2023/07/20 新車

走りの気分も高まる!? ブラックフェイスの新顔、ルノー アルカナ/ルーテシアのEテック エンジニアードを試乗

引き締められた先進感あるルックス

夏の強烈な日光に照らされ駐車場に置かれていたのは、見慣れたはずのルノー アルカナ。ところが、どことなく違うクルマのように見えて、車高も低くなっているように感じる。

ARKANA

目の前にあるのは2023年5月11日に追加された新グレード、Eテック エンジニアードだ。これまでのR.S.ライン Eテック ハイブリッドと置き換わる形での設定となる。従来のアルカナとは違う雰囲気を持ち、車高が低く見えたのは、専用のブリリアントブラックエンブレムとフロントグリルガーニッシュ、スキッドプレートが装備されているためだ。

従来型もしくは継続販売となるR.S.ライン マイルドハイブリッドではフロントマスクに大きなルノーのクロームエンブレムが光り輝くが、エンジニアードはこれをブリリアントブラックで仕上げ、光の反射を抑えることでグリルを含めたフロントまわりが低く見える。実際の寸法に変更はないが、カラーリングによってより低くスポーティな印象を与えるのだ。

さらにフロントスポイラーには電動化技術の先進性をイメージしたウォームチタニウムカラーのアクセントが用いられている。強い日差しのなかで見ると薄いゴールドにも見え、他グレードと明らかに違う雰囲気を醸し出す。バンパー下端からロアスポイラーに続くなめらかな曲線はF1ブレードと呼ぶ、F1のウイングやカナードを想起させるデザイン。リヤのツインエキゾーストフィニッシャーもウォームチタニウムカラーで仕上げられていて、スポーティなルックスになっている。

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このウォームチタニウムカラーのアクセントは内装にもあしらわれる。また、BOSEサウンドシステムを標準装備しているのもエンジニアードの特徴だ。

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エンジニアードというグレード名から、アルカナのホットバージョンと思う方もいるだろうが、新グレードはおもに内外装のカラー変更によってスポーティに仕立てたグレード。注目を集めているフルハイブリッドシステム“E-TECH”などパワートレーン系に変更はない。

定評の胸のすく走りに変わりなし!

輸入車唯一となるフルハイブリッドのEテックは相変わらず気持ちいい走りを見せる。アクセルを踏むとレスポンスよく加速してくれ、応答遅れはまったくない。ルノーが独自に開発したフルハイブリッドシステムは、駆動用メインモーターとHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)の2つのモーターを使い、1.6Lの自然吸気エンジンを組み合わせている。

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ユニークなのが電子制御ドッグクラッチマルチモードATで、この存在がハイブリッドにスポーティさを与えているポイント。モーターとエンジンの駆動に合わせて変速しているのだが、ドライバーに変速を感じさせることなく、力強い加速をもたらしている。1.6LのNAという雰囲気ではなく、2.5Lターボクラスのイメージで、その加速がどこまでも続くかのように感じ、スポーティさにあふれている。

Eテックの機構や燃費性能に注目が集まる

ルノーが販売データを分析したところ、これまでにアルカナ Eテックハイブリッドを購入したユーザーの6割以上が、Eテック フルハイブリッドに魅力を感じたという。また5割以上がエクステリアデザインと燃費性能が魅力と回答している。注目したいのは、購入前に乗っていたブランドの第1位がトヨタだったということ。トヨタのハイブリッド車に乗っていたかはわからないが、多くのユーザーが燃費性能にも注目してEテック フルハイブリッドを選んだのは興味深い。

2023年春にメディア向けに行われた燃費チャレンジでは、約800kmを走りトップが33.3km/Lという衝撃的な数値をマークしている。参加した23メディアの平均は30.3km/Lで、ちょっとエコランを意識するとかなりいい燃費になる。

エアコン多用の猛暑でも燃費に優れるも……

今回の試乗でも燃費を計測してみた。外気温は32℃。エアコンの設定を22℃として、首都高速湾岸線大黒PA近くのベイブリッジから羽田空港近くの殿町ICまでの約15kmをエコランすると36.6km/Lを記録。やや下り坂が多い高速区間で短距離の参考燃費とはいえ、真夏の猛暑下でも好燃費を叩き出すことが改めて確認できた。

ヨーロッパ車であることを実感したのは、エアコンの設定温度が22℃でちょうどよかったところ。羽田空港近くから東京湾アクアラインを通って木更津まで40分ほど走ったが、その間、エアコンは最大風量のままでファンノイズが耳障りだった。こうした傾向は現在のヨーロッパ車でもありがちで、早めに風量を絞る日本車とは対照的だ。その後も最大風量が続いたのでオートからマニュアルにして風量を調整した。

走りを洗練させるボディダンパーも試した

アルカナには、オプションとして設定予定のコックスボディダンパーが装着されていた。これはヤマハのパフォーマンスダンパーをコックスがチューニングしたもので、サスペンションのダンパーに似たシステムをボディの前後に装着することでボディの変形や振動を整える効果があるという。首都高速道路の路面のジョイントを乗り越えるとノーマル(非装着車)よりショックの収まりがいいと感じたものの、それがボディダンパーによるものか、はっきりとはわからなかった。


LUTECIA

エンジニアードなルーテシアにも試乗

アルカナ続きルーテシアのEテック エンジニアードにも試乗した。こちらも2023年6月29日に追加されたグレードで、エクステリアを中心にドレスアップしているのはアルカナと同様だ。

LUTECIA

専用のブリリアントブラックのエンブレムとグリル、ウォームチタニウムのアクセントカラーがあしらわれた専用デザインのF1ブレードの採用によって、表情が引き締まって見える。インテリアは専用ステアリングを採用するのはアルカナと同じだが、ルーテシアはカーボン調のダッシュボードやドアトリムを採用しているため、よりスポーティな印象に仕上げられている。

LUTECIA

ワインディングも楽しめる

Eテックハイブリッドのシステムもノーマルと同じでスペックに変更はない。アルカナよりルーテシアの出力はやや抑えられているが、車重が約160kgも軽いため軽快なハンドリングが楽しめる。アルカナもSUVとしてはワインディングを楽しめるハンドリングだが、やはり車高が低いルーテシアのほうがロールは少なく、ステアリングにダイレクト感があってスポーティ。ワインディングの走りを楽しめるフルハイブリッドだ。

LUTECIA

路面が荒れた舗装路を走るとルーテシアとアルカナの車格の差を実感する。ルーテシアはロードノイズがフロアから侵入するためややノイジーだ。アルカナは上級モデルらしく遮音に優れ、ロードノイズはもちろん風切り音も小さい。ルーテシアは70km/hほどになると走行音や風切り音が大きくなり、ロードノイズはかき消されてしまうため、高速巡行ではノイズは気にならない。
 

ARKANA
アルカナにはエレガントな特別仕様車も新設定

アルカナには特別仕様車のアントラクト Eテック フルハイブリッドを設定(2023年6月30日発売)。専用デザインのフロントアンダーグリルやブラックルーフの2トーンカラー、クロームウインドーモールなどによってエレガントなスタイルにドレスアップ。インテリアはライトグレーのルーフライナーが採用され、専用ダッシュボードパネルや専用ドアトリムなども採用されている。

ARKANA

〈文=丸山 誠 写真=澤田和久〉

ドライバーWeb編集部

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