2020/12/14 カー用品

フィンランド発「ノキアンタイヤ」のスタッドレスタイヤの実力は?|短期連載第3回|

1934年に世界初のウインタータイヤを生み出したのが、フィンランドに本拠地を置く老舗のタイヤメーカー、ノキアン社だ。冬用タイヤのハッカペリッタシリーズはその高い性能・品質で世界的に評価されている。ただし、日本ではあまりなじみがない…? 実際に試したことがある斎藤 聡氏がノキアンタイヤの実力を全力レポート!


国産スタッドレスと肩を並べる



ノキアンタイヤというタイヤメーカーをご存じだろうか。フィンランドに本拠を置く、世界でもっとも北にあるタイヤメーカーだ。日本ではなじみがないかもしれないが、ウインタータイヤを世界で初めて作ったメーカー(正確にはその前身となるフィニッシュ・ラバー・ファクトリー)として世界中で知られている。

最初のウインタータイヤはトラック用(1934年)だったが、36年には乗用車用ウインタータイヤ「ハッカペリッタ」を開発。欧州では、ウインタータイヤのパイオニアとして認知されるタイヤメーカーだ。

スタッドレスタイヤもハッカペリッタのブランド名でラインアップしており、最新モデルはパッセンジャーカー用のハッカペリッタR3とSUV用ハッカペリッタR3 SUV。

Nokian TYRES HAKKAPELIITTA R3/R3 SUV

●ノキアンタイヤのハッカペリッタ。左が「R3」、右が「R3 SUV」。トレッドのデザインは基本的に共通

試乗して驚いたのは、普通に国産スタッドレスタイヤと肩を並べる性能を持っていたことだ。さらに興味深いのは、国産のスタッドレスタイヤ的なつくりではなく、独自のアプローチで作られていること。

日本向けスタッドレスタイヤは、多くのメーカーがしのぎを削っているだけに、ユーザーのニーズがすべて。ちょっといびつなくらい氷上特化型として進化せざるをえなかった。性能競争が一段落してドライ操縦安定性や排雪性に性能が振り分けられるようになったのはここ数年のこと。

ノキアンタイヤは、そんな競争に巻き込まれることがなかったため、日本向けほど氷比重が高くなく、氷雪だけでなくドライ操安など多様な路面で走りやすい設計になっている。

日本の冬道でも走らせやすい



特に興味深かったのは、雪上でのグリップの出し方だ。トレッド面が雪をぎゅっと握りこんでグリップを作り出しているような感触。トレッドブロックを雪の路面に突き刺すような単純な雪柱せん断力とはちょっと違ったグリップ感が特徴的だ。



間近で日本のスタッドレスタイヤの進化を見てきたので、これがスタンダードだと思っていた。北欧で、北極圏および高緯度地域をターゲットに独自のノウハウでスタッドレスタイヤを作っていたメーカーがあることに少なからず驚きを覚えた。登る山は同じだがスタート地点が違うのでルートも異なる。そんな違いだ。

あえて言えば、日本向けスタッドレスタイヤが氷上グリップ性能向上を目指しながら総合性能を進化させてきたのに対し、 ハッカペリッタは冬季のあらゆる路面…つまり雪、氷、ドライ、シャーベット、ウエットなどの性能をバランスさせながら進化してきたのだ。では、アイス性能はイマイチなのか?

そこで忘れてはいけないのは、北欧ではスパイクタイヤもいまだオーケーなこと。つまり、北欧で開発されたスタッドレスタイヤも、スパイクタイヤぐらいアイス性能を持たせないと、ユーザーに選んでもらえない事情があるわけだ。

だからハッカペリッタは氷の路面も意外なほどよく走る。そんな強いインパクトに加えて、雪の路面での明瞭なコンタクト感とハンドル操作に対する応答のよさを持っている。じつは、これが日本の冬でも走りやすく感じる理由なのだ。

R3 SUVはパンクしにくい!

タイヤのなかで一番衝撃に弱いとされるタイヤ側面のサイドウォール。縁石やキャッツアイなどにぶつけてしまった際にもパンクをしにくくするため、飛行機の機体や防弾チョッキに使用される軽量かつ硬度の高い「アラミド繊維」を配合。ラフロードに足を踏み入れることの多いSUVの使われ方に配慮しているわけだ。

「864❅」で残りの溝を管理!

タイヤ溝の残りを確認できる工夫がトレッド面に。「8」は「残り溝8mm」の意味で新品時を指す。8mmを下まわると「8」が消え、6mm以下になると「6」が消える、といった具合。「4」の下にある「雪」マークが消えると、スタッドレスとしては使用限界に達したことを意味する。

空気圧も簡単チェック!

空気圧を適正化することは、タイヤの性能を最大限発揮させるには重要なこと。ただ、おろそかにしがち。そこでノキアンタイヤでは、サイドウォールに「220〜320(kPa)」とマークを配置。ここに愛車の空気圧を白いペンなどでマーキングしておけば、「このクルマの空気圧っていくつだっけ?」とならずに済むわけ。芸が細かい!

〈ハッカペリッタ R3〉175/65R14 82R〜245/35R21 96T XL、(ランフラット)205/60R16 96R XL〜245/45R18 100T XL
〈編集部調べ実勢価格〉3万7000円(225/55R17 101R XL、1本)
〈ハッカペリッタ R3 SUV〉215/65R16 102R XL〜285/45R22 114T XL、(ランフラット)225/60R17 99R〜265/50R19 110R XL
〈編集部調べ実勢価格〉2万3000円(225/65R17 106R XL、1本)

〈文=斎藤 聡〉

■問い合わせ先
阿部商会
https://abeshokai.jp/nokian/

ドライバーWeb編集部

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