2019/01/15 ニュース

社長が宣言!? STI最強のS209は日本にも入るかも!

S209とは、22Bの再来か?

スバルのモータースポーツ統括会社であるSTIは、開催中のデトロイトショーにて「Sシリーズ」初となる北米市場向けモデル「S209」を発表した。S209は、STIがWRX STIをベースにエンジンや足まわりを専用開発し、内外装にも専用装備を追加した特別なモデル。STIが考える速さの究極形である、「ドライバーの意のままに操れる“速さ”」を実現すべく、大幅な性能向上を達成している。北米向けSTIチューンドモデルとしては、昨年発売したWRX STI タイプRAと、BRZ tSに次ぐ第3弾だが、STIコンプリートカー最高峰の「Sシリーズ」はこのS209が初となる。

北米向け2.5リッターターボ「EJ25」を大幅チューン!

エンジンは北米仕様WRX STI専用のEJ25をベースに、あらゆるシチュエーションで安心して気持ちよくアクセルを踏める最適なパワーを目指し、専用チューニングを実施。吸気系統には、専用の大型エアクリーナーや専用吸気ダクトを採用して、吸気抵抗を抜本的に低減した効率的なエアインテークシステムを開発。また専用開発の大径ターボチャージャーに加えて、排気系統にも大口系テールパイプを備えた専用設計低背圧マフラーを採用。これらを専用ECUで制御することで、最高出力は歴代STIモデル最高となる341hp(開発目標値)を発揮。インタークーラーウォータースプレイを装備することで熱による性能低下を抑制するとともに、専用設計の鍛造ピストン&コンロッドを採用し、量産エンジンとしての信頼性も確保している。
写真左下にあるのが、今回新規開発となったエアインテークシステム。STIのロゴが入る
 
フェンダーアーチの上にあるスリットは、エンジンルーム内の熱の溜まり場から効果的に熱を逃がすため。これも初採用だ
 
迫力の4本出しマフラー。低背圧のパフォーマンスマフラーだ
 

ハイグリップタイヤは歴代最大幅の265

足まわりには、歴代STIモデルで最大の幅を持つダンロップ製265/35R19ハイグリップタイヤ(SP SPORT MAXX GT600A)を履いたBBS製19インチ鍛造ホイールを装備。これを専用開発のビルシュタインダンパーと専用コイルスプリング、強化ブッシュと組み合わせ、オーバーフェンダーで広げたド派手な専用ワイドボディに収めている。さらにニュルブルクリンク24時間レース車両で実証されたストラットタワーバーやドロスティフナーといったSTI独自のフレキシブルパーツに加え、軽量かつ車体剛性を高めるカーボンルーフを採用。フロントアンダースポイラーやフロントバンパーサイドカナード、ドライカーボン製大型リヤウイングと空気の流れを整え、ダウンフォースを増やす数々のエアロパーツも装着。高いハンドリング性能を実現している。外板色は、WRブルー・パール(ホイール色:マットグレー)、クリスタルホワイト・パール(ホイール色:マットゴールド)の2色を設定。 
日本向けのS208は8.5Jのホイールだったが、S209は幅を265に広げたためホイールも拡大。9Jとなっている
 

カーボンルーフ、大型ウイングはS208と同じもの
 

バンパーサイドカナードがただ者ではない感を主張。前後ともにワイドフェンダーを装着する
 

次のページではSTIの平川良夫社長と開発部長の高津益夫氏のインタビューを掲載!

このクルマは日本に導入されるのか?

社長&開発主査に突撃!S209を日本にも入れてください!


左が、STI代表取締役社長の平川良夫氏。右は、現行WRX STIの開発主査を務め、現在はSTI商品開発部 部長の高津益夫氏。この2人に話を聞いた
 
ーー S209を開発した経緯と、Sモデルとして北米市場に初めて導入するきっかけを教えてください。社長 昨年、スバルとしてアセント、SUVの3列シート車、この北米市場に導入しました。これで大体、SUVのフルラインアップが揃ったかなと。それと、スバルとしてお客様に提供したいスポーツの部分。このマーケットが元気になりますようにと。その2つを提案していて、今まさにこのマーケットが元気になる、そのトップエンドのクルマを投入するのにいい時期になったということがあります。ーー かなりアメリカではこのSシリーズは欲しい欲しいという声あって、機は熟したという感じでしょうか。社長 アメリカで、「STI」は、いわゆるグレード名称という意味合いが色濃かったものですから、外観も新しくしたので、われわれとしては「STI」を商標として確立したいという思いがあります。じつはSTIは、アメリカでは日本市場ほど浸透していなくて。 まだWRXのなかの1グレードにすぎないんですね。スバルのなかのスポーツブランドですよということをお伝えしたくて、今回このS209をお披露目しました。ーー 北米市場にSモデルを導入するにあたって、ずいぶん時間がかかったように思うのですが。社長 単なるアドオン車両ではなくて、一からすべて見直して作っています。パワーユニットだけではなくて、パーツもシャシーも含めて新たにしていますので。ーー S209というのは、北米専用なんですか? ほかの市場には投入しない?社長 現時点では、アメリカのお客様に、ということで作っています。ーー 日本にこのS209は導入されないということですか?社長 日本向けは、現段階では検討しておりません。それは、過去のモーターショーで、トップエンドのクルマを用意するとお客様とお約束しました。それに対する、ひとつめの回答です。ーー これまで日本向けに作っていたSシリーズとは、クルマの作り方がちょっと違うのでしょうか?

1983年3月に登場した22B(インプレッサ22B STiバージョン)は日本市場向け。STIの伝説的コンプリートカーで、ワイドフェンダーが印象的。S209も、22Bをイメージしてド派手なワイドフェンダーを装着する
 社長 そうですね。22Bを、アメリカをのぞく日本を中心にお客様にご提供して、まる20年。ちょうどその節目もありましたので、多少、22Bの雰囲気も醸し出しながら、デザイン面を作ってきました。今まで、STIは走れば(そのよさは)わかるんだけど、という状態だったんですが、外観からも何かを感じさせるようにこのクルマは作り上げました。ーー 高津さんは、量産モデルのWRX STIの開発主査をされていましたが、そのときはいろんな制約があって、やりたくてもできない部分があったと思うのですが、このクルマに託した思いはどんなところにありますか?高津 今回、コンプリートカーということで手作り。ハンドメイドでいろんなことがやれる。そこを最大限活用して、量産ラインでは実現できないものを。ーー 日本向け、北米向けではクルマの味付けみたいなものは変わってくると思うのですが。高津 このクルマはなんといっても速さにフォーカスして開発をスタートさせました。速さの指標を作って。そういう意味で、従来のSとは違う入り口で入っていったんですけれども、やっぱりクルマを作り込んでいくなかで、STIの哲学みたいなもの。それは共通しているものがありますので、仕上がったクルマで見てみると、確かに従来よりは速いクルマではありますが、質感もしっかり備わっていて。トータルバランスの優れたクルマになったと思っています。ーー 開発の指標というのはどういったものなんでしょうか?高津 とあるサーキットで、どのぐらいのタイムを出せるポテンシャルを備えよう、ということです。ーー RA-Rとこのクルマは、どっちが速いんですか?社長 走らせ方、によりますかね(笑)。RA-Rは、群馬サイクススポーツセンター、日本を代表するような山道に照準を合わせています。ですので、最後の調味料ひと振り、のところでちょっと違うイメージです。ーー 直近のSシリーズは、ニュルブルクリンクをフィーチャーしていたと思うのですが、そことも違うのですか?社長  これは、ニュルで走ったクルマから持ってきてますので。高津 ダンパーの減衰力のセッティングの仕方とか、ニュルブルクリンクのレースカーと同じような。ーー アメリカのサーキットで速く走りたいという思いもありながら、ニュルブルクリンクも。高津 ニュルのレースカーから引き継いでいるものというのは、かなりあります。ーー それを一番感じさせるような部分はどこですか?高津 それは今回、トランクのドロスティフナーとか、まさにニュルのレースカーからフィードバックしています。ーー 何台限定とかあるんですか?高津 約200台です。ハンドメイドなので、1台1台丁寧に作っています。社長 1日、2台しか作れないんです。ほかのSシリーズは、1日に3、4台作れていましたが、このS209は特別です。特にボディに時間がかかります。高津 ホイールアーチまわり、ワイドフェンダーの部分の改造部分が大きいですから。それが全部手作業なので、どうしても時間がかかります。ーー 今回、Sシリーズ初めての2.5リッターターボですが、迷いみたいなものはなかったんですか? 2リッターターボのほうがいいかなとか。社長 もちろんありました。EJ20の、8000回転まで回る、あの高回転が欲しいですよね。やっぱり、2リッターと比べると、2.5リッターは多少ピストンとかが重いので。軽快に、7000、8000回転を使うとなるとやっぱり2リッターのほうが上。だから、迷いました。ーー 2.5リッターになった経緯というのは、アメリカ市場がよりトルクフルなほうがいいという。社長 そうです。ふだん使いを犠牲にしない、ってうのがSTIの原点なので。サーキットでの速さという目標を掲げても、ふだん使いを犠牲にしたらSTIではなくなってしまいます。ふだんでもものすごく快適に、質感を上げていながらニュルの知見をいくつか入れて、限界領域もかなり上げています。例えばプロのドライバーが、筑波サーキットでドリフトに持っていこうとしても、クルマのほうが勝っちゃって、四輪がグリップしちゃいます。それぐらい、限界を上げています。ーー タイヤが大きくなったのは、エンジンが違うからですか?社長 このタイヤは、速さと快適性を高次元でバランスさせようとして、構造、サイドウォールの剛性、トレッドゴムの選択まで、タイヤメーカーさん(住友ゴム)に開発に100%入ってもらって、このクルマに合わせてゼロから開発しています。ので、このタイヤはまだ市販品としては販売されていないタイヤです。ーー S209専用タイヤということですね。となると、RA-R(※)のときとはタイヤのチョイスの仕方がちょっと違いますね。そのほか、S209用に開発した技術などはありますか?社長 まずは吸気系ですね。エアクリーナーボックスも、みなさん初めて見る形だと思います。そこから始まって、エンジンのいくつかの部品も新たに設計し直していますし、排気も、ボディも、シャシーも……。例えばエンジン。水平対向なので、吸入管をまでターボを経由すると比較的経路が長いんですね。その部分部分で圧損を下げても、効果は限られてします。その点でこのS209では、全体に回転しながらターボ側に入っていくような、吸入効果を上げた構造にしています。これまでなかった技術です。ーーリヤウイング自体は、今回新規のもの?社長 いえ、S208と同じものです。ーー このクルマは、どの辺がSTI最強なのでしょうか?社長 日本では、最高出力329がトップ。このクルマの馬力は、北米で使われる単位hpで341という数値です。ので日本のpsに換算すれば、346psになります。北米のWRX STI、いわゆるベース車は2.5リッターターボで310hp。ーー hp で見て、310から341となるとすごいアップ率ですね。日本の2リッターターボだと、ベース車は308でS208やRA—Rは329。最高出力のアップ率は北米のほうが高いですね。社長 8000回転まで気持ちよく回るエンジンが日本のEJ20ですが、北米のEJ25はやっぱりピストンが重いので、そこまではいかないですね、北米向けは。ーー どこからがレッドゾーンなんですか?社長 そのへんはあまり上げていません。トルク重視ですので。もともとEJ25は低回転からトルクが出るエンジンですので、トルクカーブとしては中盤以降に盛り上がりを持ってきています。ーー 北米の2.5リッターは、日本向けの2リッターよりも乗りやすいというイメージですか?社長 私は、8000回転まで淀みなく回る2リッターのほうが好きです。ですので……(笑)。ーー おやおや? これは日本向けも期待できそうですね? しかし北米向けの約200台は、一瞬でなくなってしまいそう。社長、ぜひ日本にはこのS209の外観で、さらにパワーアップした2リッター搭載のSモデルをぜひ投入してください!

S209主要諸元(開発目標値) ※[ ]内は、換算値●ボディサイズ・寸法全長×全幅×全高:181.9×72.4×58.1(インチ)[4620×1839×1476(mm)トレッド前/後:60.8/61.2(インチ)[1544/1555(mm)最低地上高:4.9インチ[125mm]車両重量:3485ポンド[1581kg]●エンジン型式・種類:EJ25・水平対向4DOHCターボ最高出力:341hp[346ps]燃料タンク容量:15.9ガロン[60リッター]燃料種類:プレミアム 

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