2024/03/18 新車 PR

ソルテラで足を伸ばして富士のした|スバル ソルテラ試乗インプレッション|

2022年5月にスバル初のEV(電気自動車)として誕生。EV専用のプラットフォームには、コンパクトで高出力のパワーユニットと大容量バッテリーを搭載。水平対向エンジンを積まずとも、動き出しからスバル車らしいこだわりが感じられるSUVだ。ふだん使いでの安心感をいっそう高めたソルテラで、季節の移ろいを感じる旅へ出た。
 
初出/driver 2023年11月号(2023年9月20日発売)
※2023年10月25日に発表した改良モデルの情報はこちら

SOLTERRA
●車名はラテン語で「太陽」を意味するSOLと「地球・大地」を意味するTERRAの造語。FWDとツインモーターのAWD(4WD)をラインアップ。価格:594万円(ET-SS/FWD)〜682万円(ET-HS/AWD)。試乗車のボディカラーはダークブルーマイカ


遠くへ行きたくなるEV
 
双子車のトヨタbZ4Xと同じく、スバル ソルテラには我慢の一年、勉強の一年だったに違いない。
 
2022年5月の発売で兄弟にヒケをとらない注文をスバルファンから集めたのもつかの間、1カ月でトヨタこだわりのホイールのハブボルト締結にリコールが発生。原因特定と対策決定に3カ月余りを要し、その間、受注停止を余儀なくされた。トヨタはハブボルト締結の知見が足りなかったことを素直に認めている。
 
10月に晴れて販売が再開されると、今度は急速充電が思ったようにできない点や、一充電走行距離のカタログ値と実性能の乖離が大きい点が、国内外のユーザーから指摘されるようになった。原因は駆動用バッテリーの劣化防止に配慮した充電制限や、電欠を防ぐため、メーター表示に反映されない航続距離を多めにした設定など。特にパワーユニットの電動化に対して、初めは慎重すぎるほど慎重な姿勢がうかがえた。
 
そして、国内価格発表からちょうど1年後の2023年4月、bZ4Xとソルテラは市場からのフィードバックを受けたEV性能アップデートが公表された。すでに納車が完了している車両にも無償で提供される。
 
この納車済み車両への無償アップデートは、特にソルテラにとって朗報。bZ4Xは現在もリース専用(※2023年10月25日の一部改良で一般販売を開始している)だが、ソルテラは当初から通常販売だ。スバルを選ぶユーザーなら、新世代のバッテリー電気自動車(BEV)も“自分のモノ”として愛車にしたいに違いない。そんなクルマ好きの気持ちに寄り添った、スバルらしい設定である。
 
人間の双子にも性格の違いがあるように、クルマ自体のキャラクターも少し異なる。太陽と大地から名前をもらったソルテラは、不思議とアウトドアが似合う。遠くへ足を伸ばしたい衝動に駆られるのだ。EV性能のアップデートでロングドライブの安心感も確実に増している。
 
あらためてステアリングを握ったのは、トップグレードのET-HS。
 
シャシーのチューニングはソルテラ専用だ。剛性感たっぷりの2ピニオン式電動パワーステアリングは、操舵感が比較的スッキリしたリニアリティ重視の操舵感。ダンパーは減衰力が若干高めの設定で、ロール剛性が引き上げられている。さらにドッシリした安定性と乗り心地を重視したbZ4Xとの違いは、ユーザーの好みの問題。意のままに操れる走りの一体感を求めるなら、やはりソルテラがいい。
 
EV専用のe-SGP(スバルグローバルプラットフォーム)を核とし、床下に大容量バッテリーを搭載したボディは、BEVならではの高剛性と低重心を実現している。この塊感あふれるボディが、操舵初期からダイレクトかつスムーズに向きを変える気持ちよさは、ちょっとした快感と言ってもいい。
 
動力性能は従来どおりだ。80‌kW(109馬力)/169Nm(17.2㎏m)のモーターを2つ搭載する、前後独立モーター駆動式AWD。トータルで3.5Lガソリン車に近い最大トルクを発進と同時に発揮する迫力は、2トン級の車重をまるで感じさせない。前後のモーターを合わせたパワーも218馬力と申し分なく、伸びやかな加速が持続する。
 
しかも、ソルテラは専用のドライブモードセレクトを搭載。パワーモードを選択すれば、抜群のアクセルレスポンスで動力性能を瞬時に引き出せる。アクセルオフの回生力を調整できるパドルシフトも専用装備。下り勾配や滑りやすい路面で走りやすいワンペダル走行から、高速巡行で電費を稼ぐコースティング(惰性走行)まで、使い方を覚えるとじつに便利なアイテムだ。
 
そして、210mmの最低地上高とAWD、さらにはX-MODEが生み出すラフロードの圧倒的な走破性。エンジン車では成し得ないきわめて緻密で正確な駆動力制御は、雪道でさえオンザレール感覚のハンドリングを見せつける。多くのユーザーに手が届きやすく、路面を問わない絶対的な走行性能と走りの一体感をここまで実現したクロスオーバーSUVは、世界にもそうはないだろう。
 
雨降って地固まる。ソルテラはこれからが待ちに待ったシーズン本番だ。夏も冬も、オンもオフも。
 
SOLTERRA
●今回は編集部(東京都心)から山梨の富士五湖、勝沼を経由して編集部までの400km強を走行。道中の通算平均電費は5.7km/kWh。途中、念のため2回(30分×2)の急速充電を行ったが、前述の電費であれば1回の充電でも十分余裕を持って帰れただろう


SOLTERRA 
しっかり改良。安心感がいっそう高まるアップデートを実施
  
発売から1年後の2023年4月にソフトウェアのアップデートを実施したソルテラ。変わった点は、おもに以下の3つ。
 
まずは「急速充電性能の向上」。従来は駆動用バッテリーの劣化を抑えるべく、1日あたりの急速充電によるフル充電(※1)回数を2回程度に制限していた。これを約2倍(※2)とし、長いと指摘された充電率80%以上の急速充電時間も約20〜30分短縮させた。
 
SOLTERRA

さらに「実航続距離表示の改善」。従来は電欠時に即走行不能とならないよう、メーター上で航続可能距離が0kmになっても走れる距離(バッファ)を多めに設定していたが、これ(0kmになるタイミング)を遅らせることで、表示される航続可能距離を増やしている。
 
そして「充電残量表示の改善」。従来型でグラフのみだった充電残量に%表示を追加。またエアコン使用時の航続可能距離も、従来は実際よりも電力を多めに消費する計算で(残量を少なく)表示していたものを、実態に即した表示とした。
 
SOLTERRA

※1:150kWの急速充電器で充電率(SOC)10%から80%に充電することをさす
※2:急速充電の仕様や使用状況により制限がかかるまでの回数が増える場合もある
 
  
SOLTERRA
ちゃんとSUBARU 
SUV風じゃない本格派
 
210mmと本格SUV並みの最低地上高を確保。バッテリーの内側と外側には補強材を施し、下まわりの保護性能も抜かりない。パワーユニットはモーターとインバーター、ギヤなどの駆動系を一体化したeAxle(イーアクスル)。今回乗ったAWD(4WD)は最高出力80kW/最大トルク169Nmの同基を前後に搭載する。
 
さらに、モード選択により4輪の駆動力を最適に制御し悪路走破性を高めるX-MODE(エックスモード)を搭載。ソルテラは、ダウンヒルアシストの制御領域を拡張し、上り勾配でも微速の一定速維持が可能となるグリップコントロールも備わる(車速は5段階で設定可能)。運転者はステアリング操作に集中できるのだ。
 
SOLTERRA
●X-MODE選択時にはメーター内に表示。モードはNORMAL(通常時)のほか「SNOW/DIRT」と「DEEP SNOW/MUD」を設定する

SOLTERRA

●シフトセレクターはダイヤル式。その周辺にX-MODEをはじめとした各種モード切り替えやスイッチを機能的にレイアウト 

SOLTERRA
●駐車時や路肩に寄せる際の死角を減らし視界をサポートするパノラミックビューモニター。床下透過表示機能付きで、不整地でも心強い
 
 
SOLTERRA
●トヨタ bZ4Xと兄弟関係にあるソルテラだが、パドルシフトはスバルだけの専用装備だ。回生レベルを4段階で任意に設定できる

SOLTERRA
●上級グレードのET-HSはミディアムグレー塗装+切削光輝の20インチアルミホイールが標準。試乗車の装着タイヤは235/50R20サイズのブリヂストン アレンザ001

 

SOLTERRA
●メーターは視線移動を極力抑えるべくドライバーから遠く上方に、センターディスプレイを中心とした各種スイッチ類は操作性に配慮し手前に配置。ET-HSは11スピーカーのハーマンカードンサウンドシステムが標準装備

SOLTERRA
●タンカラーの本革シートはET-HS専用で、前席にはベンチレーション機能も備わる。前席+後席左右シートヒーターは全車標準

SOLTERRA
●荷室はフロアの高さを2段階で調節できる。100V/1500Wのコンセントも備わる
 
 
[ソルテラ ET-HS(AWD)主要諸元]
■寸法・重量
全長:4690mm
全幅:1860mm
全高:1650mm
ホイールベース:2850mm
トレッド:前1600mm/後1610mm
最低地上高:210mm
室内長:1940mm
室内幅:1515mm
室内高:1160mm
車両重量:2030kg
■モーター・性能
型式:1YM〈前後〉
種類:交流同期電動機〈前後〉
最高出力:80kW/4535〜12500rpm〈前後〉
最大トルク:169Nm/0〜4535rpm〈前後〉
■駆動用バッテリー・性能
種類:リチウムイオン電池
総電圧:355.2V
総電力量:71.4kWh
WLTCモード 交流電力量消費率:148Wh/km
WLTCモード 一充電走行距離:487km
最小回転半径:5.6m
乗車定員:5人
■諸装置
サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:235/50R20
価格:682万円
※データはdriver 2023年11月号(2023年9月20日)発売時点。2023年10月25日に発表した改良モデルの情報はこちら

〈文=戸田治宏 写真=真弓悟史〉
SOLTERRA

ドライバーWeb編集部

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