2022/07/22 コラム

クルマの解体屋は中古部品の生産所…「品質に問題がある」は過去の話!?

今やネットでも中古部品が検索できる



■解体屋さんは中古部品の生産所

最近の例として、20年くらい前のクルマの部品なら新品価格の1~2割程度で買えることもあるのを報告してみた。では、普通のユーザーがあまり直接やり取りすることがない自動車の解体屋さんとは、どんな所なのだろうか?

筆者が初めて解体屋さんなるところに足を踏み入れたのは、時代が昭和から平成になったころだから30年以上昔のこと。そのときはまだ自動車リサイクル法などという法律がなかったから、野原に廃車や事故車が4~5段に積まれた壁がある中で、何をどうしているのか皆目見当つかない未知の分野だった。

だから最初は挨拶がてらクルマのどんな部品を扱ってるのか聞きに行き、何度か通って顔見知りになると、クルマの壁の中でフォークリフトと重機を使って自動車を鉄クズやアルミ素材に戻す一連の作業が行われるのがわかった。使いたい部品があるときは伝えて、その場で価格交渉とかもできたが、主に訪ねてくるのは近くの自動車修理屋さん。法律で規制される以前は積まれた廃車を見てまわり、あのクルマの部品をいくらくらいで売ってくれとか、小規模ながら中古部品の供給源だったのだ。

それから15年ほど過ぎた2005年に、自動車解体業も都道府県知事の許認可を受けなければ営業できない「自動車リサイクル法」ができた。それまで廃車を買ってくるなり集めたあとは、業者ごとに異なる環境や手法で鉄スクラップやアルミ素材を出荷していたのだが、土の上では土壌汚染につながるので舗装された場所以外では一切の作業ができなくなり、さらに重量物を扱うことから落下など危険防止のため部外者の立ち入りができないよう鉄の壁を全面に築き、分解途中で排出されるオイルや冷却水などをそのまま下水などに排水しないように流れ出る水分を集める油水分離槽を設置、水以外は産業廃棄物業者に引き取ってもらわなければならなくなった。また作業現場には屋根が設置されるなど、安全面や自然環境の配慮などの投資は必須で、どれひとつでも設備が整ってなければ自動車解体業ができなくなってしまった。

こうして解体作業を仕事として行うための設備投資が強いられながら、さらに仕事として行うハードルが高くなったのが電子化だ。今では自動車を新車でも中古車でも購入すると必ず車検証同様に付属する「自動車リサイクル券」がある。これはどう使われるのかというと、廃車の不法投棄の防止や作業困難なエアバッグ処理、エアコンのフロンを大気に放出しないよう集めるなど、法に定められた作業が行われたことをリサイクル券の番号をパソコンなどを使って電子申告し、法律に則った適正処理化を見える化している。

地方自治体などから不法投棄された車両の撤去の依頼など、リサイクル券発行以前の車台番号など少数の例外はある。一カ月に何千台も処理する業者には面倒な手続きだが、リサイクル料金は新車時にユーザーが支払っった料金をプールして管理されていることから、申告すれば1台あたり数千円の処理料金が収入にもなる。


●まだまだ根強い人気の日産パオも再利用できる部品は外されるが、検索してみると現在パオの中古部品はなかった


●エンジンとミッションは組み合わされたまま降ろされ、それから熟練スタッフの手で分離される。もちろん事前に動作確認が行われて保証が付くのだが、板金、修理屋さんを対象にしていて個人宛には配送してもらえない。年式にもよるが、エンジンを分解して修理するより交換したほうが安いことも珍しくない

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING