2023/02/06 コラム

初代フェアレディZクラブの軽井沢ツーリングに同行。自動車ミュージアムや工場見学会などを開催

初代S30系フェアレディZが軽井沢に集合

1969年(昭和44年)11月から1978年7月まで生産された、初代S30系フェアレディZの偉業を後世に伝えることを目的に、そのオーナーたちによって結成されたのが「クラブS30」だ。誕生したのは1996年(平成8年)11月で、これ以降、季節ごとのツーリングを楽しんでいる。

また、メンテナンスに関する情報交換や昔の資料の発掘などにも力を入れ、開発に携わった日産自動車のOBやS30系フェアレディZを操ったレジェンドドライバーとの交流にも熱心だ。現在、会長を務めるのは渡邉秀記さんで、名誉会長はニッサンR381で68年の日本グランプリを制し、Zのデビュー戦ではステアリングを握った北野 元さんに、名誉副会長は「Z使いの柳田」と呼ばれ、雨のレースでは驚異的に速かった柳田春人さんにお願いしている。



コロナ禍で活動を控えていた「クラブS30」は、2022年10月22〜23日、久しぶりに軽井沢ツーリングを行った。開催が延び延びになっていたので心待ちしていたクラブ員は少なくない。関東だけでなく関西からも、磨き込んだ愛車に乗り、駆けつけている。参加ゲストも豪華だ。

軽井沢とは縁の深い名誉会長の北野 元さんをお招きすることは早い段階で決まった。また、軽井沢にお住まいになっている名誉会員の宇佐美昌孝さん(元・アメリカ日産副社長)、初代Zの車両設計に携わった日産OBの植村 齋(ひとし)さんと電装系設計の大澤英二さん、スピードショップクボを率いる久保 亨さんも参加者のメンバーに名を連ねている。だからクラブ員は、久しぶりの再会に胸を躍らせ、ワクワクして朝を迎えた。

初日の22日は快晴に恵まれた。早朝の待ち合わせとなったが、集合時間よりかなり前に7台のフェアレディZが到着し、皆の顔から笑みがこぼれた。北野 元さんは奥様と一緒にホテルに現れ、クラブ員とともに朝食を取った。その後は別の会場に移って、クラブ員の前で即興のトークショーを行っている。質問に答える形で、フェアレディZや浅間火山レースの思い出を語ってくれた。

午後は佐久市に本拠を構える「ENDLESS」に移動し、工場を見学。ご存じの方も多いと思うが、花里 功さんが生み出した「エンドレス」は、モータースポーツ参戦車両やチューニングカーに最適な高品質のブレーキシステムを製造するメーカーとして名を知られ、大きく成長した。最近はサスペンションパーツやケミカル製品などの分野にも進出し、オリジナリティの高いエアロパーツの開発を行っている。また、クラシックカーのレストア事業にも乗り出した。


●エンドレスの萩原社長自ら商品の説明を行う

ショールームにはストリート用だけでなくレーシングカー用や開発中のプロトタイプまで、ブレーキ関連パーツやケミカル用品が展示されている。取り扱いパーツと工場の解説を行ってくれたのは萩原正志社長だ。エンドレスの工場はいくつかに分散している。多忙にもかかわらず、社長自らクラブ員のためにエンドレスの製品の特徴や工場から送り出される製品の製作工程などを丁寧に説明してくれた。また、質問に対する解説も分かりやすい。見学したクラブ員たちは近代的な工場設備と精密な加工を行う工作機械に見入り、驚きの声を発している。


●高価な加工機械で設計したアイテムをスピーディに作り出す

軽井沢ツーリングの2日目は、「エンドレス」が運営している自動車ミュージアムの見学だ。その創業者で、会長の花里 功さんはレーシングカーや内外のクラシックカーを集めた自動車ミュージアム、「130コレクション」をクルマ好きに開放している。花里会長は、若いときにモータースポーツに夢中になった。軽自動車のエンジンを積んだFL500やフォーミュラ・パシフィックなどのフォーミュラカーで、富士スピードウェイを中心にレースに参戦している。また、B110サニー1200クーペで富士1000㎞レースなどに出場した。

「エンドレス」を創設したのは、花里会長がレース活動を通してブレーキの重要性を痛感したからだ。レース経験で得られたテクノロジーやノウハウを用い、ブレーキパッドの開発に着手している。そして87年に「エンドレスプロジェクト」を設立し、翌88年には高性能ブレーキパッドの量産体制を整えた。その後、多くのレーシングチームにブレーキシステムを供給するようになり、エンドレスもスーパー耐久レースや全日本GT選手権に参戦するようになるのである。

また、2012年秋からはレストア事業にも乗り出した。最初の作品はホンダN360だ。きっかけはホンダがN360をオマージュしたN-ONEを発売したからである。花里会長は、カスタムカーの祭典である東京オートサロンにN360とN-ONEを並べて展示したら面白いだろう、と考えた。そこでN360を探してレストアに取りかかり、オートサロンまでに完成させている。もちろん、ブレーキシステムは、制動力抜群のエンドレス製だ。


●訪問時には初代ファミリアクーペをレストアしていた

これ以降、毎年、1〜2台のクラシックカーをレストアし、オートサロンなどでお披露目した。レーシングカーを含めるとかなりの数になったので、21年春に長野県の佐久穂町に「130コレクション」を開設している。展示しているのは、内外のクラシックカーとエンドレス関連のレーシングカーだ。少しずつ台数が増え、今では30台を超えた。

すべての展示車両は新車のようにレストアされ、動態保存されている。そのほとんどは車検を取っているから公道を走ることも可能だ。日本車はホンダS800とライバルだったトヨタスポーツ800、初代スカイラインの1900デラックス、フルオープンのSP/SRフェアレディと兄弟車の初代シルビア、チェリークーペ1200X1-R、シビック1200RS、コンテッサ1300クーペ、ルーチェロータリークーペなど、自動車史に名を残す名車がズラリと並んでいる。サニー1200クーペやトヨタ86などのレーシングカーも展示された。





外国勢の展示は、アルファロメオのジュリエッタスパイダーとジュニアZ、VWカルマンギア、フィアット500アバルト、ミニ・クーパーS、MGミジェットなどだ。いずれもピカピカに仕上げられ、美しい。クルマ好きは時を忘れて見入ってしまう。エンジンやインテリアも見せてくれたから、フェアレディZに乗っているクラブS30の人たちの目は釘付けになった。間近に名車を観ることができるので、写真を撮る人も多かった。ここは、驚いたことに事前に予約すれば同乗走行を楽しむこともできる。今回は鑑賞するだけにとどめたが、名残惜しそうだった。



エンドレスの「130コレクション」には展示ルームの入り口にカフェルームがあり、ここではコーヒーを飲んだり、スイーツを食べることができる。エンドレスの商品が展示され、カー雑誌も置かれているので、クルマ好きはゆっくり寛げるだろう。だが、週末ということもあり、午後には渋滞が予想された。そこでミュージアムを見学した後は、流れ解散となっている。



移動距離が長く、スケジュールも目いっぱい詰まった有意義なツーリングだった。だが、内容の濃いツーリングだったことはクラブ員たちの笑顔を見ればわかる。帰り際には、みんな笑顔で再会を期して挨拶を述べていた。「130コレクション」の駐車場を出るときも、名残を惜しむようにフェアレディZは快音を響かせている。

〈文=片岡英明 写真=小見哲彦〉

ドライバーWeb編集部

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