2022/10/19 カー用品

グッドイヤーの最新オールシーズンタイヤのドライ・ウエット性能を試す|グッドイヤー ベクター4シーズンズ GEN-3/GEN-3 SUV|

ベクター4シーズンズGEN-3の気になるドライ・ウエット性能を試す

ふだんはサマータイヤで、冬季になるとスタッドレスタイヤに履き替えるという慣習のある日本。“オールシーズンタイヤ”というと、多くのユーザーはSUV用という認識で、乗用車に履くというユーザーは限定的だった。新車では一部の輸入車に装着されているぐらいで、国産車となると北米が主力のモデルに装着されているだけだった。
 
オールシーズンタイヤの認識に変化が起こったのは、ベクター4シーズンズ(以下ベクター)が登場してからといっていいだろう。雪道を走るためにはスタッドレスタイヤが必須というのが常識だったが、ベクターの登場によって乗用車のタイヤ選びにオールシーズンという選択肢が加わった。今では各ブランドからラインアップしており、オールシーズンタイヤの選択肢も広がっている。

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第3世代に進化。SUV用もラインアップ
 
2022年8月、新たにベクター4シーズンズ GEN-3が登場した。GEN-3はジェネレーション3=第3世代の意で、これまでよりも大きく進化したモデルだ。使用シーンや車種などの多様化により、乗用車向けに「ベクター4シーズンズGEN-3」、そして新たにSUV向けとして「ベクター4シーズンズGEN-3 SUV」を用意。2製品をラインアップした。新シリーズはプレミアムゾーンに位置づけられ、従来モデルのベクター4シーズンズ ハイブリッドはスタンダードゾーンとして継続して販売する。

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●左が乗用車向けベクター4シーズンズGEN-3、右がSUV向けの同GEN-3 SUV
 
以前試乗した氷上や圧雪路でのテストで、GEN-3はスタッドレスタイヤに迫る性能を確保していることをお伝えした。もちろんアイスバーンが多い地域での使用は推奨できないが、そうした場面に遭遇しても速度を落とせばなんとか通過できる性能を確認している。今回は冬性能の確認に続いて、日常の使用シーンで気になるドライ・ウエット性能を試した。

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意外に思うかもしれないが、基本的にオールシーズンタイヤの多くはサマータイヤと比べるとドライ路面やウエット路面が苦手なことが多い。これは雪道での性能を高めるためにトレッド面のブロックやサイプがスタッドレスに近いデザインになっていて、ブロックそのものが変形しやすかったり、サイプが倒れ込むことで路面との間の水を排出しにくい、などといった要因がある。

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そこでGEN-3は、トレッド面を支えるアンダートレッドに、より強い構造を採用。さらにドライ路面でのハンドリングに大きく左右するショルダーブロックを強固にすることで操舵時のタイヤの変形を抑制しているという。


ドライ性能のハンドリング性能はかなり高い
 
これらを確かめるため、GEN-3と従来の4シーズンズハイブリッド(以下ハイブリッド)を装着した日産リーフで、パイロンスラロームを行った。ハイブリッドはステアリングレスポンスが半テンポ遅い印象で、中立付近での応答性もスタッドレスタイヤのようなあいまいさが残っている。さらにペースを上げ、危険回避のダブルレーンチェンジ並みにブレーキングからの素早い操舵をすると、やや腰砕け感が出てしまった。

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GEN-3で同じコースを走ると、まるでサマータイヤを履いているような感覚で素早くスラローム操作に反応する。前輪にブレーキを残しながら、ややこじるようなステアリング操作をしても、それに応答してノーズが向きを変えていくのには驚いた。グリップ自体が高いレベルにあり、強めの横Gを発生させても腰砕け感がないのだ。
 
パイロンの設置間隔を広げた緩やかなスラロームコースの走行では、確かな手応えと同時にしっかりとしたグリップが確かめられた。まるでサマータイヤのようなハンドリング性能の高さを感じたのだ。
 
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ハイペースでのパイロンスラローム後にショルダー部分を確認すると、GEN-3はわずかにキズがあるだけで摩耗が少ない。これはショルダー部に新しいオールウェザーシリカコンパウンドを採用した効果だろう。中央部は雪道でのグリップを担当し、ショルダー部はドライ路面でのコーナリング性能を高めているのだ。新品のタイヤを近くで見ると、ショルダー部と中央の色というか質感が違っていることからもわかる。
 

安心できるウエット性能も確認できた
 
次はウエット路面でのブレーキ性能を試した。試乗車はカムリとハリアーだ。先述したようにオールシーズンが苦手とすることが多いのがウエット路面。カムリはGEN-3とハイブリッドを比較。ハリアーはSUV用として新登場したGEN-3 SUVと同社のオールシーズンタイヤ、アシュアランス ウェザーレディを比較した。70km/hからウエット路面でフルブレーキする。
 
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カムリでフル制動すると明らかにGEN-3のほうがペダルを踏んだ瞬間の減速Gの高まりが早く、ABSの介入が少ない。駐車場に水をまいたテスト路面だったので駐車枠の白いペイントを横切るという厳しいコンディションだが、3回トライした制動距離は1回目が18.2m、2、3回は18.4mとばらつきが少なく、平均18.3mという結果で、制動感も安定していた。
 
ハイブリッドはオールシーズンとしては頑張っているが、制動GがGEN-3ほどではないことを体感できるほどの差があった。ちなみにハイブリッドでは1回目は19.7mだったが2、3回目は20mオーバーで、平均は20.3mだった。プレミアムとスタンダードタイヤの差が明確に表れた結果で、GEN-3が大幅に進化したということがうかがい知れる。
 
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ハリアーはアシュアランス ウェザーレディと比較したが、やはりGEN-3のほうが平均18.7mで圧倒的に制動距離が短かった(ウェザーレディは平均20.7m)。カムリとハリアーで共通するのはGEN-3の初期制動力の高まりのよさ。これはブレーキングによって前輪の荷重が高まった瞬間、剛性の高いショルダーブロックがグリップを高めているのだろう。ウエット路面での制動力もGEN-3の実力を感じ取れた。
 
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ドライ路面のコンフォート性も高い
 
オールシーズンタイヤは1年中履きっぱなしになるのでコンフォート性能も気になるところ。そこで、一般路で乗り心地と静粛性を確かめた。まずはフォルクワーゲン ゴルフに装着したGEN-3とハイブリッドで乗り比べると、GEN-3はわずかに突き上げ感が少なくなり、乗り心地が向上している印象だった。
 
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ミニバンのホンダ ステップワゴンでも比較した。60km/h前後でスタッドレスタイヤによくあるパターンノイズがわずか聞こえたが、これは車内でラジオなどを聞いていれば気にならないといったレベル。ただしフロアまわりの遮音性能が低い車種だと気になる場面もあるだろう。

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遮音性が高いアウディA4でも試したが、こちらはパターンノイズがまったく気にならず、乗り心地もサマータイヤと変わらない印象だったからだ。
 
さらにSUV向けのGEN-3SUVをマツダ CX-5に装着して、ウェザーレディと比較したがGEN-3SUVのほうがロードノイズが静かだった。
 

GEN-3は夏も冬も満足感の高い仕上がり
 
GEN-3はプレミアムタイヤというだけあって、既存モデルで併売となるハイブリッドよりあらゆる性能が向上している印象だった。特筆したいのは、サマータイヤに迫るハンドリング性能を備えつつアイスバーンであっても慎重に走れば走破できる可能性を持っていること。もちろんスタッドレスには及ばないが、降雪時でも安心感があり、余裕を持って走行できる。オールシーズンタイヤが大きく進化したことが感じられた。

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冬用タイヤへの交換というわずらわしい作業や保管場所の確保という悩みから解放されるのもうれしいポイントだ。これからオールシーズンタイヤを選ぶならプレミアム感が味わえるGEN-3をオススメしたい。
 
〈文=丸山 誠 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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