2023/08/03 新車

新型N-BOXはなぜ「変わらなかった」のか? 開発責任者に聞いた

超キープコンセプトのモデルチェンジを敢行したN-BOX

2023年8月3日に内外装が公表された新型N-BOX。先代のデザインを色濃く残した新型について、その意図や方向性を開発責任者に伺った。

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●新型N-BOXの開発責任者を務めた諌山博之氏

■N-BOXの強さはどのあたりでしょうか?

「N-BOXが多くのお客様にお選びいただいている理由。それは、パッケージ、乗り心地や静粛性、ブランド力、安全性、質感の高いデザイン、動力性能、すべての項目で平均満足度を上まわっており、つまり総合力の高さであると考えております。商品としてもブランドとしても、やはりもともと総合力が非常に高いなかで、それによって初代、2代目とお客様に支持され、軽のなかでナンバー1、登録車を含めたなかでもナンバー1に輝くなかで、それによって口コミであったりだとか、下取りの高さだとか、そういったこころもうまく循環していると考えております。ですので、商品としては総合力、それがうまくナンバー1と絡み合ってお客様の支持をいただいているのかなというところですね」(統合地域本部 日本統括部 商品ブランド部 商品企画課 廣瀬紀仁氏)

■今回のモデルチェンジの方向性は?

「その総合力というのを今回、一段階上に上げているということです。強みをさらに磨き上げたうえで、ホンダコネクトの初採用もそうですし、パッケージングの進化、デザインの進化、静粛性も上げたりだとか、1つ1つを上げている。どれかをやめて、どれかを突出させるというのではないです。総合力の底上げをやりました」(以下、四輪事業本部 四輪開発センター 開発責任者 諌山博之氏)



■パッと見ですごく変わったという印象はないのですが…

「一目でN-BOXとわかるシルエットというのは大事なんですね。初代、2代目、そして新型の3代目と変えてはいけないところだったのです。見た目でまずN-BOXとわかってもらわないといけない。ですので、変えていません。The N-BOXです。シルエットでもN-BOXとわかるというのを目指しています。ただ、そのなかでも灯体を含めたデザインなどは大きく進化させております」

■ホワイトボディは先代と新型で共通ですか?

「完全に一緒ではなくて、衝突対応などで見直しているところもあります。骨格を基本的には流用しながら、実際には変えなくてはいけないところは変えています。プラットフォームは基本流用です。骨格にプラットフォームを含んでいますので、基本流用で変えなきゃいけないところを変えているという形です。ですので、Aピラーの立ち上がりは角度が一緒です。逆に変えようがないというところもありますけど」



■骨格の基本形状を変えなかった理由は?

「まずN-BOXとわかるスタイルをやろうとしたとき、骨格をいじりだすと一目でN-BOXとわかる外観ではなくなってしまいます。例えば、背を低くしようすれば骨格も変わるし、居住空間を狭くしてガラスを寝かせてスポーティにしようとすれば骨格は使えません。それですと一目でN-BOXだとわからない。つまり、N-BOXのよさをつぶすことになります。

N-BOXのいいところであるパッケージングが成立するのが、この形だと私たちは思っています。N-BOXは軽自動車のなかで室内が断トツで広いというのは、エンジンルームをやりくりしてコンパクトにするとか、そのへんはすでに成立しているので、逆に骨格の基本形状はいじっていません。

実際には衝突対策などでは骨格を強くしなくてはいけないところは当然対応しておりますが、そのためにパッケージ寸法が悪くならないようにいろいろな工夫を入れ込んでいます。例えば、自転車の積みやすさなんかも、普通にやったらこのくらい室内寸法は狭くなるといったところも、開発メンバーが知恵を出してミリ単位で設計してくれたので、先代よりも自転車は積みやすくなっています」

■新型N-BOXを開発するうえで苦労した点は?

「軽自動車の枠で安全の法規、それからプロトコルという第三者機関のテストというのが厳しくなってきているんですね。そういうのを入れながら、一方で先代以上に室内は広くしたい、静粛性を高めたいというように、両者の“せめぎ合い”ですね。そこを開発メンバーが先述のとおり1mm単位でしのぎを削りながら作り上げてくれたので、達成できています、頑張って先代以上の室内の広さをキープしながら、走りもよくしています。

あとは見てわかるように、灯体まわりのデザインにかなり“意志”が入っています。瞳を思わせるヘッドライトを持つ標準系は、ミリ単位で位置を上げたり下げたりずらしたりとか、そういうところもかなり入れ込んでおります。カスタム系はヘッドライトのなかに上側がロービーム、下側にハイビームと2つありますが、位置を吟味してかなり細かいところまでやっています」



■売れているクルマのモデルチェンジは大変ですね?

「自分たちが強い意志を持ってやったので、そこはあまり気にしていなかったです。きちんとやっていれば売れるクルマだと確信しているので。N-BOXらしさをきちんと表現できれば売れるクルマになるというのは先代でわかっています。

ですので、先ほど言ったように変えてはいけないところをわかっていたということですね。変えてはいけないところというのは、シルエットが一目見てN-BOXだとわかるところ、パッケージのよさだとか、先ほど言った総合力をどこかを引っ込めるのではなく、いいところを守りながら、レーダーチャートの図で少しでも外向きに面積が広げられるように。そうすれば必ず売れると私たちは信じて開発を行いました。いい商品ができたと自負しております」

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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