2021/07/26 コラム

東京で固定式オービス取り締まりが急増…大阪は激減…のなぜ【2020年の都道府県別データ】

●阪神高速にだけある画像伝送式の固定式オービス。型式は不明


大阪が激減…整備数はほぼそのままなのになぜ!?



警視庁より驚愕すべきは大阪だ! 固定式の整備数は45台から44台へ1台しか減ってないのに、取り締まり件数は1万3957件から2930件へと大激減!

大阪の固定式の取り締まり件数は、2019年だけが飛び抜けて多かったんじゃない。2018年は1万9023件、2017年は2万0111件、2016年は2万2167件もあった。ところが2020年に突然、ににっ、2930件に大激減したのである。設定速度を超過70キロか80キロに引き上げた? そんなおかしなことを突然するはずがない。いったいなぜ? じつは大阪の固定式オービスには特殊な事情があるのだ。

固定式オービスが初めて日本の道路に登場したは1970年代の後半だ。当初のオービスは36枚撮りフィルムを使っていた。1986年頃、大阪の阪神高速に「画像伝送式」のオービスが登場した。CCDカメラで撮影し、通信回線で警察の中央装置へ画像を伝送するのである。フィルム切れのない、画期的なオービスだ。測定方法はレーダー式。三菱電機と日本電機、松下通信工業が開発に関わったという。オービスマップでは、阪神高速の頭文字から「H」とされた。

その技術をもとに1992年、三菱電機製の「高速走行抑止システム」(RS-2000、略して高抑)が登場した。最初の「感知器」が速度違反車を感知すると、先の電光掲示板で「速度落とせ」などと警告。応じない違反車を、その先のレーダー式のオービスで取り締まるのである。高抑は全国展開され、オービスマップでは「新H」と呼ばれた。


●高速走行抑止システム「RS-2000」の電光警告板。沖縄県内のもの。撮影はオービスマニアの礼田計氏

阪神高速の画像伝送式は、阪神高速だけで増殖した。それが猛威をふるい、前出のように年間2万件前後もの取り締まり件数になったのか、おそらくは設定速度をだいぶ低くしているのだろう、と私は読んでいた。ところが2020年、たった2930件ぽっちに大激減。阪神高速の画像伝送式が一斉に寿命を迎えたのか? とりあえずそう読むことができる。


●阪神高速にだけある画像伝送式の固定式オービス。型式は不明

大阪がこのまま引っ込むはずがない。いったいどう巻き返すのか。そこを私に語らせると、ものすごーく長い、超ややこしい話になる。今回は自粛しとこう(笑)。とにかくね、オービスは今、たいへんな混乱期にある。警察庁内にディープな「暗闘」があるように思われる。どっちに味方するというのじゃなく、マニアとして見張っていきたいと思う。

〈文=今井亮一〉  
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

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