2020/09/15 新車

EJ20型に先祖返り!? 新型レヴォーグ搭載の新設計エンジン「CB18型」のコンロッドが水平割に変更された理由

斜め割より水平割のほうが強度的に有利


新型レヴォーグはスバルの第4世代ボクサー、CB18型水平対向エンジンを搭載する。第3世代のFB16型から全方位で進化を遂げた完全新設計は見どころ満載だが、じつは第2世代のEJ20型に“先祖返り”したような技術も見られるのだ。

まず、コンロッドをクランクシャフトに取り付ける大端部の分割パターン。FA/FB型では、EJからのロングストローク化に伴う組み立て工程の変更によって、斜め割形状が採用されていた。



これがCBではEJと同じ一般的な水平割に再び変更されている。理由は連結強度の確保。CBは極限と言えるほどの軽量・コンパクト設計で、クランク長がFA/FBより34.6㎜も短くなっている。これはエンジンのボアピッチを短縮し、クランクウェブを可能な限り肉薄化した成果。その分、クランク全体の剛性は不利になる。コンロッドもしかりで、強度的に斜め割より有利な水平割が採用されたのだ。信頼性を最優先した取り組みで、高強度材も合わせて採用されている。


●左が新型となるCB18型、右がFB16型

半面、斜め割で向上したボクサーエンジン独特の整備性も、EJ時代に逆戻り。ただ、コンロッドにまで手を入れる重整備が必要となるケースは極めて少なくなっており、そうした信頼性の向上も水平割復活の背景にある。

補機ベルトも懐かしい2本掛けに…なぜ?


次に、補機ベルトシステム。FA/FBではオルタネーター、エアコンのコンプレッサー、ウオーターポンプを1本で駆動する、サーペンタインベルトが採用されている。各プーリーの前後位置をずらす必要がなく、クランク方向のエンジン長を短くできる、今では極めて一般的な技術だ。サーペンタイン(serpentine)はヘビのような、曲がりくねったの意。パワーステアリングが油圧の時代はそのオイルポンプまで駆動したから、補機ベルトはサーペンタインが登場するまで2本掛けや3本掛けが当たり前だった。


●FB16型の補機ベルトは1本掛け


そして、新型レヴォーグのボンネットを開けると、CBは懐かしい2本掛けなのだ。具体的には、オルタネーターとエアコンのコンプレッサーで1本、ウオーターポンプでもう1本。それに伴ってベルトガイド役のアイドラプーリーは廃止されている。


●CB18型の補機ベルトは2本掛け



なぜ2本掛けに戻したのか!? 理由は単純で、サーペンタインよりフリクションが低いから。ベルトの屈曲率が減ったことで、FB16より約24%も低減したという。これはウオーターポンプを張力が比較的低いストレッチベルトでまかなえることが奏功しているようだ。ちなみに、この2本掛けは当初から狙っていたものではなく、CBのエンジン長が短くなったから可能になった、言わば副産物である。

興味深いのは、こうしたアイデアが入社5年ほどの若いエンジニアから発案されたという点。EJと同じに戻そうとしたのではなく、最新の解析・シミュレーションの結果、選択した技術的手法が、たまたまEJと同じだったというわけ。

先入観を持たず従来の常識にとらわれない柔軟な発想に、中堅やベテランは目を洗われる思いがしたとか。そして、新型レヴォーグではエンジン以外の開発も、若手が中心となりベテランがサポートするという新しい体制で進められたのだ。

ほかにも、前述の芸術的なまでに肉薄のクランクウェブは、これも厚さを増したFA/FBからEJ20の“カミソリ”が復活。リーンバーンの採用は、2~3代目のレガシィ以来となる。

技術は世につれ、世は技術につれ。さまざまな理由で姿を消したメカニズムが、技術レベルの進化や時代の変化によって新たな命を吹き込まれる。人生の生き方のヒントにもなるような、エンジニアリングの奥深さの一端だ。

〈文=戸田治宏〉

ドライバーWeb編集部

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