2021/09/22 ニュース

木下都議が書類送検…でも「不起訴にはならない」と思われる理由

●NHKニュースより引用


■木下都議が「不起訴にはならない」と考える理由



さあ、そんなこと踏まえて、木下都議である。木下都議は「無免許過失運転傷害」の罪名で書類送検された。聞き慣れない罪名かもしれない。説明しておこう。2014年5月20日、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が誕生した。交通事故専門の新法だ。第6条に「無免許運転による加重」というのが設けられた。第4項はこうだ。

「前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。」

前条とは第5条。普通の交通事故は「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」に処する、という規定だ。つまり、普通の交通事故を起こしたとき無免許だと、罰金はもちろん禁錮の選択肢もなくなり、懲役のみ、それも7年以下から10年以下へとアップされるんである! 

木下都議の場合、不起訴は無理だろうと思われる。以下の3つのヤバイ要素が重なっているからだ。

1、たった1回、初めての違反ではなく、無免許運転をくり返すなかで本件犯行に至った。
2、相手のケガは軽微とはいえ、無免許運転の危険性を顕在化させた。
3、事故は過失だからしょうがないが、措置義務(救護、報告の義務)を怠って逃走した。

よって木下都議は、公判請求(正式な裁判への起訴)をされ、東京地裁の法廷へ被告人として出てくる可能性がきわめて高い。ちなみに、やはり法務省の統計によると、2020年に「無免許過失運転致傷」で公判請求されたのは全国で556人だ。なお、NHKニュースにある「無免許過失運転致傷など」の「など」は、「道路交通法違反」つまり措置義務違反だろう。

東京地裁はめちゃめちゃ傍聴人が多い。でも、人気なのは「強制わいせつ」や「強制性交等」などの色情事件、そして「殺人、死体遺棄」など派手な事件だ。交通事故は人気が低い。よし、私がしっかり傍聴しよう。判決は執行猶予に決まりと思うが、メディアの横並び報道とは比べものにならないディープなレポートをしよう…。

だがしかし! この事件は傍聴券抽選になる可能性が高い。新型コロナのソーシャル・ディスタンスで傍聴席が半分に減らされているうえ、記者クラブが10数席を優先的にとるだろう。抽選の当たり券は多くて10数枚。そこへ、事件にはぜんぜん興味がないんだけど「えっ、傍聴券抽選? なんかすごい事件なの? 芸能人?」と一般傍聴人が集まる。こうして興味がない人が集まるのを「傍聴券効果」という。私の造語だ。

当たり券10数枚のところに50人か100人かもっとか押し寄せる。私は外れ、傍聴できない、ちっきしょお~! とまあ、現時点でそこまで叫んでしまうのが本格の裁判傍聴マニアってもんなのである、バカだね~(涙)。

〈文=今井亮一〉
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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