2018/04/18 ニュース

ブリヂストンがアスリートの足元を支える?パラトライアスロン秦 由加子選手の義足ソールの秘密

ブリヂストンが、タイ合宿までツイてきた……
ブリヂストンは、パラトライアスロンの秦 由加子選手がランパートで装着する義足用に、新型のゴムソールを開発した。秦選手が求める高いグリップ性能と耐久性能を実現するため、これまでタイヤ開発で培ってきた開発技術を応用し、新しいパターンとゴムを設計。5月から始まる世界パラトライアスロンシリーズでの活躍に貢献し、また東京2020を目指す秦選手の挑戦を足元から支える。この義足用ゴムソール、昨年は秦選手のニーズであったグリップを重視したゴムを開発。シーズンを通じて使用した秦選手は、「滑らない、安心して走れる」と高く評価している。トライアスロンのランパートでは、横断歩道だったり、石畳だったり、コースによっての路面変化がかなり厄介。秦選手は、「滑ると、足を持っていかれてしまうんです」と表現。じつは義足にはかなりの荷重がかかっている。ブリヂストンが秦選手の走っている際の荷重を計測すると、局所的にはなんとトラックやバスと同じぐらいの接地圧がかかっていることが判明。確かにそれほど大きな接地圧で、ツルッと滑ったらひとたまりもない……。そんな不安を一気に解消するゴムソールができあがっていた。ハイグリップだと摩耗性が厳しいのはタイヤと同じただ、秦選手から新たな要望が上がった。それは、耐摩耗性だ。タイヤで考えてみればわかりやすいが、ハイグリップなスポーツタイヤ、はたまたレース用のタイヤなどは、普通のタイヤよりも摩耗が激しい。一般的にグリップと摩耗性は相反する性能なのである。そう、強大なグリップ性能を得た秦選手仕様のゴムソールも、耐摩耗性に不安が……。例えば秦選手が遠征中に、ゴムソールが摩耗して剥がれてしまったとする。張替えはそう簡単なものではなく、ゴムソールの耐久性に不安があったら練習や大会などでも自分を追い込むことができないだろう。摩耗を気にすることなく、でもグリップはそのままで、3〜4カ月使いたい!というのだ。なかなか技術屋泣かせの要望か?
そこはさすがは世界屈指の技術屋集団。秦選手が、「タイで合宿してきます」とブリヂストンに伝えると、「んじゃ、ついていきます」。秦選手は、「え?ほんとに!?」とびっくりしたそうだが、「現地現物」がブリヂストン流。暑くて過酷なタイの環境下で、ゴムソールがどんなふうに使われ、どのように摩耗していくのか……練習に帯同しながら徹底的に情報を集めた。秦選手の走りにおいて、踏み込みから蹴り出しまでの接地面に加わる力と挙動も観察。その解析にもとづき、開発されたのが今回のソールパターンだ。
レース使用時の加速に耐え、高い耐摩耗性能を発揮するよう、つま先部(写真上)は昨年のものより”溝なし部”が増えた。それ以外は、さまざまな路面をつかみ、安定したグリップを発揮するように最適化されたパターンを採用している。この新型ソールは、本日秦選手に初めて提供された。今後実戦投入するとのこと。滑らない、そして減らない新型ソールと秦選手の活躍に期待大!である。〈秦 由加子選手〉参加競技:パラトライアスロン1981年千葉県出身。3歳下ら10歳まで水泳を習う。13歳で骨肉腫を発症、右足の大腿部切断を余儀なくされてからはスポーツから遠ざかっていたが、2008年に障がい者水泳チームで水泳を再開。2012年にトライアスロンに転向した。2018年2月17日、ITUパラトライアスロンワールドカップ(デボンポート)PTS2優勝。 

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