2022/06/20 ニュース

日産サクラ/三菱eKクロスEVが生産される水島製作所に潜入…1時間に55台を生産

EVのゲームチェンジャーとなれるか?

日産と三菱自動車が5月20日に開催した、新型軽EV(電気自動車)のオフライン式。生産工場である三菱の水島製作所(岡山県倉敷市)では、ブロッサムピンク/ブラック2トーンの日産「サクラ」1台とナチュラルアイボリーメタリック/カッパーメタリックの三菱「eKクロスEV」1台がオフラインし、式典の会場に到着。車両の発表に先んじて、両車の車名が明らかにされたのだった。


●日産サクラ


●三菱eKクロスEV

そのサクラ/eKクロスEVは、日産と三菱自動車の合弁会社「NMKV」の企画・開発マネジメントのもと、日産が開発、三菱が生産を担当。日産の先進技術と三菱の軽自動車づくりのノウハウを融合し、両社が得意とする電動化技術を結集した新世代の軽EVである。軽の概念を覆すEVならではの力強い加速となめらかな走り、高い静粛性が特徴。20kWhの容量を持つバッテリーによって180㎞の航続距離を実現する。国の補助金55万円込みの実質購入価格はメイングレードで約180万円台からとなる点がセールスポイントだ。


●日産の内田 誠社長

日産の内田 誠社長は「サクラは日産としては日本市場の約4割を占める軽のマーケットに投入する量産車初のEVとなります。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2021年に長期ビジョン『日産アンビション2030』を策定。このビジョンのもと、今後5年間で約2兆円を投入し、電動化を加速し、グローバルで15車種のEVを含む23の電動車両を投入する予定です。

本日オフラインしたサクラは日本市場でリーフ、アリアに続くEVになります。2022年度を新たな“電気自動車元年”と位置づけ、今後さらなる普及に取り組んでまいります。日産サクラ、三菱eKクロスEVはアライアンスを象徴する日本でのEVのゲームチェンジャーになると確信しています」と述べた。


●三菱自動車の加藤隆雄社長

また、生産を担当する三菱自動車の加藤隆雄社長は「日産と三菱自動車の10年にわたる協業の集大成として新型軽EVを披露致しました。時代の要請とお客様のご要望にお応えする軽EVの生産にあたっては、世界初の量産電気自動車として世に送り出したアイミーブや軽商用EVミニキャブミーブで培ったEVに関する生産技術に加え、バッテリーパックの水島製作所内での一貫生産やEVプラットフォーム製造に対応するためのライン増設など、設備投資を行いました。

また、高い技術力を持つ地元部品メーカーのみなさまのご支援も得て、高い品質とコスト競争力を実現することができました。今後も水島製作所のものづくりの力を磨き上げ、軽自動車生産の主力工場として発展させていきたいと考えております。水島地区一帯で成長し、地元・倉敷市、総社市の活性化や経済発展に貢献できるように努力致します」と決意を新たにしていた。

■航空機生産からスタートした水島製作所の歴史


●水島製作所

水島製作所(岡山県倉敷市)は1943年に三菱重工業水島航空機製作所として発足したのが始まり。当時、海軍からの戦闘機の生産拡大要請に応えて、海岸埋め立て地に工場を建設。終戦までに一式陸攻約500機と局地戦闘機“紫電改”(川西航空機開発)約10機を生産した。終戦後は航空機の生産禁止とともに民需品の生産工場に転換。その目玉商品として開発したのが小型三輪トラックであった。46年6月に試作車が完成し、“みずしま”と命名。62年まで三輪トラックの生産が続けられた。四輪車は1959年に中型トラックのジュピターを皮切りに、ミニカやミニキャブなどの軽自動車やコルト800、ランサー、ミラージュなどの小型車を生産した。


●初代ミニカ(1962年)

現在では、コンパクトSUVのRVRや軽商用EVのミニキャブミーブ(2021年3月から一時生産休止中で22年秋に再開予定)をはじめ、日産デイズ/三菱eKワゴン/eKクロス、日産ルークス/三菱eKスペース/eKクロス スペースなどの軽乗用車の生産を行っている。敷地内に車体工場やエンジン工場、鋳造鍛造工場、電池パックの組立工場といったクルマづくりの全工程が集約した一貫生産工場になっている。

■軽EV生産工場に潜入取材

今回、日産サクラと三菱eKクロスEVの生産現場の様子を一部取材することができた。最初に取材した溶接してボディを組み上げる「溶組ライン」では、ホイールハウス部分のタイヤを囲う部位の生産ラインを新設したという。



●溶接工程

その後、塗装ラインから送られてきたボディは全長895mの「組立ライン(軽専用の第一組立ライン)」を流れる。新型軽EVは既存の軽ガソリン車の設備を利用して、ガソリン車と混流で生産。1時間に55台作る能力があり、ラインピッチは1台あたり60.2秒。つまり約1分ごとにクルマができ上がっていくわけだ。ガソリン車のマフラーや燃料タンクの取り付け工程では、EVが流れてくるとバッテリーパックを下からボディとドッキング。ロスが出ないように工程編成を工夫しているのが特徴だそうである。


●電着塗装


●塗装


●モーターの搭載


●バッテリーパックの搭載

続いて最終の「テスター&検査ライン」で、最終の検査工程に入る。アライメントの測定・調整やレーダーの調整、アラウンドビューモニターの前後左右のカメラ調整なども行う。スピードメーターや制動力の検査、車載コンピューターのエラーがないかどうかの確認などを行い、1台のクルマとして完成する。



●検査工程

そのほか、EV車の生産に際して新設されたバッテリーパック組立工場も見学。バッテリーパックの生産能力は新型軽EV用が1時間あたり15台、ミニキャブミーブ用が1時間あたり1.6台。サプライヤーから納入されたリチウムイオンバッテリーをハンドツールを使って慎重に置き、組み上げていく。落下などの衝撃は電池の性能に悪影響を与えるのでNGであり、監視カメラで作業の様子を記録しているという。


●新型軽EV用バッテリーパック



●バッテリーパックの組み立て

新型軽EVの生産にあたっては、既存の設備を利用しながら、新たに約80億円規模の投資を行ったという。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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