2020/09/15 新車

【新型ディフェンダー 110試乗】ケニヤで見た景色が脳裏に蘇る、ノスタルジックな最新鋭。たくましさと頼もしさが冒険心を駆り立てる!|ランドローバー|

灼熱の信州で新型ディフェンダーを撮影中、青空の高い所で鷲が旋回していた。そして近くの電柱にあるスピーカーからは防災無線が流れていた。

ディフェンダー110

「○○地区の○○橋近くで○○時にクマが歩いているのが目撃されました。近隣の~」
「そうか、やっぱりそうゆうクルマなんだな!」などと勝手に想像してしまった。
 
ランドローバー ディフェンダーは自然や野性を呼び込み、我々を野山に誘うクルマなのだ!
久しぶりに“伝統的”なクルマが時を経て復活した。かつては今の社名である「ランドローバー」そのものが車名となった“働くクルマ”として1948年に英国で生まれた。コンセプトは丈夫で畑や農場でも走れる走破性と頑強性だ。
 
オイラが10~20年以上前にアフリカ・ケニヤによく行っていたころ、街中の交差点に古くてボロボロのランドローバー(ディフェンダー)がたくさん停まっていた。それはけっして壊れているのではなく、その逆で、壊れたクルマを運ぶレッカー車だったのである。

ケニヤ ディフェンダー
●ケニヤで活躍していた古いランドローバー(写真=三好秀昌)
 
強烈な豪雨が街を襲ったあと、電気系がイカれたクルマが多く立ち往生する。彼らはそれを移動するのに活躍していた。シンプルで丈夫なランドローバーはギヤ比も低く故障車を引っ張るには最適なのだ。
 
110と呼ばれる5ドアの新型を見ると、デザインのそこかしこに先代を感じられる。丸いリングを入れたヘッドライトや直線的なラインにオマージュが感じられ、つい思考がアフリカで見た光景に飛んでしまった。

ディフェンダー110
●ランドローバー ディフェンダー110 SE
ディフェンダー110
●ランドローバー ディフェンダー110 SE
 
当時見たボロボロのクルマと新型を比べてしまうのもどうかと思うが、あの存在感の強さがオイラの思考をワープさせたのだ。
 
インパネまわりは過度な装飾はなく、メーター類は、いい具合にシンプルで好感が持てる。
強靭性という点では、以前はフレームだったシャーシー構造が新型ではアルミモノコックになり、特にネジリ剛性は大幅にアップしているとのこと。

ディフェンダー110
ディフェンダー110
 
丈夫さに関してちょっと面白い数値がある。ルーフの静止荷重が何と300kgとある。これはルーフテントなどを設置しても親子4人が十分に暮らせるレベルだ!
 
ディーゼルエンジンの投入はやや遅れているようで、現在は300馬力のガソリンエンジン一択である。
2トンを超える車重のクルマで300馬力エンジンの組み合わせは俊敏さに欠けるような印象があるが、低回転からターボ過給が充実したエンジンはフラットトルクの押し出しでストレスなく加速をしてくれる。高回転域ではガソリンエンジンならではの軽快なパワーフィールも出てくるのと、8速ATのギヤのつながりもいいのでスポーティさも感じられる。

ディフェンダー110
 
試乗車は815mmという大径オフロードタイヤが標準装着されていた(オールシーズンタイヤをオプションで用意)。ブロックが高くオープントレッドのタイヤはノイズが大きい。しかしディフェンダーの室内音は驚くほど静かだ。タイヤの性能もいいのだろうが、クルマの静粛性も高レベルにある。

ディフェンダー110
 
オンロード走行でのオフロードタイヤのもう一つのデメリットはハンドリングだ。ブロックのたわみと、グラベルで路面をより掴むために柔らかくセッティングされたサイドウォールがコーナーでの腰砕け感を生み出す。
しかし、これもまた以前のオフロードタイヤとは少し違うようで、ステアリングレスポンスやロードフォールディングはかなり高い。さすがにコーナーの立ち上がりでステアリングを戻しながらアクセルオンをする場面ではやや戻しを素早くする必要性はあったが、それほど違和感はない。

ディフェンダー110

乗り心地は高速走行時のギャップでたまに硬さは出るものの、市街地走行では穏やかで快適だ。
そしてこのクルマのもっとも得意とするのが不整地走行だ。
 
テレインレスポンスという4WDの制御モードには、このディフェンダーからウェイドプログラムという水の中を走るセッティングがある。渡河性能900mmをうたうものだが、なかなか日本では使う機会はなさそうで残念だ。
 
オフロードコースではツインスピードトランスファーはLoをセレクト。車高もオフロード設定の40mmアップで走行。

ディフェンダー110
 
車高を上げるとサスペンションの伸び側のストロークが足りなくなり、突っ張ったようなツンツン感が出るクルマが多いが、ディフェンダーはそのあたりのストロークに余裕があるようで、乗り心地がいいままオフロードも走破できた。
 
オプションのアクティブリヤデファレンシャルは極端に滑る路面でも、事前にデフのロック率を高めているために、タイヤが空回りする率が少なく、トラクションの掛かりがとてもよい。タイヤがスリップしてからブレーキ制御でグリップを上げる後追いの制御とは一味違い、乗っていてもフィーリングがいい。
 
クリアサイトグランドビューは狭く先が見えなくなる急な起伏があるオフロードコースでは素晴らしい道しるべとなった。これほど使い勝手がいいとは思わなかった。運転席から完全な死角になる左前輪が、わずかにタイムラグがあるとはいえ、大画タッチスクリーン上で確認できるので、安心してステアリングを切り込むことができるのだ。この使い方はお奨めである。
 
ディフェンダー110

オフロードティストが強いとはいえ、新型ディフェンダーは洗練された上質感も持ち合わせている。この相反する2つのテイストがバランスよく調和しており、人々にこのクルマの魅力を強く投げかけてくるのだ。
「旅に出よう、冒険の扉はそこにある」と!!



[ディフェンダー110 SE(4WD・8速AT)主要諸元]

【寸法・重量】
全長:4945mm
全幅:1995mm
全高:1970mm
ホイールベース:3020mm
トレッド:前1700mm/後1685mm
最低地上高:218〜291mm
車両重量:2240kg

【エンジン・性能】
型式:PT204
種類:直4DOHCターボ
ボア×ストローク:83.0mm×92.2mm
総排気量:1995cc
最高出力:221kW(300ps)/5500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・90L
WLTCモード燃費:8.3km/L
最小回転半径:6.1m
乗車定員:5人

【諸装置】
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン/後マルチリンク
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後255/60R20

【メーカー希望小売価格】
732万円
 
ディフェンダー110
 
〈文=三好秀昌 写真=山内潤也〉


ジャガー・ランドローバー・ジャパン
TEL:0120-18-5568(ランドローバーコール)
https://www.landrover.co.jp

ドライバーWeb編集部

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