2022/01/25 ニュース

新型アウトランダーに託した次世代ラリーアートへの思い。デザイン担当者語る

●単なるアウトランダーのカスタム版ではない

東京オートサロン2022に三菱が出展したヴィジョン ラリーアート コンセプト。新型アウトランダーをベースとしたコンセプトカーだ。そのデザインを担当したプログラムデザインダイレクターの山根 真氏にデザインの詳細に、開発の趣旨やデザインの詳細について伺った。

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■新しいラリーアートの方向性を探る

「2021年にタイでラリーアートを復活させるということで、トライトンとパジェロスポーツの特別仕様車を設定しました。今回はそれに続けて用品(アウトランダー/エクリプス クロス)でラリーアートブランドを展開し、日本のお客様のためにステッカーの大きさを少し小さめに、さり気なく主張するというような感じにしました。赤い差し色は、実際にWRC(世界ラリー選手権)とか、ダカールラリーで培ったラリーカーのカラーリングからインスピレーションを受けています。


●ヴィジョン ラリーアート コンセプト

こうした路線とは別に、新しいラリーアートの将来の方向性を探りたいということでこのショーカーを作りました。オンロードで圧倒的な迫力を持ちながら、上質であり、電動化も含めて新世代のラリーアートを訴求しています。また、昔から培ってきたラリーアートの歴史を知らない若い方にも、受け入れていただけるような新しいものをということで考えました」

■筋肉を表現したい

「圧倒的な存在感と力強さを表現するのに、まずは筋肉を表現したかったのです。そのために、新型アウトランダーをベースに、フェンダーを片側50㎜張り出して、22インチの大径タイヤを履いています。後ろから見ても幅が増しますし、低重心でスタンスのよさを表現するのに、最も有効なアイテムなんですね。フロントとリヤにはブレンボのディスク、フロントのキャリパーはブレンボの対向6ポットを採用し、しっかり止まるということを考えています。



アルミホイールは中心のラリーアートマークとのコーディネートを考えた、ラインが呼応するようなイメージのデザインにしています。ラリーアートは赤とオレンジの色の組み合わせになっていますけれども、これはチタニウムカラーとシルバーの組み合わせで、テクニカルな雰囲気を訴求しています。このショーカーのためのカラーです。

ボディカラーはマットブラックで、光が当たった部分にブルーのフレークがキラキラと輝いて見えると思います。マットブラックにしたのは、立体の塊感が表現しやすいからです。筋肉感を表現したかったので、強い塊がそこにドスッとあって、凄みをきかせているというようなイメージを作るときにマットブラックはふさわしいと思いました。

ちなみに、フレークの色をブルーにしたのは、まったく新しいラリーアートのアプローチとして、今まで培ってきた赤とは、意図的に違う方向に行きたいと考えたからです。高級感と迫力といったときに、ブルーのフレークはミステリアスな感じを表現できると思ったんです。赤は太陽の下で、視認性がよくて、かつスポーティであるということで、競技車両で使われることが多いと思いますが、(座標軸でいうと)それとは反対の象限にいるということをあえてやりたかったんですね。そのときに赤に対してブルーかなと。ただベタッとしたブルーにするのではなくて、黒のなかにさり気なく入れるということで隠し味として表現しました」

■グラデーションはデザインテーマ

「フロントグリルは、電動化というトレンドですと、フロントを冷やす必要がないので、クリアーのアウターレンズで覆っています。その中に、ハニカムで上に行くにしたがってグラデーションしていくデザインを入れることで、電動車のテクノロジー感と力強さを表現できないかと思いました。フロントバンパーも非常に低重心で力強い、ハの字にしっかり構えたデザインです。ディフューザー処理を行っており、可動式のラジエターを想定しています。今回のフラップはショーカーなので動かせませんが、実際には速度に応じて自動的に閉まるという仕組みを採用しています。



リヤはディフューザーをかなり張り出したデザインとして、力強く存在感のある作りになっています。さらにディフューザーにはメッシュを施しています。レースカーですと普通に質実剛健なメッシュが付いているんですけれども、このクルマはそこからイメージを得た、アーティスティックな表現としてグラデーションを取り入れています。これはフロントグリルのグラデーションと呼応していまして、グラデーションはこのクルマのデザインテーマにもなっています。メッシュの中にはエキゾーストパイプが見えると思います。このクルマはPHEVなので、電動化と内燃機関を両立させるということで、エキゾーストパイプが力強く見えているなかで、空気の整流も考えたディフューザーとしています。



ボディサイドのステッカーにもこだわりがありまして、じつは砂ぼこりをモチーフにしているんですね。オンロードを意識したデザインではありますが、やはりラリーのイメージを継承したかったのです。そこで、砂ぼこりをデジタルのような直線で表現したものをボディサイドにあしらうことで、ラリーアートのイメージをステッカーで表現しています」

■ショーカーのデザイン要素は、今後どこに?

「それはスタディ中ですね。皆様に見ていただいて、いろいろご意見をいただきながら、今後の展開の仕方を考えていきたいと思っています。例えばコンプリートカーになるのかどうかというのは、まだ決定してはいません。今後の検討になります。そういう点も含めて、このコンセプトカーに関しては、コスメティック(装飾)だけではなくて、当然パワートレーン、バッテリーの性能を高めるなど、エンジニアリングの“デザイン”を含めたモノ造りのスピリッツが凝縮されたモデルということで出しておりますので、将来その方向を模索していきたいと思っています」

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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