2022/07/22 コラム

オービス手前にある警告看板は、なぜ設置されている? 可搬式(移動式)の場合は

高速道路などでよく見かけるオービス警告看板

■「おとり捜査だ」との非難を避けるために

「固定式オービスの手前には警告の看板がありますが、あれは必ず設置しなきゃいけないものなんですか? 可搬式オービスの場合はどうなんですか?」とのご質問をいただいた。お答えしましょう。

1970年代の後半、日本の道路に無人式の自動速度取締機が続々と登場した。その名称は、三菱電機製も松下製通信工業製もアルファベットと数字の組み合わせだった。東京航空計器製は「オービスⅢ」、カタカナの部分があった。 ※Ⅲはスリーと読む。

そこで運転者たちは、三菱製も松下製もまとめてオービスと呼ぶようになった。特定の商品名が同種商品の一般名称となったわけだ、セメダイン、ホッチキスのように。

間もなく、タクシーやトラックなど職業運転手の組合が「オービス裁判闘争」を展開した。当時は組合の力が強く、弁護士や法律学者が支援した。アメリカへオービスの視察団を送ったりもした。すごいね。

1980年頃、その裁判の判決が次々に出た。結果は全敗だった。しかし、大きな争点だった肖像権、プライバシー権の問題について、たとえば1980年1月14日の東京簡裁判決(有罪確定。別冊判例タイムズNo.9)にこんなことが書かれた。

「囮(おとり)捜査類似のものであるとの非難を回避するためにも、走行中の運転者から一目瞭然たるものにすることが捜査機関に課せられた責務である」

同旨の判断が他の判決にもあった。つまり、囮捜査だと非難されないように、「自動取締機設置路線」といったあの警告看板があるんだね。ちなみに、判決にはこんなことも書かれた。

「無制限に運転者を撮影するという事態に至れば…国民の基本的人権である肖像権、プライバシーの権利が捜査権によって侵害されるおそれがあるとの誹(そし)りを免れないものと考える。従って…設置場所にもよるが、制限速度を多少超えた程度にセットして写真撮影することは相当でないものと言わねばならない」

つまり、悪質な違反だったら撮影されても仕方ないってことだ。オービスが赤切符の違反のみ取り締まるという運用をずっとやっている背景には、そんな“闘争”と判例があったのだ。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING