2022/07/22 コラム

オービス手前にある警告看板は、なぜ設置されている? 可搬式(移動式)の場合は

高速道路などでよく見かけるオービス警告看板



■可搬式(移動式)オービスの場合は…なんと!

じゃあ、可搬式オービスはどうなのか。交通警察官向けのマニア雑誌『月刊交通』の2018年7月号に、愛知県警の交通部交通指導課による「新たな速度取締り機器の運用状況について」という8ページの記事がある。そこに、「取締り予告看板の設置」としてこんなことが書かれている。

「通学路等における可搬式オービスによる取締りについては、運用開始から約1カ月間は、予告看板1枚を掲出し、当該掲出期間に同装置による取締り活動の広報をするが、以後は予告看板を設置せずに取締り活動を実施することについて協議し、承諾を得た」

「協議」とは、警察庁、法務省との協議だ。約1カ月以降は警告(予告)看板なしって、判例違反じゃないのか? いや、あの判例は無人式の自動速度取締機についてだ。可搬式は無人じゃない。警察官が原則2人で運用する。無人式ではなく有人式なのだ。

また、1980年頃と違って今は「防犯カメラ」という名の監視カメラが町中にあふれている。今や多くの人の“手の一部”となったスマホは高性能な動画カメラ付きだ。警察が速度違反者を勝手に撮影するのを「肖像権、プライバシー権の侵害だ!」と言っても、だーれも相手にしないだろう。もし裁判で争えば、最高裁はさくっと判例変更をするだろう。

現在、可搬式のたぶん9割ぐらいはスキャンレーザー式だ。取り締まりに向かず、警察は「見せる取り締まりで速度抑止を」と、つまりカカシ効果を言いだしている。警告看板はカカシ効果を高める。そのため現在のところ、可搬式の仕様書では警告看板(予告表示板)がセット販売となったりしているが…。

夢の新部品が発明されてレーザー式が超高性能に生まれ変われば、あるいは警察庁がレーザー式を見捨て、他社の優秀な可搬式に乗り換えれば、カカシ効果に頼る必要はなくなる。そのとき、警告看板はなくなるだろう。固定式の警告看板も、経費削減でなくなるんじゃないかと私は予想する。

たかが警告看板のことで、ややこしい話を長々と語ってしまった。すみません~。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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