2021/12/15 ニュース

壮観16台の電気自動車を前に、トヨタの2030年までのバッテリーEV戦略を説明

トヨタ自動車は2021年12月14日、メガウェブ(東京都江東区青海)にてバッテリーEV(BEV)戦略に関する説明会を開催した。
 
TOYOTA_BEV

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説明会では、豊田章男代表取締役社長がカーボンニュートラルの実現に向けたトヨタ(レクサス)の戦略として、2030年までにBEVのグローバルでの年間販売台数350万台を目指すことを発表。これまでの200万台としてきた目標値を150万台上乗せしてきた形だ。
 
トヨタはこれまでCO2排出量を削減するために、プリウスをはじめとするHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、そしてFCEV(燃料電池自動車)ミライといった電動車について、研究・開発を行い、実用化してきた。
 
バッテリーEVについても超小型モビリティという位置づけのモデルを軸に開発を進めてきたのだが、どちらかというとバッテリーEVの展開については消極的と見られる向きもあったのも事実だ。
 
しかし今回はこれまでのバッテリーEV戦略を拡大し、フルラインアップという形で、より具体的に方針を打ち出してきたのだ。
 
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bZ4X発売以降、数年内に新たなbZモデルを投入予定

会場には、2021年10月にBEV専用車として詳細を公表した2022年発売予定のbZ4X(ビージーフォーエックス)のほかに、なんと15台のBEV専用車を公開。これらのモデルのうち、「bZシリーズ」については数年内に投入することも明かされた。
 
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「bZ Compact SUV(ビージーコンパクトSUV)」はBEVの新時代を予感させる美しいシルエットのミディアムクラスのSUV。ひと目見ただけで「乗ってみたい」、「走らせてみたい」と思えるスタイルを実現。
 
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「bZ Small Crossover(ビージースモールクロスオーバー)」は、bZシリーズでもっともコンパクトなクロスオーバーSUV。欧州や日本を意識した小さくても快適な室内を持つ。小さなクルマだからこそ、こだわったのは電費性能だという。エネルギー効率を高めるため、いかに少ないエネルギーで走れるかというトヨタが30年以上磨いてきた技術を投入し、125Wh/kmというコンパクトSUVクラスの電費を目指す。
 
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「bZ SDN(ビージーセダン)」はファーストカーとしての期待に寄り添うミディアムクラスのセダン。
 
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「bZ Large SUV(ビージーラージSUV)」は、家族と豊かな時間を楽しめる3列シートも可能なラージクラスのSUVだ。
 
 
多様性に対応するため、できるだけ多くの選択肢を

トヨタがBEVの展開を拡大する背景には、世界的な環境負荷低減が喫緊の課題となっていることがあげられる。
 
燃料や電力供給などのインフラなど、さまざまな地域の事情や、航続距離などの使用用途に合わせて、できるだけ多くの選択肢を準備することが、大小さまざまなタイプの車種をそろえるフルラインアップ企業の責任であると、豊田社長はBEVの展開拡大について語った。
 
具体的にはBEVについて、2030年までに30種類のモデルを、乗用・商用車の各セグメントでフルラインの投入、年間350万台の販売台数を目指す。そのうち100万台はレクサスブランドの台数だ。
 
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レクサスがトヨタのバッテリーEV戦略をけん引

そのレクサスブランドは、2030年までに欧州・北米・中国での販売を100%BEVに、さらに2035年までにグローバル販売を100%BEVとする予定だ。
 
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レクサスは独自のデザインと走りの味を追求し、ハイブリッド技術のパイオニアとして電動化の技術を磨いてきた。レクサスの佐藤恒治プレジデント/チーフブランディングオフィサーは、その電動化技術をさらに磨き上げクルマの可能性を最大限に引き出し、電動化がもたらすクルマの進化やその特徴がわかりやすく表現されたモデルとして、今後のレクサスの象徴となっていく、と語った。
 
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また、レクサスはクルマ屋だからこそできる性能の造り込みや、人の感性に響くものづくりに磨きをかけ、BEVを通じて多様な体験価値を提供するブランドに進化させていくとし、レクサス初のBEV専用車、SUVタイプの「RZ」の開発が進行中であることを公表。
 
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さらには今後、スポーツBEVも開発する。それがスポーツカーにとって大切な低い車高や、挑戦的なプロポーションにこだわる、レクサスの未来を象徴するモデルとして会場に並べられた「Lexus Electrified Sport(レクサスエレクトリファイドスポーツ)」だ。加速タイムは2秒前半、航続距離は700km超、全固体電池の搭載も視野にハイパフォーマンスBEVの実現を目指すという。
 
まずはレクサスブランドでBEVを進化させる最新技術を投入し、それを普及させるのがトヨタブランドというのは、これまでのレクサス・トヨタのブランド戦略と同様の図式だ。
 

9年間で8兆円を電動化へ向けて投資

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トヨタは電動化に向けて2030年までの9年間で研究開発・設備投資としてBEVで4兆円を投資する。そのうち2兆円はバッテリーへの投資だ。HEV・PHEV・FCEVについても4兆円をかけ、計8兆円規模で電動化技術や車両開発を行う計画だ。
 
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世の中の情勢が変化し、電動化に向けての流れが加速するなか、グローバルで展開するトヨタの環境負荷低減における社会的責任を受けて重い腰を上げた。いや、これまで粛々と積み上げてきた電動化技術の蓄積をさらに加速させるための、まさに機が熟したと見たほうがいいかもしれない。そう遠くない未来である2030年までに、年間350万台の販売台数規模を目指すという具体的な数値目標を掲げたのだから。
 
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15台のBEVのコンセプトモデルを前にすると説得力も相当なものだ。
 
前述のとおり、これまでのFCEV、PHEV、HEV戦略も継続。さらにはICE(純内燃機関)についても水素燃料など、カーボンニュートラルな燃料を利用するための研究開発も精力的に行うことで、さまざまなニーズに対応しながら、自動車産業に関わる550万人の働きの場の確保も目指す。
 
BEVの普及に欠かせない充電設備についても、2025年をめどに全国の販売店に急速充電設備を設置する計画だという。

いままさにトヨタが全輪を駆動させた。すぐそこの未来がどうなっていくのか。今後のトヨタの動向を見守りたい。
 
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〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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