2021/07/16 コラム

オービス定期点検のデータを改ざん…裁判で明らかになった「まさか」

●この裁判のオービスかどうか定かではないが、その時期その付近にあったオービスⅢLkだ。2つの車線を狙って2台を並べるとは。撮影はオービスマニアの礼田計氏


オービスにも定期点検がある


この日はTKKの社員、S氏の証人尋問から始まった。検察官はまず、S証人の経歴を尋ねた。1988年の入社で、オービスの点検業務(年2回の定期点検)などを6年間やってきたという。

検察官「定期点検は誰でもできるんですか?」
S証人「資格等は不要なので誰でもできますが、点検に要する知識と訓練は必要です。熟練者と2人で現場へ行き、必要な知識を身につけます。性能や構造に関する詳しい知識はありません」
検察官「点検結果はどこにどう提出されるのですか」
S証人「成績書を作成し、直接の上司であるMに出します。Mが確認して担当の警察へ出します」

ふむふむ。それから検察官は、各点検項目について1つひとつ尋ねていった。外観を目視し、各部の電圧や周波数を測り、何か異常があれば調整し、成績書の各項目の「良」に○印をつけ…。つまり点検後の状態を「良」とする、それがオービスの定期点検なのだ。


●オービスⅢLjの36枚撮りフィルムを交換するとき、警察官は簡単な点検をする。これはその点検簿だ。情報公開制度によりゲットした。定期点検の一覧表もゲットしたように記憶するが、私は約20年にわたり大量の開示請求をやっており、申し訳ない、今は見つからない

定期点検では、その道路を走ってくる一般車両を、取り締まりのためではなく点検のために測定する。「精度試験」という。

検察官「精度試験はどう行うのですか?」
S証人「テープスイッチを、ループコイルと同じ6.9m間隔で路面に設置し、双方の測定データを点検器につないで比較確認します」

テープスイッチとはクルマのタイヤに踏まれて反応するもので、耐久性は低いが精度はかなり高いとされる。

S証人「テープスイッチの速度とオービスの速度とを点検器で比較して、オービスのほうが0~-5%、-1キロの範囲にあるかどうか確認するのです」

ここ、簡単に解説しておこう。路面下に埋設されたループコイルは磁界を発生させる。金属体のクルマによって磁界が変化すると車両検出信号を出す。その信号の、6.9m間の時間差から速度を計算する。クルマの上下動や斜行により検出のタイミングが変化し、誤差が生じる。誤差は最大±2.5%である。そこでナマの測定値を0.975倍し、かつ端数を切り捨てる。したがって表示される測定値は0~-5%、-1キロの範囲に必ず収まる、というのがTKK側の言い分だ。

ドライバーWeb編集部

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