2022/07/15 コラム

新たな可搬式(移動式)オービスを新潟が落札! TKKでもSGGでもない、日本無線のオービスとは

日本に配備されている移動式(可搬式)オービスの例。左はスウェーデン、センシスの「MSSS」、右は日本の東京航空計器「LSM-300」※警察庁のWebサイトより

たたっ、大変なことが起こりましたぞ! とんでもない入札結果を、いつもマニアックなツイートをしている「sdignsl」氏(https://twitter.com/sdignsl)が教えてくれた。新潟で2022年7月8日、「可搬式速度違反自動取締装置の購入 1式」についての入札が行われ、その結果はこうだったと!

(株)カナデン 1000万円
日本無線(株) 806万円 →落札


●新潟県の公式Webサイトより

ななっ、なぁにいぃっ! 驚天動地とはこのことだ! ん? 何のことか分かんない? 興奮が先走っちゃって申し訳ない。チョー手短に説明しよう。

三脚に載せて使う可搬式オービス(ネットでは「移動式」と呼ばれたりする)は、
・スウェーデンを本社とする世界的企業Sensys Gatso Group(SGG)
・日本のオービスの老舗企業である東京航空計器(TKK)
この2社が競り合う形になっている。ところが、こんな構図がどうにも見えてくるのだ。

・SGG=高性能
・TKK=性能的に問題あり。しかし警察庁がゴリ押し

警察庁はどこまで突き進むのか。いつか沈む、これは泥船じゃないのか。そんな中、2020年3月に新潟県議会は、いったん計上した可搬式(金額からしてTKK)の予算を取り消した。戦後初、前代未聞だと報道された。可搬式の整備数は新潟だけが0台だ。どんな暗闘があったのか。私はドキドキした。

2021年、新潟県警は新潟大学の協力を得て可搬式の「効果検証」を行った。使用した可搬式はTKKだった。そして2022年度に可搬式を購入することが決まった。ああ、結局そうなるか、と私は思った。

2022年6月、sdignsl氏が新潟の入札情報を教えてくれた。多くの県では、入札をやるにしてもTKKの採用を前提としていたり、ひいきが見られる。だが、新潟の入札仕様書はどうも公正っぽい。公正な入札をやればSGGが勝つはず。TKKの予算を取り消してSGGを購入するって、そんなことが許されるのか。そうして同年7月8日の入札結果をsdignsl氏が教えてくれたのである(ほんとありがとう!)。くり返そう。

(株)カナデン 1000万円
日本無線(株) 806万円 →落札

カナデンはTKKの代理店だ。1000万円はTKKの可搬式の、だいたいいつもの金額だ。それはいいとして、日本無線(JRC)の登場が「ななっ、なぁにいぃっ!」なのである。

マニア諸氏はご存知のとおり、JRCは昔から速度取り締まりの各種測定機を製造販売してきた。ワンBOX車の荷室に搭載する通称“移動オービス”(ネットでいわれる「移動式」とは別物)を販売してきた。けれど可搬式については、最初からずっと顔を出さなかった。

SGGの可搬式が日本の道路に初めて現れたのは2014年だ。その後、可搬式の導入はまったく進まず、2016年に突然、TKKがお目見えした。そこから、性能的に劣るTKKを全国の警察庁が購入し始めた。いったいどうなるんだと思っていたら2022年、よりによって新潟にJRCの可搬式が登場、TKKを破って落札! びっくり興奮するでしょ、ねえ。

不可解なのは、入札調書にSGGの名がないことだ。なぜ応札しなかったのか。入札仕様書にどうもおかしな部分がある。このせいか? SGGに聞いてみた。なるほど納得の回答が得られた。詳細は長くなる。またの機会に。

とにかくね、SGGから8年遅れで登場したJRCの可搬式、信頼性はどうなのか。TKKは今後どうなってしまうのか。ものすごく気になる。引き続き見張っていこう!

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING