2023/06/02 新車

ハイエース5ナンバーサイズを豪華キャンピングカーに!老舗ショップの狙いとは

キャンピングカーのベース車として不動の人気ナンバー1なのがハイエース。意外と小回りの利く運転性能と室内空間の広さがその理由だ。最も大きいグレードはスーパーロング(ワイドボディ・ハイルーフ)で全長5380mm×全幅1880mm×全高2285mmで国産乗用車屈指のビッグサイズ車。しかし大きいと当然運転に注意を要するため、国内を観光して回るキャンピングカーとしては街なかでも取りまわし性に優れる標準ボディ車にも注目したい。

埼玉県の老舗キャンピングカーメーカー・RVビックフットでは、バスサイズの大きなキャンピングカーも作る一方で、あえてハイエースバンの標準ボディをベース車としたコンパクトなモデルも作り続けている。標準ボディは全長4695mm×全幅1695mm×全高1980mmと乗用車の5ナンバーサイズに収まり、扱いやすく立体駐車場にも入れられる。

開発に制約がかかる小さなボディに、本格キャンピングカーメーカーの技でどんな装備が詰め込まれたのか? 生みの親に聞いてみた。


開発コンセプトは 「乗る人みんながストレスフリーであること」

RVビックフット_スウィングC23

RVビックフットが製作したキャンピングカーのモデル名は「スウィングC」。車名のCは快適を意味するコンフォートだ。
「ハイエースのボディにはいっさい手を加えず、キャビンから後ろの架装のみ行ない『最小限の変更で最大の効果』を狙いました」
と、スウィングCの開発意図を語る中島所長。製造部門に10年在籍し、現場を知り尽くした技術者だ。

コロナ禍を契機にキャンピングカーのよさを生かした「新しい旅のスタイル」が広まり、ミニバンから乗り換える新規ユーザーが増えた。そこで誰もが安心して乗れるモデルに注目が集まり、スウィングCはこうしたニーズに技術者目線から応えようと、サイズや装備、整備性など、全方向で使いやすさを追求した。


「ロングセラーとなった前作『スウィングN4.7』で多くのお客様に選ばれた装備を盛り込みながら、安全に関わる機能を標準設定にしました」

欲しい装備がオールインワンで盛り込まれ整備性を考慮した作りになっているほか、予防安全パッケージのトヨタセーフティセンス、メーカーオプションのパノラミックビューモニターも標準装備化。結果としてドライバーにも同乗者にも優しい「コンフォート」なキャンピングカーが誕生した。


RVビックフット_スウィングC_中島さん
●スウィングCと並ぶキャンピングカーステーション東松山店 中島 豊所長

コンパクトなボディに快適装備を凝縮したキャンピングカーを

老舗ビルダーのRVビックフットは他社に先駆けオール電化のACSシリーズを提案するなどキャンピングカー業界のパイオニアであり、ハイエースの標準ルーフ車に対しても床掘りや窓加工、ハイルーフを搭載するなどあらゆる架装を手がけているが、以前から4ナンバーサイズに収まるコンパクトボディに魅力を感じ、ハイエース標準ボディの利点を生かしたキャンピングカーも作り続けてきた。

ハイエースの標準ボディを意味するナローの頭文字「N」と全長の4.7mを車名に冠したスウィングN4.7は、開放感が高くベッドメイクが簡単な横向きシートを配し、荷室の後端部分の床を掘り下げて8ナンバー登録にした同社のロングセラーモデルだ。N4.7で好評のレイアウトはそのままに、冷蔵庫や電子レンジといった装備を厳選して標準化。新構造要件に照らして床の掘り下げをせずにキャンピングカーに仕立てたのが新グレードのスウィングCとなる。



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●ホワイトで統一され清潔感がある内装カラーリング。車両前方がラウンジ、後方がキッチンゾーンと分けられている

キャンピングカーの構造要件は2022年4月1日に見直された。従来の構造要件では炊事設備前の室内高が1600mmなければならず、標準ルーフで8ナンバー登録するためには床の掘り下げやポップアップルーフの搭載など、大がかりな架装を必要とした。新構造要件は床から1200mm以上あればクリアできるので架装の敷居は格段に低くなった。その利点を最大限に生かしてボディ側への大がかりな加工を施さず、スイングCはキャンピンカーの新構造要件に準拠した「次世代の架装」を具現化した。

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●冷蔵庫の隣は上開き式の収納。縦長のアイテムを出し入れしやすく、バックドア側、ダイネット側の双方から使いやすい位置にある。従来はこのキッチンゾーン部分の室内高さが1600mm以上ないと8ナンバー登録ができなかったが、2022年4月1日の構造要件見直しで1200mm以上に変更された

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●49L冷蔵庫を運転席側の後端に配した。 DC12V仕様で電源オンにするとサブバッテリーから電気が供給される。初心者ユーザーのために静粛性の高いものを選んだという

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●冷蔵庫の対面には清潔感のあるステンレスタイプのシンクをビルトイン。6連スイッチパネルやオプションのインバータースイッチもここに備わる

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●車中泊時に便利に使える電子レンジも標準装備。サブバッテリーでも動かすことが可能だ

すべて標準設定! コンフォートな車中泊装備たち

スウィングCにはこれまでに紹介した冷蔵庫や電子レンジ以外にもさまざまな快適装備が標準設定されている。ユーザー目線の使いやすさにこだわった装備を見ていこう。

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●運転席後ろのシート下の収納スペース。シート下を収納に利用できるのが横向きシートの利点

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●スライドドア左手にシューズボックスがある。中に備わる仕切り板は取り外し可能で、ブーツなど高さのある靴も収納できる

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●サブバッテリーはメンテナンスのしやすさを考慮してシューズボックスの対面、スライドドアを開けた右手のシート下に収められている。標準装備では105Ahを2本備える

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●プライバシー保護や遮光、断熱に効果を発揮するラウンドカーテン。ルーフサイドの化粧ボードでカーテンレールを隠している

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●空気抜きのベンチレーターなどボディの一部をカットして装着するアイテムはいっさいなく、ノーマル車のルーフのまま。LED照明を埋め込んでいる

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●横向きシートと対面の単座シートでテーブルを囲むラウンジ部分。テーブル天板は高級感のある曲面仕上げで、ドリンクホルダーを4つ装備

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●カーナビに連動して地デジや映像を観賞できる10.1型フリップダウンモニターとスピーカー。サブバッテリーから給電している


フロア一面に広がるベッドスペース アレンジも自由自在

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キャンピングカーとして大切な、寝るためのベッドスペース。ベッドの作り方はキャンピングカーごとに異なるが、スウィングCでは横向きシートの背もたれとシート下にある補助マットを通路とスライドドア側にはめ込んで作る。サイズは長さ1800mm×幅1500mmで大人2人がゆったり横になれるサイズだ。
前作スウィングN4.7で好評だった横向きシートをスウィングCに継承した理由は、ベッドメイクが超簡単で全面フラットにできること。 背もたれマットを壁際に固定する面ファスナーは特殊なクリップに改められ、使い勝手が向上。

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「マットを1枚抜くと掘りごたつのように使えるんですよ」と、ベッドアレンジの一例を示してくれた中島所長。オプションのFFヒーターの吹き出し口が横向きシートの足元にあり、ここから温風が吹き出すので足元はあったか。頭寒足熱で快適だ。

ちょっとの工夫で誰もが使いやすく

キャンピングカーを複数台乗り継いできたベテランユーザーやリピーターに支持される、本格志向のモデルを得意とするRVビックフットだが、コンパクトなボディサイズも含めて新規ユーザーにもフレンドリーに設計したのがスウィングCの特徴。これまでキャンピングカーに触れたことがない人でもマニュアルを見ずに簡単に使えるように、電源やヒーターなどそれぞれのスイッチに説明を明記。小さなことだが、まったくの初心者にはありがたい配慮だ。

RVビックフット_スウィングC内装詳細16

RVビックフット_スウィングC内装17
●コンセントは外部充電経由とインバーター経由もわかりやすく明記され、迷うことがない

また、正弦波1500Wインバーターや外部電源入力・FFヒーターなどオプション設定となりやすい装備も標準設定。キャンピングカーユーザーから人気の高い装備を最初からつけておくことで、初心者が「求めやすい」パッケージ車となり、生産性を高め納期の短縮も可能とした形だ。

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●1500Wのインバーター。メンテナンス性を考慮しアクセスしやすいところに配置

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●キャンピングカーの人気装備でも常に上位にランクインするFFヒーター。エンジンを停止していても使える暖房装置だ

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●オートキャンプ場などで電源が取れる場合に大活躍する外部電源

充実の先進安全装備も標準設定でドライバーも快適に

「乗る人すべてにとってストレスフリーなクルマであること」というコンセプトを具現化する、スウィングCの充実の先進安全装備。ドライバーは運転が楽になり、駐車時の後方確認や死角になりやすい領域をカメラがサポート。ハイエースの標準ボディという乗用車5ナンバーサイズのコンパクトさと相まって、初心者の心理的負担が大幅に軽減される。


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RVビックフット_スウィングC29
●メーカーオプションのパノラミックビューモニター。サイドミラー下のサイドビューカメラとフロントビューカメラで死角になりやすいエリアを捉え、運転席からの目視だけでは見えにくい車両周辺の状況をリアルタイムでナビ画面に表示する

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●前後バンパーに備わるソナーで周囲を監視して低速取りまわし時における衝突回避、または衝突被害の軽減に寄与するパーキングブレーキサポート

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●マルチインフォメーションディスプレイに表示される、LDA(レーンディパーチャーアラート)やプリクラッシュセーフティなど安全装備の作動状況。スウィングCは衝突回避支援パッケージのトヨタセーフティセンスを標準装備にしている

動線がよく使いやすい車内レイアウトと白い内装色、取りまわししやすいコンパクトボディで作られた新世代のキャンピングカー。
RVビックフットのスウィングCは、コロナ禍を背景に生まれた「新しい旅のスタイル」に老舗キャンピングカーが応えた1台だ。

[スペック]
ベース車:ロング標準ボディ標準ルーフ バンGL パッケージキャンピング特設
乗車:6人 就寝:2人
登録ナンバー:8
価格:487万8500円〜

〈文=湯目由明 写真=秋元栄二郎〉


■問い合わせ先
RVビックフット
https://rv-bigfoot.com/
TEL:048-763-5661

ドライバーweb編集部

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