2024/01/14 ニュース

WRX S4 STIスポーツ♯に新採用のホイールはなぜフレキシブル?|東京オートサロン2024|

限定500台のスバル特別仕様車「WRX STI Sport ♯」

STIが東京オートサロン2024(会期:2024年1月12〜14日・幕張メッセ)の会場で発表した特別仕様車「WRX S4 STIスポーツ♯」。500台限定の抽選販売という限られた人のみが体感できるスペシャルな仕立てと走りは、スバルファンでなくても一度は体感したい魅力にあふれたモデルとなっているはず。

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スバル、特別仕様車「WRX S4 STIスポーツ♯」を発表。500台の限定販売
 
というのも、STIは「運転がうまくなる」をコンセプトにベース車の走りを調律する“フレキシブル”なるパーツを開発。装着することでステアリングの切り始め(微小舵角)の車両応答性を高め、ドライバーの操作に遅れなく車両が反応することで気持ちのいい素直なハンドリングを体感できる。また、直進安定性も向上することから、わだちなど路面状況の変化による車体のブレを修正するステアリング操作も軽減。高速道路を利用したロングドライブの運転が楽になるなど、スポーティな走りだけでなく、日常使いの走りの価値を高めてくれるからだ。
 
WRX S4 STIスポーツ♯には、STIでお約束の“フレキシブル”パーツ(フレキシブルタワーバー、フレキシブルドロースティフナー フロント、フレキシブルドロースティフナー リヤ)を装着。さらに新作のフレキシブルパフォーマンスホイールなるものを採用した。これはどんな効果をもたらすのだろう……。
 
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このホイールについてSTIは「ステアリング操舵時の車両応答性を高めるため、前後で異なる形状とし、タイヤの接地面積を最適化」したと説明している。
 
そもそもステアリング操舵時の車両応答性向上についてはこれまでの“フレキシブル”パーツにも共通している。ただ、いずれのパーツも可動機構が付いていて、これらがフレキシブルに作用するから“フレキシブル”パーツだと認識していた。しかし新作はガッチリとした塊のホイールである。
 
どうにも不思議に思い、会場で開発担当者に聞いてみた。
 
「たしかにこれまでに商品化した“フレキシブル”と名の付くパーツは可動部がありましたが、ホイールには可動部はありません。この点では社内でも議論もありました。ただ、開発思想にある“素直”や“曲げやすい”という意味を込めて“フレキシブル”を製品名として採用しました。フレキシブルなパフォーマンスを備えたホイールというような意味合いとなります」
 
次なる疑問は、新作ホイールはこれまでSTI パフォーマンスホイールとしてラインアップしているBBSのRI-Aをベースに専用チューンを施したそれと違いが見られない。なのに前後の装着位置指定がある……。
 
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「ステアリング切り始めの応答性を高めるために、さまざまな要素を検証して開発を進めているなかでタイヤの接地面積の最適化も追求しています。今回はボディではなくタイヤに直接的に作用するホイールに着目し、操舵時にフロントのタイヤをわずかにゆがませることで接地面積を増やしました。旋回時は外輪よりも内輪のほうが舵角が大きくなります。その内輪の接地面積を増やすのが狙いです。具体的にはフロントホイールの内側リムの形状を変更してゆがみを最適化しました。一方で、旋回時はリヤの外輪に荷重がかかります。ここはゆがみを抑えることでグリップ力を確保しています。対角にあるタイヤのグリップバランスの最適化が新作ホイールの要となっています」
 
リム内壁の構造の違いでそこまで変わるものなのかとにわかに信じがたいが……。
 
「微小舵角の応答性にこだわって造り込んでいますので、日常シーンでもより素直なハンドリングが味わえます。ちなみに前後同形状と乗り比べましたが明らかに違いを感じられます」
 
筆者はスバル車の“フレキシブル”パーツ装着車をドライブするたびに、気持ちのいいハンドリングを実感してきた。確かにあり・なしの効果は絶大だと思っている。それでもなお気になるのは、“フレキシブル”パーツ3点盛りの上に追加されるのだから、変化しろはさほど大きくはないのではないか。
 
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「感じ方には個人差がありますので、従来の“フレキシブル”パーツでも違いを感じられない方はいらっしゃると思います。ただ、効果を感じているという方でしたらホイールでの変化も感じられるはずです」
 
話を聞いた開発担当者の自信は相当なものである。STIが手がける機能パーツは、ニュルブルクリンク24時間レースという過酷極まるレースを実験場として開発が行われている。そこには車両のパフォーマンスのみならず、24時間を戦うドライバーが集中力を保ち、体力の消耗を抑えるために、いかに楽にドライブできるかをつねに考えてレースカーを開発しているという背景がある。
 
その知見やノウハウがSTIパフォーマンスパーツとしてフィードバックされており、今回のホイールもじつはそのレースで先行開発を実施していたと言うから、WRX S4 STIスポーツ♯での採用の意義は十分にある、のだろう。
 
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500人だけが味わえるというのは何とも歯がゆいところではあるが、これまでのSTIコンプリトカー同様に売れ残りなく抽選販売となるに違いない。
 
〈文と写真=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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