2021/07/17 新車

GR86/BRZ 新型試乗…「構造」を変えてまで生み出したかった「走りの違い」とは

試乗の舞台は千葉県のサーキット、袖ヶ浦フォレストレースウェイ


GR86とBRZの「走り」の違いとは


しかも、GR86とBRZの走り味の違いが、先代に比べて際立っている。



BRZは初期操舵から限界付近まで動きが穏やかで、安定性が高い。FRの気持ちよさを安心して堪能できる扱いやすいリニアリティ重視だ。一方、GR86は全域でダイレクト感が高く、ハンドリングはシャープ。テールスライドを誘発しやすく、積極的なドリフトコントロールを楽しむのに向いている。

この両車の違い、じつは単なる“味付け”の領域をはるかに超えていた。

先代同様、ダンパーと電動パワーステアリングのチューニングで走りの味を差別化するというのが、もともとの企画。実際、開発は最終段階まで予定どおりに行われたという。だが、土壇場でGR86の仕様をよしとしなかったのが、トヨタのマスターテストドライバーも務めるモリゾウ氏である。

いわく、「トヨタの86ならこれでいい。でも、GRの86はこれじゃダメだ」と。

GR86のシャシー開発は振り出しに戻り、最終的には足まわりの構造まで変更。アルミ製に進化したフロントナックル、リヤスタビライザーのボディ直付け&ブレース装着は、GR86のみ先代と同じ鋳鉄製、サスメンバー付け&ブレース非装着に戻された(別表参照)。


●左がGR86、右がBRZ


●左半分が新型BRZ、右半分が新型GR86


●左がGR86、右がBRZ

さらには、エンジンのECUまで変更。アクセル開度に対してやはりトルクの立ち上がりがリニアなBRZに対し、GR86は排気量アップ分のトルクが一気に立ち上がる迫力を重視した設定だ。

GR86の正式デビューがBRZより遅いのは、このため。モリゾウ氏はそうまでして、GRスープラ、GRヤリスに続くGRブランドのとんがった走りにこだわった。トヨタ社長の鶴の一声という見方もできるが、BRZのキャラクターを明確にするうえでも英断だったのではないか。この走りの個性の違いは公道でも体感できるはずだ。

あとは価格が気になるところだが、FRスポーツの楽しさを幅広く伝えるという商品コンセプトを考えれば、この点でも期待が裏切られることはないだろう。







■主要諸元(BRZの開発目標値)
全長×全幅×全高:4625mm×1775mm×1310mm(ルーフアンテナ含む。ルーフ高は1280mm)
ホイールベース:2575mm
トレッド前/後:1520mm/1550mm
車両重量:Rグレード(6速MT:1260kg、6速AT:1280kg)、Sグレード(6速MT:1270kg、6速AT:1290kg)
WLTCモード燃費:11.7〜12.0km/L
サスペンション前/後:ストラット/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ前/後:Vディスク
エンジン型式・種類:FA24・水平対向4気筒
総排気量:2387cc
ボア×ストローク:94.0mm×86.0mm
最高出力:173kW(235ps)/7000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/3700rpm
燃料供給装置:直噴+ポート噴射(D-4S)
燃料種類:プレミアム

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〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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