2018/04/20 新車

国内公道試乗レポート……小型SUV・ジャガー E-PACEは、やんちゃなベイビージャガーだ!


F-PACEに続くジャガーの市販SUV。F-PACEが、ランドローバー「レンジローバー・ヴェラール」とコンポーネンツを共有するように、E-PACEは、同「イヴォーク」「ディスカバリースポーツ」の姉妹車(従兄弟車?)にあたる
 ジャガーのコンパクトSUV「E-PACE」のステアリングホイールを握っていると、まるでスポーツカーに乗っているかのようだ。試乗しているのは、同車の日本上陸記念モデルたる「First Edition 2.0L P250」。ジャガー・ランドローバーグループ自慢の2リッターINGENIUMガソリンターボ(249馬力、365Nm)に9段ATを組み合わせ、4輪を駆動する。お値段764万円。ボディは華やかなスペシャルカラー「カルデラレッド」にペイントされている。ドアを開けて運転席に座ると、ブラックレザーのシートは、特に「SUV用」を意識させない中庸な大きさ。ドライバーは、ドアのショルダーライン、メーターナセル、そしてセンターコンソールのサイドに設けられた助手席用のグリップハンドルで、視覚的にグルリと囲まれる。けして狭いわけではないけれど、自然と醸しされる適度なタイト感。うーん、スポーティ!
イアン・カラムの手になるハンサムSUVで、デザインはピュアスポーツカーである「F-TYPE」からインスピレーションを得たとする。「スポーツカーのパフォーマンスとSUVの実用性を兼ね備えた」と謳われ、乗車定員は5名。

ボディサイズは、全長×全幅×全高=4410×1900×1650mm。ホイールベースは2680mm。これは、アウディ「Q2」よりやや大きく、ボルボ「XC40」と近い数値だ。
 乗り心地は硬い。SUVとしては異例なほど、路面からの情報をコツコツと伝える。バランスを取るかのようにステアリングのゲインは高めで、操作に対してクルマがクイックに反応する。E-PACEをカーブが続く山道や峠に持ち込んだなら、ずいぶんとシャープなハンドリングを披露するのではないかと思うが、今回の試乗コースは市街地がメイン。なんだかうらめしい。室内は、黒基調にシルバーの挿し色。外装に合わせた赤いステッチがアクセントとして入る。スポーツモデルの定番にして、ジャガーの名に恥じないぜいたくな内装だ。一方、スロットルを開けると、意外なほどエンジン音が飛び込んでくる。音、乗り心地、ハンドリング……。E-PACEは、兄貴分の「F-PACE」以上に、リーピングキャットのSUVであることを声高に主張する。



室内には、10.2インチのタッチスクリーンを備え、指先でナビ、オーディオなどを操作可能。スマートフォンと接続して、アプリケーションを使うこともできる。照射範囲を自動で振り分ける「マトリックスLEDライト」、ヘッドアップディスプレイ、ウェアラブルなキー「リストバンド型アクティビティキー」といった先進装備、「緊急ブレーキ」「レーンキープアシスト」「パーキングエイド」といった運転支援システムを装備(一部オプション)。さらに豊富なオプションから、各種装備・機能を拡充できる
 



試乗車の「First Edition」は、特別色、20インチアロイホイール、パノラミックルーフなどを奢られた、ほぼフル装備の豪華バージョン。P250(764万円)ほか、D180バージョンも(738万円)もセレクト可能だ。特に生産台数は決められず、現地6月生産分まで注文を受け付けつけている。
 ちょっと残念に感じたのは、9スピードという立派なスペックを持つオートマチックトランスミッション。たしかに走り始めてしまえば、歯車の数に応じたスムーズかつ細やかな変速を見せるのだが、出足がよくない。「よくない」というのは、「遅くてトロい」ということではなく、その逆。コンパクトSUVの力強さを強調するためか、スロットルペダルを踏んだ量以上に燃料が噴かれる、いわゆる”早開き”のセッティングが施され、その演出が少々過剰なのだ。この日は、鎌倉の狭い道でストップ&ゴーを繰り返し、ときには急な上り坂で一時停止してからの発進なども強いられて、その都度、E-PACEの前のめりな”飛び出し”が気になった。INGENIUMユニットは、パフォーマンスと環境性能をバランスさせた、いわゆる小排気量ターボ。わずか1300回転で365Nmという3.5リッター並の最大トルクを発生する。とはいえ、”素の”排気量は1995ccだから、過給器がキチンと作動するまでの、回りはじめの一瞬に「意外とパワーない?」と感じさせるのを開発陣が嫌ったのだろう。ちょっと愛情かけすぎましたかね?

日本に輸入されるE-PACEのエンジンは3種類。2リッター直4ターボが、チューン違いで2種類用意され、249馬力/365Nmバージョンが「E-PACE P250」、300馬力/400Nmが「P300」に、それぞれ搭載される。加えて、2リッター直4ディーゼルターボ(180馬力/430Nm)を積む「D180」がカタログに載る。トランスミッションは、いずれもトルコン式の9速AT。
 E-PACEは、いわばスポーツカーをSUVの姿で表現したジャガー。実用性も高い。後席は、足先のフロアがやや盛り上がっているが、足元、頭上とも、スペースそのものは実用十分。バックレストは6:4の分割可倒式で、荷室容量を、通常時の577リッターから1234リッターまで拡大できる。ライフスタイルに合わせて、無理なく使えるスポーツSUVだ。今後、このヤンチャなベイビィジャガーが、どのようにしつけられ、成長していくのか。大いに期待して見守りたい。  
価格は、ディーゼルの「D180」が451万円から。249馬力の「P250」が475万円から。300馬力の「P300」は605万円から。エクステリアは、ノーマルの「E-PACE」、よりアグレッシブな「E-PACE R-DYNAMIC」に大別され、装備レベルによって、「S」「SE」、そして「HSE」へとグレードアップする。



サスペンションは、前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク式。駆動方式は、全車4WD。エンジン横置きの前輪駆動をベースとし、電制多板クラッチを介して必要に応じて後輪にトルクを分配する。4WDシステムは、D180/P250用の「エフィシエント・ドライブライン」と、P300の「アクティブ・ドライブライン」がある。前者は、前後トルク配分を最大50:50とし、左右後輪の差動制限にはブレーキを使う。後者は、後輪100%まで駆動力を与えることができ、また多板クラッチ式のLSDを備え、より積極的に駆動力を左右に振り分けることが可能だ。

 文と写真:ダン・アオキ

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