2022/04/20 新車

【試乗】アウトバックとなら、どこまでも走っていける|スバル レガシィ アウトバック|

ここ日本でレガシィの歴史を紡ぐアウトバック。スバルのフラッグシップらしい大人な質感を携えて登場した。乗る前からいいモノ感があった。乗ってみたら、それ以上だった。


たくましさと上質さを融合
 
ステーションワゴンから派生したレガシィ アウトバックは、日本のSUVで唯一無二の存在。そしてスバルSUVのフラッグシップ(それも比較的無理なく手の届く)である。
 
主力市場の北米から遅れること2年あまり。お膝元の日本でアウトバックのフルモデルチェンジを待ち焦がれていた人は少なくないだろう。
 
「アメリカで先行発売しましたが、日本のお客様には日本に合う最高のアウトバックをお届けしたいと。国内の道路環境に最適な1.8Lダウンサイジングターボエンジン、革新的進化を遂げた高度運転支援技術のアイサイトXなど、国内向けに新しく開発する部分がたくさんありました。なので、日本には計画的にこのタイミングで投入することにしました」(プロジェクトゼネラルマネージャーの村田 誠さん)
 
ついに母国の大地を踏んだ新型アウトバック。1ミリのブレもない正常進化はデザインだけでも魅力的だ。
 
内外装の造形は、ひと足早くデビューした欧州仕様と基本的に同じ。フロントフェイスは、オフローダーのキャラクターを際立たせた北米向けウィルダネスのモチーフを採り入れつつ、都会的な洗練さを巧みに融合させている。たくましさと上質さのバランスが何とも絶妙だ。
 
国内仕様は全車「EX」で、新世代アイサイトに高度運転支援機能である “アイサイトX” を標準装備。
 
「EX」はレヴォーグに続く、国内専用で設定しているスバル最先端の運転支援技術である。
 
キャラに合ったエンジン制御
 
アウトバックといえば、高速道路をずっと走り続けたくなるおおらかで心地いい味わいがまず思い浮かぶ。
 
要因の一つはエンジン。アウトバックは国内仕様においても、グランドワゴンとしてデビューした初代(レガシィとしては2代目)から余裕のトルクをゆったり立ち上げる2.5L NAを搭載した。
 
新型のエンジンルームに収まるのは、新世代ボクサーの1.8L直噴ターボ。レヴォーグ、フォレスターに続く搭載で、177馬力/30.6kgmのスペックも共通だ。
 
最大トルクは2~3代目の3L NA並み。しかも、わずか1600回転から3600回転までそれをフラットに維持する底力を秘めている。車重は前記2台より100kgほど重いが、加速は車速域にかかわらずスムーズさと力強さにあふれる。
 
この実用域のトルクは4代目の3.6Lにも匹敵するだろう。変速幅がさらに拡大された金属ベルト式CVT、リニアトロニックの貢献も、もちろん見逃せない。
 
さらにアウトバックへの搭載にあたっては、キャラクターにマッチしたエンジンのファインチューンが行われている。アクセル操作に対するトルクの立ち上がりを若干穏やかにした味付けで、SIドライブでもっともハイレスポンスなS#モードを選んでも、エンジンにせき立てられるような唐突さは感じられない。
 
振動なく吹き上がるボクサーのフィーリングと静粛性にしても、ほとんど申し分のないレベルにある。
 
LEGACY OUTBACK

待ったかいがあった国内仕様
 
本格SUV並みのロードクリアランスと大径タイヤが生み出す、頼もしい接地性と懐の深いストローク。地平線まで続く一本道が思い浮かぶような走り味をベースに、歴代アウトバックは意のままの操縦性を獲得すべく進化を続けてきた。新型はその完成形を思わせる出来栄えだ。
 
ボディの最低地上高は歴代最大の213mm。それでもサスペンションは重心高の高いボディをドッシリ支えつつ、路面の変化に対しては凹凸の大小にかかわらず正確な追従を見せる。快適性を損ねる突き上げは皆無。バネ下の重ったるさもない。
 
ステアリングには中立付近が穏やかで、切り込むとシャープなギヤ比可変タイプを採用。悪路や横風の外乱にも安心感抜群の直進安定性と、リニアで一体感の高いハンドリングをしっかり両立している。
 
シャシーを格段にレベルアップさせた一番の要因は、土台となるボディ剛性の大幅な向上。そのキーとなったフルインナーフレーム構造も、スバルが初めて採用したのは北米アウトバックなのである。
 
「アウトバックはスバルの技術の集大成として開発しました。それをアメリカ、さらにヨーロッパで磨いて、日本に持ってきました。日本の道路はとてもきれいなので、足まわりはそれに合わせてダンパーをチューニング。ほかの部分もお客様がわからないかもしれない微妙なところまでチューニングしています」(商品企画本部の小野寺 圭さん)
 
いつまでも、どこまでも走っていたい。新型アウトバックに乗り、その思いはさらに募った。まさに、待った甲斐があったというものである。


時代がアウトバックに追いついた
LEGACY OUTBACK
SUBARU
LEGACY OUTBACK
 
○:日本でもじつに魅力的な“ザ・スバル”
×:オートビークルホールドの操作性
 
 
LEGACY OUTBACK
視界よく、質感も◎
 
正統的かつ洗練されたコックピットは先進性が大幅アップ。12.3インチフル液晶メーター、縦型11.6インチのセンターディスプレイは全車標準だ。4WDのXモードは画面上で選択。手触りが上質な撥水性ポリウレタンシートはXブレイク専用。1.8L直噴ターボも専用チューンだ。ブリヂストンのSUV用高級タイヤ、アレンザH/L33を装着。
 
LEGACY OUTBACK
LEGACY OUTBACK
LEGACY OUTBACK



LEGACY OUTBACK
何でも飲み込むラゲッジルーム
 
●荷室は561L(フロアボード上522L、サブトランク39L)の大容量。後端部を押し下げると自動的に収納されるトノカバー、ハンズフリーオープンパワーリヤゲートも新型の魅力
LEGACY OUTBACK


欧州でもっとも安全なクルマに
ユーロNCAP最高得点を獲得
 
世界の安全性能評価プログラムでトップランナーのユーロNCAP。2020年から項目がさらに追加・更新された最新版でも、新型アウトバックは最高のファイブスターを獲得した。しかも40台以上の新型車のなかで最高点。「全クラスでもっとも安全なクルマ」として評価されたのだ。
 
最大の勝因は安全装備だ。日本では現行レヴォーグから搭載の新世代アイサイトは、広角化したステレオカメラや電動ブレーキブースターなどシステムの一新で、革新の予防安全性能を実現している。
 
また、衝突安全性についても、前面衝突時に自車乗員に加え相手車両へのダメージも軽減するセカンドロードパス構造で、高い共存性を実現。二次被害の危険を低減するポストコリジョンブレーキコントロールの採用も見逃せない。
 
日本仕様はさらに歩行者保護エアバッグを装備。安全性はまさに世界最高峰だ。
 
LEGACY OUTBACK
●980Mps以上の超高張力鋼板の比率を高めて、全方位の衝突性能を向上させている 


[バリエーションと価格]
〈4WD・1.8L水平対向4ターボ・8速CVT〉
リミテッドEX:429万円
Xブレイク:414万7000円


[XブレイクEX(4WD・8速CVT)主要諸元]
【寸法・重量】
全長:4870mm
全幅:1875mm
全高:1670mm
ホイールベース:2745mm
トレッド:前1570mm/後1600mm
車両重量:1680kg
【エンジン・性能】
種類:水平対向4DOHCターボ
総排気量:1795cc
圧縮比:10.4
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
最高出力:130kW(177ps)/5200〜5600rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600〜3600rpm
使用燃料・タンク容量:レギュラー・63L
WLTCモード燃費:13.0km/L
最小回転半径:5.5m
乗車定員:5人
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後225/60R18
 
 
〈文=戸田治宏 写真=真弓悟史〉

ドライバーWeb編集部

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