2022/10/14 コラム PR

野人・岡野雅行とHondaのロボット芝刈り機「Miimo」がタッグを組んだ!? 〜ガイナーレ鳥取「shibafull(しばふる)プロジェクト」〜 

「ちょっとボール蹴ってもらってもいいですか?」とのリクエストに応えてくれたSC鳥取社長の塚野真樹さん(左)と、同GMを務める岡野雅行さん(右)

元サッカー日本代表の“野人”こと岡野雅行さんがゼネラルマネージャーを務めるJリーグクラブのガイナーレ鳥取が立ち上げた、幼稚園や小学校などの校庭や地域の芝生化を推進する「Shibafull(しばふる)プロジェクト」。Hondaは、ロボット芝刈機「Miimo(ミーモ)」を活用して、このプロジェクトのパートナーとして参加している。

※driver11月号(9月20日)より掲載



■こまめな世話が必要な芝生の管理にミーモが活躍

湿気をたっぷり含んだ浜風と足下の青々とした芝生が発する草いきれに包まれると、長旅の疲れが癒されてリラックスした気分に。初夏のまばゆい夕陽に照らされたグリーンのピッチは生命力に満ちあふれている。

ここは鳥取県米子市のチュウブYAJINスタジアム。鳥取県内全19市町村をホームタウンに活動するJリーグ所属のプロサッカーチーム、「ガイナーレ鳥取」のホームゲーム会場や練習場として利用されている。

チュウブYAJINスタジアム(鳥取県米子市)

●「たたら製鉄」で砂鉄と選り分けられた残砂が日野川上流から運ばれ、河口に堆積して形成された弓ヶ浜半島の砂洲の中にある元ゴルフコースを、日本で初めて市民の協賛金を財源にしたサッカー専用スタジアムに作り変えた。約9000㎥の天然芝のピッチでは3台のミーモが稼働し、芝刈りを行う。

ピッチと客席の距離がとても近く、選手たちが躍動する姿を間近で観戦できる「興奮と感動の舞台」であり、スポーツを通じた地域交流や憩いの場としても親しまれる、130×80mの美しく刈り込まれた全面天然芝のピッチを維持・管理するのに活用されているのが、ホンダのロボット芝刈機「Miimo(ミーモ)」だ。



●チュウブYAJINスタジアムのグラウンドキーパーとして活躍するミーモ。スタジアムのネーミングライツを取得した株式会社チュウブは、鳥取県に本社がある芝生生産販売のトップカンパニー。同社のサポートを受けて芝草の育成に挑んだ

そもそもサッカーと芝は切っても切れない関係だが、Jリーグに所属する全国58クラブのなかでも、ガイナーレ鳥取のように自前で芝を生産・管理しているのはごくわずか。なぜプロサッカーチームが“門外漢”である芝を育て、一般向けに販売することになったのか。ガイナーレ鳥取を運営するSC鳥取のゼネラルマネージャーで「野人」の愛称でおなじみの岡野雅行さんと、代表の塚野真樹さんに話をうかがった。

株式会社SC鳥取 代表取締役ゼネラルマネージャー 岡野雅行

●1972年生まれ。1994年浦和レッズ入団後、ヴィッセル神戸などを経てガイナーレ鳥取に所属(2009年〜2013年)。日本代表(1995年〜1999年)でも活躍。1997年のアジア第3代表決定戦では、日本代表を初めてのワールドカップへと導いたゴールデンゴールを決めて、人気は全国区に。俊足を生かし、長髪を振り乱してゴールへと向かう姿から、“野人”のニックネームで親しまれている。2013年の現役引退後に現職に就任

株式会社SC鳥取 代表取締役社長 塚野真樹

●1970年生まれ。1993年に本田技研工業フットボールクラブに入部後、1995年にヴィッセル神戸に移籍、鳥取県出身者初のJリーガーとなる。東京ガス(現FC東京)を経てSC鳥取(現ガイナーレ鳥取)に参加。その後SC鳥取の監督やGMを務め、2007年に代表取締役社長に就任。ガイナーレ鳥取が2011年シーズンにJリーグに加盟したことにより、史上初の「Jリーガー出身のJリーグクラブ社長」になった

チュウブYAJINスタジアムは市民や地域企業からの協賛金を財源に2012年に建設された、日本で初めての市民クラブ発のスタジアム。当時ガイナーレの選手として活躍していた岡野さんの愛称を冠した「野人続々!プロジェクト」を立ち上げ、1口1万円からの協賛金を募った。まだクラウドファンディングという手法が知られていない時代に多くの賛同を集めることができたのは、熱いプレースタイルで魅了する“野人”の求心力と、「おらが街のサッカーチーム」への期待の大きさがうかがえる。

サポーターの夢と希望が詰まったスタジアムは無事完成したものの、ピッチの管理を業者に任せるとコストが掛かる。そこでSC鳥取のスタッフ自ら芝を育てて管理することに。

塚野:専門家には「練習や試合で掘り起こされてボロボロになるから、素人がピッチを管理するのは無理」って言われましたが、「がんばります!」と(笑)。芝の栽培に熱意を燃やすスタッフが試行錯誤を重ねて、天然芝の管理が上達していきました。

スタジアムのある場所はかつて安倍山という地名で、芝の生育に適した「地の利」が幸いした。

塚野:弓ヶ浜半島は、日本有数の砂州なんです。このスタジアムも元はゴルフコースで、砂山をすり鉢状に削ってピッチを作ったので水はけがよく、丈夫な芝が育ちやすいんです。

芝草にはさまざまな品種があるが、スポーツピッチにはスパイクで引っ掛けられ、強く踏み付けられても繁殖力が旺盛で回復力に優れた西洋芝の「ティフトン類」が適している。

砂地で育てたティフトンは根がしっかり張るので付加価値が高く、弓ヶ浜半島は地下水が豊富に湧き出るので芝の生育に欠かせない水撒きのコストも抑えられる。そこで始めたのが耕作放棄地を活用した芝の生産だ。

芝生のある暮らしを応援するサイト『しばふる』 https://shibafull.net/

●芝生の上を裸足のまま全力で走る子供たち、芝生の上に直接座り見守る親たちにはいつも笑顔が──。しばふるプロジェクトではスタジアム周辺に点在する耕作放棄地を芝生畑に活用し、生産された芝で幼稚園や学校の校庭、街の空き地や公共施設などの芝生化を推進。その維持管理にミーモが活躍する

塚野:最初2500㎡の土地を借りてやってみたら、びっくりするくらいうまく育てられて。今ではサッカーコート4面分の芝を作っています。

SC鳥取がスタジアムの施設管理と芝生の生産を通じて得た経験を生かして立ち上げたのが「しばふるプロジェクト」。ホームタウンで課題になっている、人口減少や高齢化で拡大する耕作放棄地を芝生の生産に再利用し、行政や民間企業と連携して地域の芝生化を推進するというもの。ホンダはミーモの新たな活用機会の創出につながることからプロジェクトのパートナーに加わった。

スタジアムに使われているティフトン芝は生育が旺盛。最盛期は1日で2〜3㎝伸びるが、「頭刈り」を頻繁に行うことで横に伸びるライナーや根に栄養が届き、芝の密度が高くなる。ミーモを導入する前は約9000㎡のピッチを刈るのに乗用芝刈り機で2時間半かけていたが、炎天下や雨天でも行わなければならず、かなりの重労働。現在は3台のミーモが稼働し、1台当たり3000㎡を3日間かけて刈っている。

塚野:ミーモは24時間つねに芝を刈ることができるので、芝の間に落ちた短い刈りクズが肥料になって土に還るんです。刈りクズをスイーパーで吸い取る必要もなく、管理の手間が大幅に省けます。

GMとしてガイナーレ鳥取のPRやスポンサーの獲得に奔走する岡野さんにとっても、愛らしくも頼もしいミーモは「相棒」のような存在だ。



岡野:芝生の話題をすると必ず「管理が大変そう」と言われるのですが、そこに気づいてもらったらチャンスです。「ミーモなら面倒な芝刈りをお任せできますよ」って提案ができますから。「それなら導入してみようかな」と会話がスムーズに運びます。ハードルが高そうな芝も、ミーモを使うとグッと身近になります。

「現役時代は芝をグイッと踏み付けながらピッチを走っていたので『芝生殺し』でしたね」とユーモアを交えながら芝への想いを語る岡野さん。

岡野:ボクらが子供のころは決勝戦まで勝ち抜かないと芝の上でプレーできなかった。小学生のときに初めて三ツ沢球技場(神奈川県)で試合をやって、「こんなにうまくなるんだ」って感動しましたから。土のでこぼこしたグラウンドでボールを蹴るとラグビーボールみたいになるので(笑)。以前訪れたオランダは、街の空き地が芝生で、そこにゴールが置いてあって…子供たちはそんな環境で鍛えられるんだから、ヨーロッパのサッカーが強くなるわけです。

「芝生で街を、人を笑顔で満たしたい」という想いから始めたしばふるプロジェクト。ミーモで育てた芝が未来を担う子供たちの心と体を育む。

芝刈りだけでなく充電も自動で行う24時間稼働可能なロボット芝刈機
Miimo HRM520 メーカー希望小売価格:54万7800円


●天候や昼夜を問わず稼働し、傾斜面や障害物などエリアの状況に応じて芝を自動で刈り取る。芝を刈りたい場所にエリアワイヤーを敷設し、充電ステーションを設置。エリアワイヤーが発する信号で芝刈りエリアが区切られ、ミーモが境界線を検出すると方向転換して芝を刈り、充電が必要になると自動で充電ステーションに戻る

〈文=湯目由明  写真=長谷川拓司〉



2010年にJFLを制覇し、念願のJリーグ昇格を果たした地域密着のプロサッカーチーム。サッカーの枠を超え、地元の水産資源を生かしたプロジェクトや遊休地活用事業、芝生施設事業、食の集客事業などを地域とともに取り組み、鳥取の魅力を全国に発信する。

ドライバーWeb編集部