレードのZにはワイヤレス充電器も標準装備されている。



後席まわりの仕立てもよく、前席に筆者(身長179㎝)がポジションを取っても足元まわりの広さは十分。リクライニング機構は付かないものの、クッションは表層が柔らかく、座り心地は良好。ヘッドレストがちょっと硬めに感じられたのは、柔らかなシートの触感のせいかも(!?)。



ラゲッジルームはフロアがフラットで使いやすそうだが、特に広いといった印象はない。e:HEVのZにはBOSEプレミアムサウンドシステムが標準装備されているのでフロア下のスペースがほとんどなく、容量も385L(e:HEVは通常395L)にとどまる。リヤシートはダイブダウン機構を備えた6:4分割タイプなので長い荷物が積みやすい。パワーテールゲートは全車に標準。側面には180Wまで使えるAC12V電源を備えるが、そろそろAC100Vコンセントを付けてもいいのでは?



パワーユニットは2L直噴エンジンを用いた2モーターハイブリッドシステムのe:HEVと、1.5L直噴ターボの2タイプがある。エンジンを含め、ハードウェアはシビックに準じたものが用いられる。リヤセクションはCR-Vがベースとのことだ。

最初に試乗したのはe:HEVの4WDの上級グレードとなるZ。ドライビングポジションを合わせてからスタートボタンを押し、ギヤセレクターのDボタンを押してホテルの駐車場から一般道へ。バッテリーがしっかり充電されていたこともあって、走り出しはまさにEV感覚。エンジンが目覚めても日常使うようなシーンではエンジンノイズはほとんど気にならず、モーターに電力を供給する“黒子”に徹する。だから、エンジンが目覚めてもモーターフィールは失われず、きわめてスムーズな走行フィールが心地よい。

モーターが主体となるシステムのおかげで、アクセルを踏み込んだ際のレスポンスも抜群だ。さらにアクセルを深く踏み込むと、それまで黒子と化していたエンジンが目覚め、今度はガソリン車のような走りが楽しめる。シビックにも採用されている「リニアシフトコントロール」がまるでDCTのような素早い変速フィールをもたらし、1630㎏のボディをものともせずに力強い加速が得られる。パワーメーターがタコメーターのような動きをするのもうまい演出だ。ZR-Vにはシビックに備わるASC(アクティブサウンドコントロール)は付かないものの、エンジン音自体にこれといった不満は感じられなかった。

足まわりはふだん使いで硬質な印象はなく、それでいて姿勢の変化もしっかりと抑えられている。路面からの入力も減衰されていて、快適な乗り心地が確かめられる。ペースを上げたコーナーではそれなりにロールを許すものの、タイヤの接地感がしっかりと伝わってくるので乗り手に不安な印象を与えない。ロック・トゥ・ロック2.4回転のステアリングは中立付近に若干の緩さが感じられたが、切り込んだ際の応答性は良好。スムーズな操舵フィールも心地よい。



次に試乗したのは1.5LターボのX(2WD)。ボディは先に乗った4WDのe:HEV Zに対して170㎏も軽く、同エンジンを搭載するシビックEXと比べても90㎏重い程度だ。このユニットは1700回転から4500回転で240Nmの最大トルクを発揮するおかげで実用域でも扱いやすく、回せば力強い加速が得られる。ただ、Xにはパドルシフトが用意されず、走りを楽しむのであればパドルシフトが標準のZを選んだほうがいい。e:HEVと比べると常用域でのレスポンスのよさ、力強さでは一歩譲るものの、軽量ボディがもたらす軽快な操舵フィールが好印象。e:HEVで感じられた中立付近の緩さもなく、フットワークのいい走りが楽しめる。

限られた試乗時間のため燃費を含めた経済性を試すことはできなかったが、燃料タンク容量は全車57Lと大きめ。使用ガソリンもターボを含めてレギュラー仕様(シビックはターボがプレミアム仕様)なのもありがたい。

経済性に優れるe:HEVはWLTCモード21.5~22.1㎞/Lの燃費を踏まえると、満タンで1225~1259㎞(!)も走れる計算だ。東京から九州、もしくは北海道まで無給油で走れるのはじつに魅力的であり、月1000㎞走行するようなユーザーでも1カ月に1回ガソリンスタンドに行けば済むというのは便利この上ない。最新の大容量バッテリーを積み込んだ高価なEVでもこんな航続距離は得られない。

それでいて価格はリーズナブル。ベーシックなガソリン車Xは294万9100円、最上級グレードのe:HEV ZのAWDモデルでも389万9500円。駆動方式や装備内容に違いはあるものの、これは同じエンジンを搭載するシビックよりも安価な価格設定なのだ。

すでに納期まではガソリン車で半年、e:HEVで1年程度となっているので、気になった人は早めに試乗に出かけてみることをオススメします。

〈文=一条 孝 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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