2022/08/27 コラム

スペーシア ベースに家具業界の知見を投入!? 荷室ボードへのこだわりとは

スペーシア ベースを基に、リヤシートから後方の高い積載性や多彩なアレンジを実現した

スズキは2022年8月26日に新型軽商用車「スペーシア ベース」を発売した。軽乗用車のスペーシアを基に、遊びや仕事に自由自在に活用できる広い荷室空間を持つ4人乗り・最大200㎏積みの商用車である。スペーシア ベースの開発でこだわった点について、開発責任者を務めた伊藤二三男氏にお話を伺った。



「スペーシア ベースは、スペーシアを基に後ろのスペースがいろいろなことに使えるというのが着眼点です。スペーシアの後席シートそのままだと、倒したときにフラットになりきれなかったりします。そこで、商用車のようなシートにすることによって、フルフラットな荷室が出来上がりますと。それが基本的な構想でした。そこから、このクルマが乗用タイプのスペーシアとは違う価値観を持たないと売りにならないと考えて、後ろの空間でいろいろなことをやりたいよねと。その結果、全車標準装備となるマルチボードのアイデアが生まれました」

マルチボードは、下記4つのモードにアレンジが可能。目的に合わせて室内空間を自由に変更できる。


●上段モード…荷室床面からボード下面の高さを430㎜に設定。折りたたんだ後席を椅子として使い、モバイルオフィスや現場での打ち合わせなどに活用できる


●中段モード…床面からの高さを290㎜とし、折りたたんだ後席にあぐらをかいて座れる高さとした。テレワークや移動販売に活用できる


●下段モード…床面からの高さを165㎜とし、前席の背もたれを後ろに倒してマルチボードと同じ高さにするとほぼフラットになり、車中泊や長尺物の積載に使える。荷室床面とマルチボードの間の空間にも荷物を入れられるので車中泊時にも便利


●前後分割モード…後席をダイブダウンさせると平らな荷室が生まれ、マルチボードを後席背もたれのあたりに立てて格納。前側に805㎜、後ろ側に545㎜の独立したスペースが生まれる。ペットとの旅行やスーツケースの積載などのシーンで使いやすい

さらにマルチボードはリバーシブルで使えるようになっていて、テーブルとして使いたいときは衛生的にきれいな面、荷物を積むときには裏側の面を使えるようにしたという。

「開発時に特にこだわったのは、マルチボード絡みの部分ですね。本当に最後の最後までレベルアップしました。スペーシアの派生車といいながらも、新型車と同じくらいの変更範囲になっています。マルチボードは一番売りのところですので、しっかりと仕立てたいという思いがありました。そういう意味で、単純なようでじつはいろいろ工夫、試行錯誤しました。



そのなかで、開発初期にマルチボードの高さを決める時に、どこがベストなんだと。実際に座ってみたり、いろいろな人に座ってもらったりしました。あとはアシスタントチーフエンジニアが調べてくれたのですが、家具業界に「差尺(さじゃく)」という考え方があることがわかりました。差尺は座ったときの座面とテーブルの天板の間の数値のことで、最適な数値は(身長×0.55)÷3。平均的な身長から男性(平均的な身長171.7㎝)は315㎜、女性(同158.7㎝)は290㎜とし、マルチボードの上段モードで、折りたたんだ後席に座った状態での差尺が300〜320㎜くらいになるように、荷室床面からのボードまでの高さを430㎜に設定しています。女性が座ってボードの位置が高い場合は、クッションを入れて調整いただくということで、男性側の数値に合わせています。このように感覚的なものだけではなくて、数値の裏付けをもって開発しました」

マルチボードへの思い入れは並々ならぬものがあったのである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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